ハエトリグサ(ハエトリソウ)はその名のとおり、広げた葉を閉じて虫をキャッチする様子から名付けられた食虫植物です。葉の縁にあるトゲをまつ毛に見立てて、英語ではVenus flytrap(ビーナス フライトラップ)と呼ばれます。
園芸分類 | 食虫植物(ワナ式)、観葉植物 |
形態 | 湿地性多年草 |
樹高・草丈 | 5〜15cm(開花時期は約30cm) |
花の色・開花時期 | 白・5〜7月 |
耐寒性 | 普通 |
耐暑性 | やや弱い |
特性・用途 | 冬は落葉して休眠する |
栽培難易度 | ★★★☆☆ |
ハエトリグサはアメリカ南東部にある湿地帯にのみ自生する湿地性植物で、冬は落葉して休眠する宿根性の多年草です。捕虫葉(ほちゅうよう)と呼ばれる葉の内側には、センサーの役割をする小さな感覚毛が3〜4本あります。この感覚毛に20秒以内で2回または2本以上触れると、約0.5秒の速さで葉を閉じます。捕らえた虫を酵素が含まれた消化液で溶かして、約10日間かけてゆっくりと吸収していくのが特徴です。
ボタ爺
ムダに葉をつつくのは、やめてあげてね!
ハエトリグサの栽培に虫を与えなくても大丈夫?
ハエトリグサに虫を与える必要はありません。ほかの植物と同じように、ハエトリグサも光合成と根から微量の栄養分を吸収して成長します。自由研究として実験する場合も、ごく少量ずつ試してみるとよいでしょう。
食虫植物 ハエトリソウ ハエトリ草 観葉植物
参考価格: 545円
捕虫葉がやや大きくなるタイプで、葉の内側が赤い色をしています。ロゼッタ系は草丈が低く、中心から放射状に葉が横に伸びてくるのが特徴です。
おすすめ度 | ★★☆ |
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サイズ | 9号ポット(直径9cm) |
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(食虫植物)ハエトリソウ シャークティース 3号(1ポット)
参考価格: 1,362円
ハエトリグサの代表的な品種で、茎が立ち上がった先に捕虫葉をつけているのがエレクタ系の特徴です。ハエトリグサは色だけでなく葉の立ち上がりかたや、トゲの形には品種によって個性があります。
おすすめ度 | ★★★ |
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サイズ | 3号ポット(直径9cm) |
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食虫植物の栽培適期は春〜秋です。園芸店やホームセンターなどで食虫植物を見かける時期は、春に出た新芽がある程度成長した夏です。上手に管理して、翌春に新芽が出るのを待ちましょう。夏のコバエ対策にハエトリグサを置くかたも多いようですが、ひとつの葉が開閉できる回数は4〜5回なので、捕まえられる虫の数も限られます。
ハエトリグサの栽培方法は鉢植えです。もともとハエトリグサは栄養分の少ない湿地帯に生息する植物なので、肥料を含まない用土で鉢植えにして管理します。水苔と相性がよく通気性の確保できる素焼き鉢やテラコッタの鉢と、水を貯められる深めの受け皿が最適です。
ハエトリグサを室内で育てる人が多いですが、特に気候の穏やかな春と秋は屋外での栽培がおすすめです。自生地の環境に近づける栽培方法が理想なので、朝夕は涼しく風通しのよい場所を選びましょう。暑さの厳しい夏は明るい日陰に移動します。冬に多少霜が降りる程度の寒さなら、屋外で冬越しが可能です。
ハエトリグサは真夏を除く春と秋・冬は、半日以上日が当たる明るく風通しのよい場所で育てます。夏の強い日差しと高温が苦手なため、真夏は明るい日陰に移動するか、50%の遮光ネットで暑さ対策が必要です。冬の休眠中は屋根下などの明るい場所で、乾燥を防ぎ春の新芽の出を促します。ハエトリグサは厳しい寒さには耐えられないので、寒冷地では室内で冬越しさせます。
ハエトリグサを栽培するのは、水苔が最適です。ハエトリグサの植え付けは、鉢底に排水性をよくするための鉢底石や粒の大きい鹿沼土を入れ、ミリオン(珪酸塩白土)などの根腐れ防止剤を入れます。水苔での管理が難しく感じる場合は、市販の食虫植物の土を使うのもおすすめです。
ハエトリグサの水やりは、受け皿に水を張って育てる腰水管理が基本です。水苔の上から水やりするときは、なるべく葉に水をかけないように水やりして、受け皿の水も入れ替えます。ハエトリグサに葉水は不要です。自生地の水の流れこむ涼しい湿地帯をイメージして、時々シンクなどで水苔に流水をかけ流して、新鮮な水に入れ替わるようにしましょう。
ボタニ子
腰水管理=貯めっぱなしは、間違いなのね!
