茎レタスは、中国が原産の珍しい野菜で「ステムレタス」や「アスパラガスレタス」など、さまざまな名前で流通しています。茎や葉を余すところなく食べられるのが魅力で、育て方が簡単なため、家庭菜園やベランダ栽培にもおすすめの野菜です。
園芸部類 | 野菜 |
形態 | 一年草 |
樹高 | 30cm〜60cm |
花の色 | 黄色 |
耐寒性 | やや強い |
耐暑性 | 強い |
耐陰性 | やや弱い |
栽培難易度 | ★☆☆☆☆ |
茎レタスはキク科に分類される一年草で、若葉や茎の部分が食用として利用できる植物です。茎を乾燥させて細く裂いたものは「山くらげ」と呼ばれ、水で戻して煮物や漬け物などに利用されています。茎レタスは日本ではあまり栽培されておらず、スーパーなどの店先に並ぶ茎レタスは、原産地の中国で栽培されたものがほとんどです。
名前の由来は?
茎レタスは「しっかりとした太い茎をもつレタス」という性質がそのまま名前の由来になっています。また、茎レタスには別名がたくさんついており「茎チシャ」も呼び名のひとつです。チシャとは「乳草(ちちくさ)」が語源で、茎レタスをちぎると切り口から白い乳が出てくる性質に由来しています。
花言葉は?
茎レタスの花言葉は「冷たい人」「冷酷」です。茎チシャという別名の由来にもなっているように、乳がでる性質から「母乳ではなく、レタスの乳で子供を育てるのは冷たい人」との例えから「冷たい人」や「冷酷」という花言葉がつけられました。
ステムレタス セルタス
参考価格: 275円
セルタスは「セロリ」と「レタス」を掛け合わせたような見た目をしているため、2つの名前を掛け合わせて「セルタス」と名付けられた品種です。葉はやわらかくフリルレタスのような食感を楽しめるのが特徴で、茎は太くてしっかりとしており、セロリと同じように料理に利用できます。
草丈 | 40cm~55cm |
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茎の太さ | 4cm〜6cm |
茎レタス ケルン
参考価格: 1,775円
ケルンは、よく太らせた茎の部分が主に食用に利用される品種で「茎チシャ」とも呼ばれています。茎のコリコリとした食感が魅力で、サラダや油炒めなどの料理によく合う品種です。若葉は先端までみずみずしいのが特徴で、おひたしにしてもおいしく食べられます。
草丈 | 30cm〜40cm |
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茎の太さ | 3cm〜5cm |
種まきの時期 | 3月~4月、8月~9月 |
植え付け時期 | 4月~5月、9月~10月 |
肥料の時期 | 5月、10月 |
若葉の収穫時期 | 4月~5月、9月~10月 |
茎の収穫時期 | 5月〜6月、10月〜11月 |
栽培適期は?
茎レタスは、種をまいてから4週間〜5週間ほどで若葉を収穫できます。茎の部分は、種まきから2カ月〜3カ月後に収穫できるのが特徴です。茎レタスの栽培は、種まき〜収穫までが3カ月で終わるため、春まきと秋まきの2回種まきをすれば年に2回収穫できます。霜に当たると枯れる恐れがあり、冬前には収穫が終わるように9月上旬には種まきを終わらせましょう。
花は咲くの?開花時期は?
茎レタスを春まきで育てる場合、3月〜4月に種まきをして4月〜5月に植え付け、6月下旬までには若葉や茎の収穫を終えるように育てます。収穫が遅れると茎レタスがとう立ちし、7月ごろに黄色い花を咲かせます。開花してしまうと葉も茎も硬くなり、食用には向きません。茎レタスは、開花する前に収穫を終わらせるのがポイントです。
茎レタスは、地植えでも鉢植えでも管理できます。畑などの広いスペースが確保できる場合は、畝を立てて栽培するのがおすすめです。鉢植えにする場合は、基本的には1つの鉢に1株ずつ植え付けていきましょう。プランターの場合は、60cmサイズのプランターに2株〜3株ずつ植え付けます。鉢植えにすれば、ベランダ栽培でも気軽に育てられるのが魅力です。
茎レタスは、屋外で地植え栽培する場合がほとんどですが、室内でも育てられます。しかし、室内で育てる場合は日照時間の管理が必要です。茎レタスは日照時間が長くなると、茎が「とう立ち」して味や風味が落ちてしまいます。そのため、夜間は電気を消して、外の街灯の明かりが当たりすぎないように、窓辺の場合はカーテンをしっかりと閉めてください。
とう立ちとは?
