べと病とは?
べと病は別名「露菌病」とも言われ、Peronosporaceae科に属する菌(ツユカビ科の糸状菌)が原因によって引き起こされる病気の総称です。主に空気や水を媒介して伝染します。生きた植物の細胞でしか生きることができない、絶対寄生菌の一つでもあります。
べと病の種類
単にべと病といってもさまざまな属があり、被害作物によっては病名も変わるものもあります。英語では「Downy mildew」と一つの単語で表します。国内で被害が多い主要な属と、どのような野菜がかかりやすいか一覧にまとめてみました。
属名 | 被害の多い野菜 | 病名 |
プシュウドペロノスポラ(Pseudoperonospora)属 | きゅうり・かぼちゃ・メロン・ゴーヤ | べと病 |
ペロノスポラ(Peronospora)属 | 大豆・エンドウ・ダイコン・ハクサイ・タマネギ・バラ | べと病 |
プラズモパラ(Plasmopara)属 | ブドウ | べと病 |
ブレミア(Bremia)属 | レタス | べと病 |
スクレロフトラ(Sclerophthora)属 | イネ・ムギ類 | 黄化委縮病 |
べと病の症状
植物の種類によって症状はさまざまですが、一般的には葉の表面には葉脈で区切られた、角形や丸形の黄色い病斑が現れます。裏面には霜状でやや褐色や灰色のカビを生じます。進行が進むと褐色の斑点が広がっていき、やがて葉が枯れてしまいます。
べと病が発生しやすい時期や要因は?
発生時期
べと病の発生は初春~秋で、特に初夏以降の気温が20℃~24℃くらいの時期に多発します。時間的には午前9時頃~午前中までの、気温上昇がまだ穏やかな時に病原菌の伝染が盛んになります。
土壌による要因
葉から飛散したべと病菌の胞子は、水を媒介にして周囲の植物へ移動します。そのため地下水位が高い場所や排水が悪い畑など、常に水が停滞する場所では多発しやすくなります。
気候による要因
雨が多いことでも発生が非常に多くなります。梅雨など長雨が続く時期には特に注意が必要です。伝染原因の多くが泥はねによる感染であり、降雨によって病原菌が葉や茎へ付着し、気孔から侵入してしまいます。
生育過程での要因
株と株の距離間が狭く、葉や茎が茂りすぎた状態になると発生が増えます。べと病に限らず多くの病気は、風や日が当たりにくい場所は繁殖しやすい環境です。また、逆に強風の当たる場所では葉と葉が触れあい傷が付きやすくもなり、その傷口から病原菌が侵入することもあります。
べと病が発生しやすい野菜6選
①きゅうり
きゅうりのべと病は本葉と子葉のみに発生し、花弁や果実、茎などには発生しません。葉に発生した場合は、葉脈で区切られた多角形型に病斑が広がり、モザイクタイルのような模様ができます。収穫期間が長いため、肥料切れによって発病することも多く見られます。
②ゴーヤ
葉の表面にぼんやりとした黄色い病斑が現れます。葉の裏には灰色のカビが発生します。進行すると次第に黄色い大きな斑点になり、枯れてきてしまいます。ゴーヤの果実には発生しません。
③メロン
淡い褐色のいびつな斑点が点々と現れます。次第にそれぞれが融合して大型の斑点になります。進行すると葉が枯れてしまいます。若い葉の場合は小さな黄色い斑点を生じ、葉の展開とともに新たな淡い褐色の斑点を生じ続けていきます。メロンの果実には発生はしません。
④かぼちゃ
本葉と子葉に淡い黄色の小斑点が生じ、だんだんと大きな淡い褐色の斑点になります。きゅうりに比べて病斑は小さく、角形にならず丸みを帯びるのが特徴です。下葉から上葉へと広がっていきます。かぼちゃの果実に発生はしません。
⑤たまねぎ
葉の表面に淡い黄色の斑点が生じ、薄いクモの巣が張ったようなカビが次第に広がっていきます。進行すると黄白色の斑点になりやがて枯れてしまいます。さらにこの病斑上に葉枯病菌が感染しやすく、二次被害を起こすこともあります。
⑥レタス
葉の表面に葉脈に囲まれた丸い黄色の斑点を生じます。葉の裏には白いカビが見られることもあります。進行すると褐色の病斑に変わっていき、葉全体が枯れていきます。地際で育つ作物のため、泥はねへの対策が特に必要になります。
出典:写真AC