ヤドリギとは、ほかの樹木の枝や幹に寄生しその木の養分や水分を吸い取りながら成長する植物です。しかし、ヤドリギ自体も常緑樹で光合成をして自ら養分を作り出せるため「半寄生植物」と分類されています。公園などの身近な木にもみられ、成長すると直径80cm~100cmの丸いボールのような形になります。
園芸部類 | 常緑小低木 |
形態 | 半寄生植物 |
樹高・草丈 | 直径30cm~100cm |
花の色 | 黄色(雄花)黄緑(雌花) |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 強い |
特性・用途 | 漢方薬(葉・枝)・クリスマスの飾り(実のついた枝) |
栽培難易度 | ★★★★★ |
ヤドリギは、根を持たず土から養分や水分を吸収できないためほかの樹木に寄生して育つ珍しい植物です。主に落葉広葉樹に寄生し、寄生された樹木は「寄主」と呼ばれます。ヤドリギはヨーロッパや西部・南部アジアが原産地とされており、昔から日本にも自生しています。冬でも緑の葉が茂るため神が宿る木とされたことが名前の由来です。
ヤドリギは、雄株と雌株に分かれている植物です。雄株には直径7mmほどの黄色の雄花が咲きます。1枚の花びらが4つに分かれた形で蜜を出しません。花びらの内側には葯(やく)が張り付き、網目状に裂けて花粉を出します。雌株には直径2mmほどの、黄緑色で雄花と同じ形の雌花が咲きますが、こちらは蜜を出す特徴があります。
ヤドリギの種は1つの実に1つ入っており、粘り気の強い「ビシン」という粘液に包まれています。ヤドリギの実はヒレンジャクやキレンジャクなどの鳥が好んで食べ、種とビシンは消化されず糞と一緒に排出されます。種を包むビシンは糸のように伸びて木の枝に引っ掛かり、風に吹かれて種が近くの枝に貼りつくことで寄生する仕組みです。
ヤドリギの葉は、長さ2cm~8cmのやや肉厚で革のような手触りです。葉は細長くて先は丸く、枝の先にプロペラのように対性します。色は裏表ともに黄緑色で、光合成を行って自らも養分を作り出します。また、ヤドリギの葉を乾燥したものは昔から「桑寄生(そうきせい)」と呼ばれる漢方薬として利用されてきました。
鳥に食べられ運よく寄主になる樹木に落ちた種は、発芽して「胚軸(はいじく)」と呼ばれる器官を伸ばし、寄主の枝や幹に吸着します。胚軸の中から「寄生根」という根のようなものを生やして寄主に入り込みます。しかし、寄生できる確率はとても低いようです。
寄生に成功したヤドリギは、4年目にやっと枝分かれを始めます。その後は1年に1回、1本の枝が2股に枝分かれして成長していきますが、ボール状になるまでには20年~30年ほどかかるとされています。
アカミヤドリギは、丸くて赤みがかったオレンジ色の実がなるのが特徴の品種です。ヤドリギと同じく北海道から九州にかけて広く分布しています。アカミヤドリギはヤドリギの1%~数%ほどの比率でしか見られない珍しい品種です。
ホザキヤドリギは、中部以北の本州に分布します。穂に似た状態で花を咲かせるのが特徴の品種です。ホザキヤドリギの花は両性花で、6月~7月に4枚~6枚の花びらの黄色い花を咲かせます。実は5mm~6mmの球状または卵形で、10月~11月ごろに黄色く熟します。
セイヨウヤドリギは、ヨーロッパや東南アジアなどの温暖な気候の地域に分布する品種です。白い実をつけるのが特徴で、ヨーロッパでは神聖な木とされクリスマスシーズンには魔よけとして玄関に飾られます。また、葉や実からの抽出物は、ヨーロッパでは薬として利用されています。また、日本に自生するヤドリギは、セイヨウヤドリギの亜種です。
種まきの時期 | 11月~12月頃 |
収穫の時期 | 11月~12月 |
肥料 | 必要ありません |
剪定 | 必要ありません |
花が咲く時期/開花時期 | 2月~3月頃 |
枝分かれ | 発芽して4年後から年1回 |
ヤドリギの種を寄主に付ける時期は、実がなる11月~12月ごろが最適です。しかし、種が落ちてしまったり途中で枯れてしまったりしてうまく寄生できないことが多いため、気長に見守る必要があります。
ヤドリギは、寄主となる広葉樹が必要なことや成長できるものが少ないことなどから家庭での栽培が難しい植物です。種も販売されていません。自力で種を採取できて、家庭に寄生に適した樹木がある方はチャレンジしてみてみましょう。ただし、公園などの公共の場に生えているものは必ず許可をもらってから収穫してください。
ヤドリギはほかの植物のように土から芽吹くのではなく、落葉広葉樹に寄生して育ちます。寄生しやすい樹木は、次のとおりです。
ヤドリギの種は発芽するために光を必要とする光発芽種子のため、日当たりのよい、または半日蔭になる枝に貼り付けましょう。針葉樹でも育ちますが、冬に葉が落ちる落葉広葉樹のほうが日がよく当たるためおすすめです。
ヤドリギは根がなく土から養分や水を吸収することができないため、用土は必要ありません。
ヤドリギは寄生した樹木に根を張って水分を吸い取るため、とくに水やりをする必要はありません。
ヤドリギは寄主から養分を吸い取るため、肥料は必要ありません。寄主となっている樹木も寄生されているからといって枯れることはなく、寄主にも必要以上に肥料を与えなくて大丈夫です。
ヤドリギは害虫や病気にとても強いため、対策は必要ありません。
ヤドリギの雄花も雌花も、花後の花がら摘みなどは必要ありません。
ヤドリギは成長が遅いため、実をつけるのは根付いてから5年ほど経ってからです。品種によって異なる色の実を11月~12月ごろにつけます。実には毒性があるため生食はしないでください。
ヤドリギの種を寄生させます。まず実からビシン(粘液)に包まれた種を採り出しておき、ビシンごと種を寄主となる広葉樹にはり付けます。人の手で寄生させるのはとても難しいため、複数の種を付けておきましょう。ただし、1カ所に集中して付けるとその部位が瘤のように変形してしまうこともあります。一つ一つ、離して付けてください。
ヤドリギは樹木に寄生するため、植え替えの必要はありません。
ヤドリギは自然に丸いボールのような形になるため、剪定をして形を整える必要はありません。クリスマスシーズンに飾りとして切り取る場合も、どの枝を切っても支障はなく、切った後もとくに処置は必要ありません。好きな枝を切って大丈夫です。
夏越し・冬越し対策は必要ありません。
ヤドリギを増やすには種から育てる方法のみで、苗や挿し木では増やせません。種は店舗などで販売されていないため、公園などにあるヤドリギから直接種を採取してください。ただし、地面に落ちた種は育たず、拾っても無駄になってしまいます。