南国ムードを添えてくれる植物として思い浮かぶのは、ハイビスカスやヤシが多いのではないでしょうか。ヤシ類の中でも人気があるワシントンヤシは、乾燥や高温、寒さに強いので、街路樹や庭木としても利用されています。深く裂けた掌状の葉の縁に、白い糸状の繊維が垂れるのが特徴で、イトヤシ、シラガヤシなどとも呼ばれます。単幹性のヤシで、露地植えでは高さは15~20m、幹の太さは50~60cmになります。
園芸部類 | 庭木 |
形態 | 常緑高木 |
樹高・草丈 | 15〜20m |
花色 | 白 |
耐寒性 | -5℃程度 |
耐暑性 | 強い |
特性・用途 | 鉢植え、公園・庭園、街路樹 |
栽培難易度 | ★★☆☆☆ |
アメリカを象徴する高木であるワシントンヤシの学名は、アメリカの初代大統領ジョージ・ワシントン氏にちなんで名付けられています。
ワシントンヤシ属には2種類がありますが、どちらも北米原産で直立し成長が早く、20m以上もの高さになることもあります。掌状の葉は長さ1m、幅1.2~1.7mぐらいになり、葉からは糸のような繊維が垂れます。葉柄には黄褐色の棘があります。
2種類のうち「ワシントニア フィリフェラ」の方が幹が太く、まっすぐに伸びます。葉の色はロブスタに比べてやや淡くなります。
日本にあるワシントンヤシのほとんどは「ワシントンヤシモドキ」との和名をもつ「ワシントニア ロブスタ」です。ロブスタはフィリフェラに比べて幹が細く、ゆるく曲がります。葉は濃い緑色です。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
植え付け 植え替え |
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肥料 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ||||||
開花期間 | ● | ● | ● | |||||||||
種まき | ● | ● | ● | ● |
鉢植えの場合、生育旺盛な春から夏が植え替えに適した時期です。株の大きさに合わせてひとまわり大きな鉢に植えつけるとよいでしょう。両性花で長い花序に白い花が多数つき、芳香があります。花後にできる黒い果実は、甘味があって食用にもなります。
ワシントンヤシは高温多湿な熱帯ではなく、温帯や亜熱帯気候を好みます。乾燥にも耐える育てやすい植物だといえるでしょう。
日陰でも育つので、年間を通して室内で楽しむことができます。できれば春から秋は戸外に置いて日光に当てると、充実した株に育ちます。冬には室内で管理して、ガラス越しの日光を当てましょう。
-5℃ぐらいまでは耐えるほどの耐寒性があるので、露地植えもできます。露地植えにすると幹が太くなり、背丈も高くなります。何十年も経つと10mを超えるほど成長するので、植える場所には注意が必要です。
屋外でも室内でも育てることができます。海沿いの海岸のような、潮風と強い風のあたる場所にもよく植えられています。
室内・屋外ともに、日当たりのよい明るい場所が適していますが、日陰でも育ちます。日光が不足すると葉が徒長したり、根が貧弱になります。室内で育てる場合は、エアコンの風が直接あたる場所は避けましょう。
用土には水はけのよいものを好むので、腐葉土と有機質肥料を混ぜて植えつけます。
露地植えの場合は、一度根付いたら降雨にまかせ、極端に乾燥する場合にだけ水を与えるようにします。鉢植えの場合は、土の表面が乾いたら鉢底から出るまでたっぷりと水を与えます。受け皿にたまった水は根腐れの原因になるので捨てましょう。冬の間はほとんど成長しないので、乾かし気味に管理します。年間を通して霧吹きなどで葉水をしましょう。
春から秋にかけて、月に1回、緩効性化成肥料を置き肥します。定期的に活力剤(アンプル)を活用するのも有効です。
先端から新しい葉が出て、古い葉は次第に下がって枯れていきます。街路樹などでは風で飛ばされると危険なため、枝にぶら下がった葉を定期的に剪定します。葉柄の基部を残して剪定をすると、幹に美しく並んだ斜め格子のパターンができあがります。
害虫としてはカイガラムシがつくことがあります。歯ブラシなどでこすって落とすか、薬剤を使用するなどして対処します。駆除後は再発防止のためにオルトラン粒剤を土の上に撒いておくとよいでしょう。
あまり病気にかかりませんが、炭そ病にかかった場合には傷んだ葉を取り除き、ベンレートを散布します。
秋ごろに直径数ミリの楕円形の種が多数できます。ワシントンヤシは主に種から増やします。種まきを行うのは5月~8月、発芽日数は17日前後です。発芽後1年目に苗を植えなおし、根の成長を促します。ワシントンヤシを育てるには種から育てた苗、またはある程度大きく育った鉢植えを購入します。
出典:写真AC