ハエトリグサに虫や肥料を与える必要はありません。自生地でも虫を獲らなくても成長できるため、基本的な栄養は水苔に含まれる有機物だけで十分です。肥料を与えると肥料焼けや根腐れを引き起こして、枯れてしまいます。
ハエトリグサの栽培で心配な病気は特にありません。害虫ではアブラムシやハダニに注意が必要です。湿度を保って育てるため、夏場は受け皿の水が腐ったり、水苔に雑菌が繁殖したりします。風通しのよい場所で管理して、病気や害虫の発生を抑えましょう。
ハエトリグサの苗の選び方は、葉の数が多くて色がはっきりとしていて、病気や害虫の発生がない健康な株がポイントです。ハエトリグサはネペンテス(ウツボカズラ)やサラセニアとは性質が違うため、株の大きさは2〜3号ポット(直径6〜9cm)の小さめなものが多いです。
ハエトリグサの植え替えは休眠時期に作業しますが、新芽が動き出す直前の3月初旬〜中旬ごろがもっともおすすめです。この時期に古い水苔を取り除いて新しいものに取り替えると、成長期にしっかりと根が伸びて新芽が大きく成長できます。できれば年に1回の植え替えで、古い植え込み材を新しくしましょう。
色が悪くなって傷んだ葉は、剪定して処分します。初夏頃に株元から花茎が上がってきたら、かわいらしい白い小花を咲かせます。開花後は株が弱ってしまうので、花茎の根元を早めに剪定しましょう。種を摂る場合は開花後もそのままにして、種を成熟させます。
ハエトリグサは春〜秋が成長期ですが、日本の高温多湿の猛暑には弱いため、夏越しにはコツがいります。
ハエトリグサは12〜3月中旬ごろまでが、休眠時期です。気温が下がる11月ごろから、葉の色が悪くなって地上部が枯れます。寒風が避けられる屋根下で、適度な水位を保って管理します。多少霜が降りて葉が枯れても株全体が凍りつかなければ、大丈夫です。寒冷地では室温5〜10℃の涼しく明るい室内で管理します。受け皿の水は定期的に新鮮なものに入れ替えましょう。
ハエトリグサは植え替えと同時期に株分けができます。株分けする増やし方の適期は植え替えと同じで、3月初旬〜中旬が最適です。あまり小さな株に分けず、鉢のサイズを大きくしすぎないほうが、水の管理が楽になります。
株分け以外の増やし方が種まきです。原種や原種に近い品種がおすすめの方法です。園芸品種はクローン培養しているため、種を自家採種しても同じ性質に育つかは不明です。
種まきして育てた若い苗は、夏の強い暑さや冬の厳しい寒さが苦手です。夏は遮光ネットを使って、強い日差しをコントロールします。冬は観葉植物と同じように、10℃ぐらいを保てるように明るい室内で冬越しします。
葉が茶色いのは枯れているの?
ハエトリグサの葉が茶色くなって枯れる原因は、成長期では日照不足や肥料過多や根腐れ、11〜12月は気温の低下による生理現象です。そのまま世話をしても茶色く枯れた葉は元に戻らないので、剪定して取り除きます。
買ってすぐにダメになってしまった、何が原因?
子どものいる家庭でハエトリグサを何度購入しても、すぐ葉が枯れてダメになるという話をよく耳にします。興味本位で何度も葉をつついてしまうと、エネルギーを使い果たして枯れてしまいます。葉が開閉できる回数は、1枚当たり4〜5回です。ハエトリグサにストレスを与えないよう、店頭でも気をつけたいですね。
コバエ退治効果はどのくらいある?
ハエトリグサをコバエ退治に購入するのは、あまり効果がありません。フェロモンでハエをおびき寄せることもなく、もし捕まえたとしても1匹のハエの消化には約10日間かかるため、とても効率が悪いからです。ハエトリグサという名前から、積極的に虫を捕まえるイメージを持っているかたが多いようですが、実際の生態とは異なります。
出典:写真AC