とう立ちとは、花芽のついた茎が伸びて開花している状態です。茎の繊維質が多くなるため、茎が硬くなる原因になります。とう立ちの「とう」とは「花茎」という意味をもち、通常花を咲かせない野菜がとう立ちすると、味や風味が落ちます。そのため、おいしい茎レタスを収穫するには、とう立ちさせないように管理するのが重要です。
茎レタスは、日当たりと風通しのよい場所で管理しましょう。日当たりが悪いと茎がヒョロヒョロと間延びしてしまい、茎レタス独特の歯ごたえのある食感が楽しめなくなります。また、風通しの悪いジメジメとした環境で育てると、病気や害虫被害を受けやすくなるので注意しましょう。
葉が黄色く変色する場合は?
茎レタスの葉が黄色く変色する場合は、日照不足を疑います。地植えで育てている場合は、建物やほかの植物の陰になっていないか確認してください。鉢植えの場合は、半日以上は日光の当たる場所に移動させましょう。室内の場合は、たっぷりと日光の当たる窓辺に移動させて、様子をみながら管理します。
茎レタスは、毎回同じ場所で育てると連作障害を起こします。春と秋に収穫を終えたら土を休ませるか、新しい用土に入れ替えてください。また、茎レタスはキク科に分類される植物のため、茎レタス以外の同じキク科の植物を育てても連作障害が発生します。連作障害を起こすと、病害虫被害を受けやすくなるため注意しましょう。
茎レタスを畑で露地栽培する場合は、畝を立ててから植え付けていきましょう。畝の高さは10cm〜15cm、畝の幅は100cm〜120cm程度にします。畑の排水性が悪いようならば、15cm〜20cmほどの高さの高畝にしても構いません。
茎レタスは、排水性の高い用土を使用して育てます。鉢植えにする場合は、市販されている「野菜用培養土」を使用すると便利です。自分で配合する場合は、赤玉土と腐葉土をよく混ぜ込んでから、少量の堆肥やピートモスを加えた用土を使用してください。
地植えにする場合の用土作りは?
茎レタスは酸性の用土を嫌うため、地植えで育てる場合は土壌環境を整えておく必要があります。植え付けの2週間ほど前に、苦土石灰をたっぷりとすき込み、酸素濃度をpH6〜pH7程度に調整しておきましょう。用土をしっかりと耕してふかふかの状態にしておくと、根が成長しやすくなり立派な株に育ちます。
茎レタスの種はとても小さく、畝に直接種まきすると雨で流れてしまう恐れがあります。そのため、育苗ポットやセルトレーなどに一旦種まきをして、本葉が2枚〜3枚程度になったら定植するのがおすすめです。育苗ポットの場合は、3粒〜5粒ほど種をまいてください。セルトレーの場合は、種同士が重ならないようにばらまいていきます。
種まきのコツは?
