レンコンは日本在来種と、明治時代に中国から入った中国種に大別されます。レンコンの原産地は中国、エジプト、インドと諸説ありますが、中国の長江河流域が有力です。また、食用になるレンコンはハスの地下茎にあたる部分で、泥の中で成長します。旬の季節は10月~年末です。
園芸部類 | 水性植物、草花 |
形態 | 多年草 |
草丈 | 水面下50cm~1m、地上1~2m |
花の色 | ピンク、白、黄 |
耐寒性 | 普通 |
耐暑性 | 強い |
乾燥 | 弱い |
栽培難易度 | ★★★★☆ |
水面上の花が散るころ、レンコンになる茎の部分の成長は止まり、肥りはじめます。水面上の葉や茎は、秋には枯れてしまいます。肥ったレンコンには、通気のための8~10個の穴があいているのが特徴です。春が来て気温が10~15℃になると、冬越ししたレンコンの地下茎の節の間から新芽や根、つる(地下茎)を出して増えていくのも特徴的です。
植物の地下茎は根茎・塊茎・球茎・鱗茎 (りんけい) などに分かれ、ハスの地下茎は根に分類されます。地下茎の先端の細い部分が節を作りながら伸びていき(主茎)、主茎の2節目以降の間から1次分岐茎が育ちます。1次分岐茎からさらに2次分岐茎が成長し、長いもので15mになります。レンコンは葉や花の芽を出す部分です。養分も蓄え、植え付け用の苗として使われます。
レンコンは交配しやすい特性があります。種から栽培してみると、親株と性質が異なることが多く、たくさんの品種が生まれています。
備中は、レンコンの分枝が少なめの日本古来種です。レンコンの肥大がよく、収穫量も多く、もっちり感も好まれて人気を集めています。茎は地下20~40cmの位置で伸び、葉は大きく成長します。花は淡紅色で中輪、晩生種のため台風の被害を受けやすい種類です。
ホホジロは通気の穴が小さく、肉厚な質感が特徴です。高温による葉焼けが起こりやすい品種です。4節から太り始め、白い花が咲きます。やや深めに栽培するのがおすすめです。
金澄は形が太く、色白なところが特徴です。関東地方の栽培の約7割を占める品種です。中国種と在来種「天王」の人工交配によって生まれ、金澄1号から始まり37号(中生種)までの品種登録がされています。特に普及している品種は20号(早世種)です。美しい白い花を咲かせます。
ロータスは、かじると糸を引くほどコシのあるでんぷん質が特徴の、岩国系レンコンから選抜された品種です。備中種に比べて早生性で、耐病性があります。
レンコンの植え付け時期は、気温の上がる3月が適しています。種から育てた苗が移植できる大きさに成長するには、2~3週間程度必要です。ハスの生育は早く、収穫は水面上の葉や茎が枯れて倒れたあとの夏の終わり~秋ごろから可能です。
レンコンは砂礫(されき)の少ない土壌を好みます。生育に適した温度は25~30℃、地上の温度は約15℃以上ないと成長が止まる耐寒性の低い作物です。また、日照不足では収穫量が減ります。太平洋沿岸や瀬戸内は気象条件があっており、栽培適地とされています。
レンコンを鉢で育てる場合は、広口で深さのある容器が適しています。市販のものであれば、ポリバケツのような円柱状の形の容器が栽培向きです。底の形は四角いものより丸い形を選びましょう。
庭に地植えする場合は、耕作地として1mぐらいの深さの穴を掘ります。または木やブロックで枠を作り、防水シートを敷いた中に用土を入れて水を張り、耕作地としましょう。5月ごろ、生育が旺盛になり立葉が出ると地下茎が浮き上がってくるため、地下茎を土の中に埋め戻します。
高めの気温を好むレンコンは、気温や水温の変化が少ない、一日中陽がさす場所で栽培します。水性植物で、年に1回の植え替えが必要なため、水の利便性を考えた置き場所を選び管理しましょう。
粘土質の土と小粒の赤玉土、黒土を混ぜ、水を加えて練り上げて寝かせておいたものを、レンコン栽培の用土として使います。容器に用土を敷きこみ田土をかぶせ、乾かない程度の水を張りましょう。田土がない場合は市販されている保水性のある泥炭土、黒泥土を使います。2年目以降は土が腐って(黒くなる、においがする)いなければ、株分けで減った分の土を足して繰り返し用土として使うことも可能です。
気温が10〜15℃くらいになったら、植え付けをはじめます。植え付ける1週間くらい前までに、耕作地を深く耕しましょう。土の塊がないように砕き(代搔き、しろかき)、元肥を入れてならし、湛水(かんすい)した水田のような状態に整えます。土のpHは5.5~6が最適です。必要なら堆肥資材の散布をしておき、畔(あぜ)の補強や水漏れを防ぐ作業も重要です。
