コンニャクは東南アジア原産の野菜です。飛鳥時代に仏教とともに日本に伝来し、市民に親しまれるようになったのは江戸時代からです。その立役者として、コンニャクを粉にする技術を確立した「中島藤右衛門」と、コンニャクの量産に成功した「櫻岡源次衛門直方」が挙げられます。
園芸部類 | 野菜 |
形態 | 多年草 |
樹高 | 50~150cm |
花の色 | 赤紫色 |
耐寒性 | 弱い |
耐暑性 | 弱い |
耐陰性 | やや弱い |
栽培難易度 | ★★★★☆ |
コンニャクはさといも科の多年草イモ類です。産地は群馬・栃木県で、全体の約96%を占めます(令和元年度)。地下茎が楕円状に膨らみ、葉柄は50~150cm、鳥足状の小葉をつけます。4年目以降の株が開花し「仏炎ほう」という筒状に変形した葉の中に赤紫色の棒状花が付きます。開花後の株は枯れてしまいます。
こんにゃくの種類は、昔から栽培されていた「在来種」や「備中種」、大正時代に中国から輸入された「支那種」、そして「交配種」の4種類です。収穫時期・荒粉率(イモから荒加工した割合)・製粉率(荒粉から製粉にした割合)・病気に対する耐性などを比較してみましょう。
はるなくろは最も古い交配種で、昭和41年に品種登録された在来種と支那種の交配種です。中生で、いも自体がよく肥大しますが、荒粉率が高いのに対して製粉率は低めです。葉枯病・根腐病に弱いので排水性のよい場所で育てる必要があります。
あかぎおおだまは昭和45年に品種登録された在来種(金島在来)と支那種の交配種です。中生で出芽・開葉期が早いことや肥大率が高く収穫量も多いことから、一番多く育てられています。荒粉率は低いですが製粉率が高く、こんにゃくの生産に適した品種です。
みやままさりは平成17年に品種登録された、群系55号(備中種+支那種)と在来種の交配種です。大きな特徴は「植え付けのよさ」と「製粉量の多さ」です。ほとんどの品種の生子が棒状に対して、みやままさりは球状なので機械による植え付けが可能です。また製粉率も非常に高く、あかぎおおだまより15%程度増えます。
植え付け時期 | 4~5月 |
花が咲く時期 | 5~6月 |
実がなる時期 | 10月頃 |
収穫時期 | 10月中旬~下旬頃 |
コンニャクの植え付け適期は4~5月です。生育に必要な最低温度は13℃なので、栽培場所の平均気温を確認しながら植え付け管理をしましょう。10月中旬頃、株の葉が7割程度枯れて倒れたら収穫します。
コンニャクは露地でもプランターでも栽培可能です。地下茎が肥大していくので、どちらの方法でも生育に十分な場所を確保します。プランターならば10号以上のものを選びましょう。
コンニャクは乾燥・加湿ともに弱く、強風に吹かれて葉が傷ついただけで病気になるほど繊細な野菜です。半日陰であまり風が当たらない場所に植えましょう。
コンニャクは、2年間は同じ場所で植えても影響がないとされています。コンニャク芋として収穫するまで3年かかるため、3年目は別の場所に植え替えましょう。
コンニャクは加湿に弱いため、高畝にして通路に水がたまらないように溝を切りましょう。通気のよい土壌づくりをしたり通路に背の低い雑草を生やしたりして、根腐れを起こさないように管理します。
冬~早春の間に用土作りをします。水はけ・水持ちをよくするためによく耕します。赤玉土、鹿沼土、バーミキュライトなどに保肥性を高める完熟たい肥を混ぜ、苦土石灰により土壌pHを5.5~6.5に調整しましょう。
定植時の株間は、種イモの年数によって異なります。生子は5~10cm、1年目は15cm前後、2年目は30~40cm程度の間隔を開けて植え付けましょう。発芽点がくぼんでおり水がたまり腐りやすいため、45°傾けて定植します。
コンニャクは、春から秋にかけて地下茎がゆっくりと大きくなる野菜です。始めの内は種イモの栄養分で成長しますが、葉が茂り新しい地下茎が肥大するときにはたくさんの栄養が必要です。元肥には長く効果を発揮する有機肥料を十分に与えましょう。
露地植えの場合、夏場に晴れ間が続き乾燥した状態になれば水やりします。プランターの場合、土が乾燥したら十分に水を与えましょう。
こんにゃくは支柱を立てて誘引する必要はありません。支柱が風で揺れて葉を傷つけると病気の原因にもなります。
コンニャクは浅根の野菜なので、表面が乾かないようにワラや枯草などでマルチングをしましょう。時期は、植え付けをしたらすぐに行います。
追肥は地下茎が肥大する7~8月頃に行います。根肥えのために必要な「カリ」を中心とした肥料を施しましょう。この時期に窒素を多く与えると、腐りやすく貯蔵性が悪くなるため注意が必要です。
コンニャクの増やし方は種イモをから発芽させる方法です。生子から2年目までの種イモは、翌春まで貯蔵する必要があります。収穫したら半日ほど日に当ててから、芽を下か横に向けて7~8℃の温度で冬越ししましょう。
加湿による根腐病や葉枯病などの病気か、センチュウが寄生している可能性があります。病気でなくとも、日差しが強すぎて枯れることもあります。
根腐病とは、糸状菌の繁殖によって根が枯れて栄養分を葉や実に行き渡らせるのが困難になる病気です。日中に葉が萎れていずれ枯れてしまいます。一度発生すると治療は困難なので、定植前に土壌を日光消毒したり前作の作物の残りを取り除いたりしましょう。
葉枯病は、糸状菌が葉に増殖し先端部から付け根にかけて枯れる病気です。植物が弱っていたり葉が傷ついたりしたとき起こります。枯れた葉を取り除き、殺菌剤を使って他の株に広がらないようにします。
その他の病気 | |
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腐敗病 | 雨・土・種イモなどにいた細菌により伝染。葉や茎が黄色くなる。 |
白絹病 | 糸状菌による伝染病で、根元近くに白糸状の菌糸が張ってそのまま立ち枯れる。 |
乾腐病 | 糸状菌が、土壌や貯蔵中の葉柄基部や地下茎を腐らせる。 |
ネグサレセンチュウとは線形動物の一種で、根の内部に寄生して栄養分を吸い取ります。寄生されるとやがて植物は枯れてしまいます。連作を避けて繁殖しにくい環境をつくり、マリーゴールドなどの天敵を近くに植えるといった対策をしましょう。
ハスモントヨウはガの一種で、葉を食害して植物を枯らせます。幼虫のうちに取り除いて被害を最小限にしましょう。
その他の害虫 | |
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アブラムシ | 小さな虫が葉やサヤに群生して吸汁加害する。モザイク病を媒介するため注意。 |
出典:写真AC