キキョウは秋の七草に数えられる草花で、気品ある花色と楚々とした佇まいが万葉集の頃から親しまれてきました。現在広く栽培されているのは、6月頃から咲く園芸品種です。秋の山野に自生していた原種は激減し、環境省の絶滅危惧種に指定されています。
園芸部類 | 草花、山野草 |
形態 | 多年草 |
樹高・草丈 | 15cm~120cm |
花の色 | 紫、白、ピンク |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 強い |
特性・用途 | 落葉性、ガーデニング、切り花、茶花 |
栽培難易度 | ★☆☆☆☆ |
キキョウの星形の花は、5弁の花びらが幅広の鐘の形にあわさっています。1つの花の中に雄しべと雌しべがあり、雄しべが先に成熟する「雄性成熟」タイプです。雄しべの花粉が散って枯れ始めた頃に、雌しべの柱頭が5弁に開いて受粉可能になります。自家受粉をできるだけ避けるしくみです。
キキョウは、冬には地上部が枯れる多年草です。葉は互生に付くことが多く、楕円形で縁にギザギザが入ります。根は高麗人参のような形をしていて、地中で増えます。根にはサポニンが含まれ、桔梗根と呼ばれて咳止めや去痰の生薬に用いられてきました。
キキョウは、平安の頃に中国名の桔梗(きちこう)で呼ばれ始め、キチコウがキキョウになったといわれています。学名のPlatycodonは「広い釣鐘」の意味で開花した姿をあらわし、英名のバルーンフラワーは風船に似た蕾の形から付けられました。
五月雨は、名前のとおり5月中・下旬から咲き始める早生品種です。種まきから育てる場合、1年目は開花が少し遅れます。草丈が80cm以上になり、切り花にしやすい種類です。花色は紫、白の他にピンク色やしぼり柄があります。
アポイギキョウは、北海道アポイ岳に自生する矮性種です。草丈は20cm前後ですが、花の大きさは一般的なキキョウとほぼ同じサイズです。花色は薄紫色、白、ピンクの他に八重咲きや絞り咲きの園芸品種があります。
植え付け時期 | 3月~4月 |
摘心の時期 | 茎の長さ約30cmの頃 |
花が咲く時期 | 6月~10月 |
キキョウの植え付けや植え替え、株分けは早春か晩秋に行います。すぐに冬越しに入る秋よりも、芽が動き始める直前の早春に作業するほうがベターですが、秋に苗が手に入ったらそのまま植え付けてかまいません。種まきは4月前後、挿し芽は5月頃が適期です。
キキョウは、庭植え・鉢植えどちらでも栽培できます。多湿と乾燥を嫌うので、水はけのよい環境で必要に応じて水やりをして育てましょう。庭植えは、日当たりと風通しのよい場所を耕し、土を高めに盛った花壇や畝に植え付けます。
鉢植えは、軽石などの鉢底石を敷いて水はけのよい状態にしてから土を入れてください。庭植え・鉢植えともに、白い細根がみっしり回っていたら根鉢を少しほぐします。深植えし過ぎないように気を付けましょう。
キキョウは日当たりのよい場所で育ちます。日陰や室内では花芽が育ちにくいので、午前中から午後にかけて日の当たる場所が望ましいです。西日の当たる場所は、できるだけ避けましょう。
キキョウは日本の土壌にあった植物です。やや酸性の土を好むため、苦土石灰で酸度調整する必要はありません。庭植えの場合は、耕した後、腐葉土を鋤きこみます。鉢植え用の土は、赤玉土:腐葉土:鹿沼土を6:3:1の割合でブレンドしましょう。市販の草花用培養土を使う場合は、石灰で酸度調整していない製品を使うといいでしょう。
鉢植えには、土の表面が乾いたらたっぷり水やりします。庭植えには、基本的に水やりの必要はありませんが、乾燥が続くと萎れることがあるので、しばらく雨が降らないときは水やりして下さい。
植え付け時に緩効性肥料を与えます。キキョウは追肥なしでも育ちますが、摘心して花をたくさん咲かせるなら追肥が必要です。3月~10月の期間、月に1~2回を目安に化成肥料を株もとに与えましょう。
キキョウに被害を与える害虫は、アブラムシ、ヨトウムシ、クロウリハムシです。ヨトウムシとクロウリハムシは葉を食い荒らし、アブラムシは新芽をダメにします。見つけたら捕殺するか、殺虫剤で退治しましょう。
キキョウは病気にかかりにくい植物ですが、立枯病には気を付けましょう。夏場に発症しやすく、多湿と菌が原因で株元の茎や葉が腐ってくる病気です。水はけと風通しをよくすることで予防できます。
キキョウの花は咲き終わると、枯れた花びらがしぼんだまま子房にくっついて残ります。種を採取するのでなければ、茶色くなった花がらを摘み取りましょう。見た目がきれいになり、養分が次の花や蕾にいきわたります。
キキョウは種まきから育てられます。育苗ポットに種まき用土か小粒赤玉土を入れ、1ポットに2~3粒ずつ種をまき、うっすら土を被せます。水やりして、発芽まで乾かさないように管理してください。発芽したら1本に間引き、本葉が6枚ほどになった頃に植えつけます。最初の年は、花を多く咲かせずに株を育成するといいでしょう。
植え付け時期が近づくと、ポット苗や花つきの鉢植えが売り出されます。茎がしっかりしていて葉の色の濃いものを選びましょう。苗から育てるなら、1年目からたくさんの花を咲かせることができます。
根詰まりを起こさないように、鉢植えは1~2年に1回植え替えてください。土を払い、新しい土で植え替えます。庭植えは植え替える必要はありませんが、何年も経って地上部が混みあってきたら、掘り上げて株分けして植え直しましょう。
キキョウは、1m近く伸びる種類もあります。茎が30cmほど伸びた頃に摘心をすると、草丈を低く抑えるだけでなく脇芽が育って株が横に広がり、花芽も増えます。切り花用に長めに育てたいときは、倒れないように支柱を立ててください。
花がひとしきり咲いたら、夏前に株の半分ほどの位置で切り戻しをしましょう。株の風通しをよくし、夏越ししやすくするためです。新しい芽が伸び、秋には再び開花します。
開花が終わったら、茎を30cmほどの位置で切り揃えます。完全に枯れたら根元で剪定して、地表をきれいに整えましょう。耐寒性があるのでそのままで冬越しできますが、積雪のある地域では腐葉土や土を盛っておくと安心です。鉢植えは、軒下に取り込んで管理します。
キキョウの増やし方は、種の採取、挿し芽、株分けの3つの方法があります。まず種の採取ですが、花後に枯れた花を摘み取らずに残しておくと、1~2か月ほどで結実して中に小さな種がたくさんできます。袋にいれて、種まきの時期まで冷蔵庫に保管してください。
5月頃に、節が2~3つ付いた茎の先端を7cmほど切り取ります。下葉を取って挿し穂を作り、湿らせておいた小玉赤玉土か挿し木用土に挿します。明るい日陰に置き、発根するまで乾かさないように管理しましょう。
キキョウの株分けは、小さく分けすぎると生育が悪くなるので、数年経って根が太くなった頃に行いましょう。地上部が枯れた晩秋か早春に掘り上げます。根の上部に芽が付いていることを確認して、分けやすい部分で切り離します。植え付けるときに、根が肥料に直接ふれないように気を付けてください。
出典:写真AC