連作障害がおきると収穫量が減り、レンコンのでんぷん質がスカスカした質の悪いレンコンに育ちます。広範囲に葉や根が枯れる状態も、連作障害による用土の栄養不足やバランスの崩れが原因です。また、寄生性線虫や防腐カビの病気も連作障害と関連します。化成肥料やレンコン用の肥効調整型肥料と、病害虫対策の石灰(苦土)を併用しましょう。
種レンコンには、伸びる芽がついた2~3節の長さの茎を使います。伸びる芽は細く、先端がとがって曲がった形のため、曲がった芽の先を上に向ける「根回し」をして、反対側の端よりも深く植え付けて伸びていく芽を育てます。植え付け後は上から用土をかぶせ、種レンコンを安定させ、直ちに水を張って乾燥を防ぎましょう。
レンコンは株が多いと花が咲きにくく、成長を妨げられます。植え付け時は1m以上の間隔をあけましょう。広い場所に植え付ける場合は十分な間隔が取れますが、ポリバケツのような容器に植え付ける場合は1鉢に1本を目安で植え付けてください。
種レンコンが発芽し、植え付けできる大きさになるまで容器内で育てます。種は水につけて2日で膨らみがわかり、発芽~移植まで10日~2週間程度かかります。容器の水は茶色っぽくなりますが、水温を保ち有機物を分解する微生物を活かすため水の交換をぜず、水位を保つ程度の水やりで管理しましょう。
葉の成長にあわせた水やりを心がけましょう。移植した苗に浮葉がないときは3cm程度の水深を保ち、水が濁っても水温が下がるのを防ぐために交換をさけ、水を足す程度で管理します。水面より高い巻き葉があっても水やりは同じですが、葉が展開し浮葉の状態になったときは、浮葉が沈んでしまわない状態の10cm程度の水深で管理します。
移植後10日ほど過ぎると、苗の浮葉が大きく密になります。2~3か月後には立ち葉や花芽の茎も伸び、ハスらしい雰囲気が楽しめる時期です。容器で育てている場合は、容器の縁から溢れさせる水やりの方法で、水面にある汚れやゴミを流します。夏期は耕作地の水深を保ち、用土を乾燥させない水やりが大切です。
3~4週間に1回与える追肥は、効き目がゆっくり長期間続く緩効性の化成肥料を使います。立ち葉が出てくるころに元肥の1~2倍量、6月の生育盛期に元肥の2~3倍量、7月ごろからはレンコンを太らせるために元肥の2~3倍の量を与えます。葉に肥料がかかると肥料焼けをおこし、枯れた色合いになるため注意が必要です。
鉢で育てている場合は、立ち葉がでるころから追肥をはじめましょう。花芽が膨らみ、花や葉の数が増えるころは肥料がかからないように注意して、3~4週間に1回、元肥に使った量よりも多めに追肥します。元肥の量は、10号サイズの鉢であれば8~10粒程度が目安です。
レンコンは「よい土を使うと生育がよく、収穫量も上がる」といわれます。肥料の量とレンコンの肥り具合には関係があり、収穫量に影響します。成長の早いハスの生育を助けるためには、肥沃な用土を保つことが大切です。肥料切れを起こさないように、植え付け時に元肥を施しましょう。同時に害虫対策、殺菌をかねて石灰窒素も投入します。また、元肥には有機肥料を使う場合もあります。
種を使ってレンコンを増やす場合は、水道水を入れた容器に種を入れ、日当たりのよい場所に置きます。発芽温度の15℃以上になる環境で育てましょう。硬い殻(種皮)に覆われたハスの種皮の凹方の先端を削る、芽が早く伸びるため「発芽処理」をした種を使いましょう。育った苗を移植する増やし方です。
植え替えでもレンコンを増やせます。掘り上げたレンコンの泥を水で流し、古くなった黒い根や茎、つるを取り除きます。植え替えや植え付けに使う種レンコンは、一端が細く伸びる節のある、2節ほどの長さ(3節目の中央を包丁で切り、切り口を消毒)のものを選んで植え付けましょう。
レンコンの質を高めるために「葉切り」や「赤シブを抜く」作業をしてから収獲します。収穫は水を抜く方法と抜かない方法がありますが、どちらもレンコン田の中でおこなう作業のため、胸まであるゴム長靴を履いて臨みましょう。
レンコンには早生種と晩生種があります。それぞれ収穫時期が異なり、晩生種は栽培期間が長く8月〜翌年の4月くらいまで収穫可能です。露地栽培の収獲は立ち葉が10枚程度あれば2~3節のレンコンを収穫できますが、レンコンはその後も肥大するため、タイミングにあわせて収穫していきます。
8月の終わりごろから水面上に見えていた葉や茎は、次第に枯れていきます。この状態を「葉止まり」といい、地下茎の成長は止まったことになりますが、レンコンはこの後から太りはじめます。
水面上の葉の多くが枯れたら、すべて切り落とす「葉きり」をしましょう。その後、レンコンの表面の色を抜いて白くする「赤シブ抜き」をします。葉切りをして約10日後、本格的なレンコンの収獲にはいります。