茎レタスは「好光性種子(こうこうせいしゅし)」のため、光が当たらないと上手に発芽しません。種まき後は、2mm〜3mmほど薄く土をかぶせるのがコツです。また、種まき後の水やりで種が流れてしまうのを防ぐために、あらかじめ用土を濡らしておいても構いません。
茎レタスの発芽適温は15℃~22℃のため、気温が高い場合は、種まきの前日に種を冷蔵庫に入れたり、水に浸したりして種を冷やしておくのがポイントです。また、茎レタスの種は乾燥に弱いため、水切れを起こすと発芽する前に枯れてしまいます。種をまいてから発芽するまでは、水切れを起こさないように、毎日しっかりと水やりをしながら管理してください。
茎レタスは、種まきをしてから約3日〜5日で発芽するのが特徴です。葉が重なると、日光が当たらない場所が枯れたり発育が遅れたりするため、適度に間引きを行いましょう。茎が10cmほどの高さになったら、弱々しい葉を間引いて本葉を2枚〜3枚にしてください。株間を広めておくと、株が大きく成長しやすくなる効果も期待できます。
茎レタスを定植するときは、株間を15cm〜20cm程度あけてください。畝に定植する場合は、20cm〜30cmほど余裕をもって植え付けます。植木鉢やプランターに植え付ける場合は、根が長く伸びることを考慮して、深さのある鉢を使用しましょう。定植するときに根を傷つけると、株が弱ったり枯れたりする恐れがあるため丁寧に扱ってください。
茎レタスは、植え付けの用土に元肥として、堆肥をたっぷりとすき込んでおくのがポイントです。堆肥のほかに鶏糞や油かす、バイオエースなどの有機質肥料を使用しても構いません。元肥は、茎レタスの苗が順調に成長するための大切な栄養分になります。地植えの場合も鉢植えの場合も、しっかりと施しておきましょう。
茎レタスは、成長にあわせて水やりの頻度を変えるのがポイントです。種まき〜発芽までは、土の表面が乾ききる前に水やりをしてください。発芽後、定植してからは、完全に根付くまで毎日水やりをします。定植して2週間ほど経過したら、地植えの場合は水やりの必要はありません。鉢植えの場合は、葉がしんなりとしてきてから水やりをしましょう。
茎レタスはつる性の植物ではないため、ネットや支柱に誘引する必要はありません。しかし、茎レタスは茎がまっすぐ上に伸びていき、草丈は60cm程度まで高く成長します。強風に煽られて株が倒れるのをふせぐために、台風の時期などは支柱で支えておくと安心です。
茎レタスを地植えで育てる場合は、穴あきマルチやシルバーマルチを被せておくのがおすすめです。穴あきマルチは雑草が生えるのを防ぐ効果があり、春まきと秋まきで茎レタスを育てる場合の除草作業が楽になります。シルバーマルチは、光り物が苦手なアブラムシの発生を予防する効果が期待できるため、植え付け後にすぐマルチングをしておきましょう。
茎レタスの追肥は春まきの場合は5月、秋まきの場合は10月に行いましょう。鉢植えの場合は、緩効性の化成肥料を規定の分量を株元に施してください。地植えで育てている場合は、株と株の間に化成肥料を一握りばらまき、土によく混ぜ込んでから株元に寄せるように施します。肥料の与えすぎは、肥料やけを起こして枯れる原因となるため注意しましょう。
茎レタスが発芽しない場合は、土をたくさん被せすぎている恐れがあります。種が「好光性種子」のため、光が十分に届いていないと発芽しません。また、気温が高いと種が休眠するため、25℃を超える場合は種を冷やしてから種まきしてください。
茎レタスの茎がやわらかくなり、しんなりとしている場合は根腐れを疑います。水やりのしすぎで根が腐り、枯れ始めているのが原因です。水やりの回数や量を控えめにして、やや乾燥気味に管理しましょう。葉の先端がしおれはじたときが、水やりのベストタイミングです。
茎の先端やふちが枯れたり腐ったりする場合は、土のカルシウム不足が原因です。苦土石灰や塩化カルシウムをしっかりと混ぜ込み、土壌の環境を整えましょう。
灰色カビ病は、雨が長く降り続くような梅雨時期に発生しやすい病気です。感染した部分が灰色の楕円形状に変色し、放置すると腐敗が始まり悪臭を放つようになります。感染した部分は薬剤を散布しても治せないため、ほかの部分への感染を防ぐためにも、早めに切り取って処分しましょう。
べと病は「糸状菌」というカビが原因で葉の部分に発生する病気です。葉の表面がベトベトに腐り、葉の裏側にはカビが発生します。べと病に感染した部分は、白色や黄色の斑点状に変色し、葉の光合成が妨げられて茎レタスが枯れる恐れがあるため注意しましょう。
アブラムシは年間を通して発生しやすい害虫です。集団で寄生して、茎レタスの栄養分を吸汁しながら成長します。数が少ない場合はガムテープに貼り付けて駆除しますが、大量発生した場合は殺虫剤を散布してください。光り物が苦手なため、シルバーマルチを利用するとアブラムシの発生を予防できます。
ヨトウムシは漢字で「夜盗虫」と表記され、名前のとおり夜になると活動を開始する害虫です。昼間は土の中で休んでおり、暗くなると株元から這い上がってきて、茎レタスの茎や葉を食害します。害虫が見当たらないのに葉が穴だらけになっている場合はヨトウムシを疑いましょう。夜に見回りをして直接駆除するか、株元に殺虫剤を散布して駆除してください。
出典:写真AC