水堀りは、水を抜かずポンプの水圧を利用してレンコンを収獲をする方法です。ポンプの水圧を利用して泥をとりのぞきながら収穫するため、鍬掘りより労力は少なく、初心者でも収穫できます。しかし、レンコンの泥を洗い流してしまうことから、掘り出したレンコンの乾燥対策が必要です。
鍬(くわ)堀りは、水を抜いて収穫する方法です。専用の機械を使って表面の土を20~30cm取りのぞいた後、レンコン専用の鍬を使って収穫します。レンコンの新鮮さが保てる鍬堀りは手作業のためレンコンを傷付けずに掘り出せますが、熟練を必要とする収穫方法です。
植え付けから約3カ月、花芽の茎が伸びハスらしい風情を楽しめます。やがて花の色は退色して散り、残された花托(かたく)が緑から茶色に変わります。種の周りが空いてくれば傾けるだけで収穫可能です。種は食材としても使えます。
温度が25~30℃と高めの時期はアオコや藻が発生しやすく、これらが発生すると光合成が妨げられるため除去します。また、土の乾燥は腐敗病などの病気につながります。水を張った状況を保ちましょう。
腐敗病は、土中のフザリウム菌やピシウム菌など糸状菌(カビ)が原因です。フザリウム菌は地下茎節部の根の先端から侵入し、ピシウム菌はレンコンの表層部の傷口から侵入します。梅雨明け後の6~8月下旬ごろに発生し、葉の縁が淡褐色に変色した状態から葉全体に広がり、葉や茎を枯らします。紫黒色、黒色に変色させ、翌年の発生原因ともなるため、耕作地を常に湛水状態にした栽培をして予防しましょう。
褐斑病は、アルタナリア菌が引き起こします。被害葉などにいる菌が冬越しして伝染源になります。褐斑病は梅雨明け後におきやすく、はじめは葉の表面に輪郭の明瞭な赤褐色か暗褐色の円形の小斑点ができ、周辺に広がると葉が枯れてしまう病気です。
褐紋病の病原菌は菌類のコリネスポラ菌です。被害にあった茎や根に残っていた菌が越冬し、高温多湿の条件がそろうと発生します。4月下旬ごろから菌の胞子を飛ばし、くもりや雨天が続く6月中旬から病気が目立ってきます。はじめは葉の表面に暗褐色の小斑点ができ、広がると直径5~20mmの角張った褐色の病斑に変わり、ひどいと枯れるため注意が必要です。
植え付け後の新芽が出るころはアブラムシに、5月下旬の根が張り出すころはイネネクイハムシの幼虫や成虫など、害虫の食害に注意します。常時潅水した水田で栽培するレンコンの薬剤散布は畔からおこないます。畔の雑草は害獣が近づき畔を破壊させる原因となり、害虫の産卵の場所ともなるため雑草は短く刈りこむ対策をしましょう。
ボウフラは25℃以上の温度の環境を好み、大きさは6mm程度で水中でよく動いています。しっぽに呼吸管があるので空気を取り入れるために、しっぽを上向きにした状態で水面に上がってきます。水の流れがあると流されていくため、鉢から溢れさせる水やりの方法や、メダカを入れて楽しんで駆除する対策をとりましょう。
ヨトウムシは蛾の幼虫で体長は40~50mm、葉や株もとに潜んで夜に活動します。葉の裏に数十~数百個の卵を産み付け、秋ごろに大発生します。春先から高温が続き、雨が少ない年は増殖量が多いとされ、大量発生すると枯れる原因になるため注意が必要です。
イネネクイハムシも要注意の害虫です。越冬した幼虫が地下茎やレンコンを食害します。食害された傷口からピシウム菌が侵入し、腐敗病をもたらすことがわかっています。葉の変形や生育障害といったレンコンの品質を悪くする害虫のため、防除と腐敗病対策を同時におこないましょう。
線虫はレンコンの表面を凹凸にする寄生虫です。地上に出ないため見つけにくいですが、表面に褐色の不整形な斑点ができることから、別名「黒皮症」と呼ばれる障害を起こします。ひどくなると表面を凹凸にして、レンコンの品質を低下させます。
アザミウマは、スリップスとも呼ばれる害虫です。ハスの新しい芽を巻葉にして奇形葉をつくる原因であり、ウイルスを媒介して枯れる原因をつくります。
アブラムシ類は、体長は2mm前後、暗赤褐色または暗緑褐色の害虫です。越冬した卵が春にふ化し、幼虫が新梢や葉裏で増殖します。3月~4月ごろ、水辺の雑草や浮草から飛んで移動して、レンコンの茎葉や雑草に寄生し食害します。
ネズミやヘビ、モグラといった動物は畔に穴をあけて水漏れをおこし、土壌の乾燥や畔を破壊を引き起こします。害獣を近づけないためには畔の雑草を短く刈り込む管理が大切です。近年、外来種のヌートリアの生息も確認されています。
レンコンの種
参考価格: 693円
うまく栽培できれば、初年度から花を楽しめます。8月ごろからレンコンは太り始めるため、肥料を十分に与え太らせます。収穫時期は10月~12月ごろです。
おすすめ度 | ★★★★★ |
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内容 | 種2個、サンドペーパー |
出典:写真AC