サラセニアは筒状の捕虫葉をもつ食虫植物のひとつで、葉脈や色合いの美しさから観賞用としても人気があり、生花としても注目されています。原種はアラタ(アラータ)・フラバ・レウコフィラ・ミノール・オレオフィラ・ルブラ、コンパクトなプルプレア(パープレア)・プシタシナの8種類です。それ以外にも自然交雑種や、各種の交配種が作り出されています。
園芸分類 | 食虫植物、観葉植物 |
形態 | 落葉性多年草 |
樹高・草丈 | 15cm〜1m |
花の色 | 黄色、緑、ピンク、赤 |
耐寒性 | 普通 |
耐暑性 | 強い |
特性・用途 | 湿地性 |
栽培難易度 | ★★☆☆☆ |
サラセニアの特徴は、筒状になった捕虫葉です。筒の中には虫を消化するための酵素を含んだ消化液があり、フェロモンに引き寄せられた虫が中に滑り落ちてしまいます。サラセニアは落とし穴式の食虫植物で、筒の内部には下向きに毛が生えていて、一度入った虫が中から出てこられない仕組みになっています。
サラセニア・アラタ
参考価格: 700円
原種系のサラセニアで、草丈が比較的高くなるタイプです。葉は黄緑色で細長く、まっすぐに立ち上がります。
おすすめ度 | ★★★ |
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(食虫植物)サラセニア プルプレアssp.ベノーサ 4号(1鉢)
参考価格: 2,070円
プルプレアはムラサキヘイシソウとも呼ばれ、黄緑色の葉に赤紫色の葉脈が特徴です。草丈は低めで筒の上部にはフタがなく、リーフレタスのようなフリルがあります。
おすすめ度 | ★★★ |
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サイズ | 4号鉢(直径12cm) |
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■食虫植物■サラセニア Leucophylla red4.5号プラ鉢植え
参考価格: 2,380円
レウコフィラは草丈が長く成長するタイプで、葉脈の美しさからアミメヘイシソウとも呼ばれます。夏は日当たりをほどよく加減して、きれいな色合いを保ちましょう。
おすすめ度 | ★★★ |
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サイズ | 4.5号(直径13.5cm)底面吸水鉢 |
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サラセニアなどの食虫植物の苗は、一般的に初夏ごろに流通することが多いです。夏に入手したら長雨の当たらないところで管理します。サラセニアは秋の終わり頃に落葉し、地上部が枯れた状態で休眠します。株が凍りつかない場所で冬越しさせて、春の開花時期を迎えましょう。
サラセニアの栽培適期は春~秋です。気候の穏やかな春と秋は、屋外での栽培が向いています。気温が高く日差しのきつい真夏は、直射日光が避けられる明るい日陰か室内に移動しましょう。サラセニアの自生地の湿地帯をイメージして、根の湿度を保ち地上部は風通しのよく整えるのが理想的です。
サラセニアの色と姿を保つ真夏の管理ポイント
サラセニアの栽培は鉢植えが基本です。湿地性の植物ですが、常に株元まで水に浸かるような水辺ではなく、適度な湿度を保てれば庭植えでも育てられます。
湿地性のサラセニアを鉢植えで育てるポイントは、深めの受け皿や容器に2〜3cm水を貯める腰水管理が最適です。通気性のよい素焼き鉢や駄温鉢は、蒸れにくく水苔との相性がよいのでおすすめです。
サラセニアを育てる場所は春と秋は屋外で、捕虫葉の中に雨水が入らないよう、屋外でも長雨を避けられる軒下などを選びます。サラセニアの葉脈や葉色をきれいに保つには、春〜秋の成長期の日当たりが大切です。室内で管理する場合も、日当たりと風通しのよい場所を選びましょう。
サラセニアをきれいに育てるコツは成長期の日当たりですが、真夏の高温期の強い日差しは葉を傷めます。40〜60%程度に遮光するか、明るい日陰か室内に移動します。根鉢(鉢の中の根と土の塊)の温度が上がると、起こりやすくなるのが根腐れです。風通しのよい場所で、蒸れを防ぎましょう。
サラセニアの用土は保水性と通気性があり、pH4.5〜5.5の酸性に近い弱酸性土が最適です。以前は水苔での栽培が推奨されていましたが、市販の食虫植物の土をおすすめします。特に草丈が高くなるサラセニアは、根の張りがよくなり倒れにくくなります。用土を配合する場合は、鹿沼土3:ひゅうが土の小粒3:ピートモス(pH未調整)4がよいでしょう。
よい苗の選び方のポイントは、葉の色ツヤがよく数が揃っているかという点です。病気や害虫の発生がないかも確認しましょう。食虫植物の苗は初夏から夏頃に、ホームセンターや園芸店に流通します。ほかにはランや山野草の展示会で、即売コーナーに並ぶこともあります。ネット通販では生産者の直販もあり、交配種など珍しい品種を探しているかたにおすすめです。
筒の中に溜まった水は捨てたほうがいいの?
成長期のサラセニアの捕虫葉に溜まっているのは、虫を消化するための酵素を含んだ消化液です。消化液が筒の半分以上に増えてしまったら、スポイトで抜いてあげましょう。逆に乾燥して空っぽになった状態もよくありません。スポイトで水を少量入れてください。
サラセニアの水やりは、受け皿に水を張る腰水管理が適しています。水やりは受け皿に水を足すのではなく、上から回しかけて溜まった水を新鮮な水に入れ替えます。夏はボウフラが湧いたり、水温が高くなったりするので、風通しのよい場所でこまめに水替えして、水質を保ちましょう。
サラセニアの栽培には、虫も肥料も必要ありません。屋外で栽培すると自然に虫が入っていることがあるので、適度に栄養が補えます。虫がこない室内では、500〜1000倍程度に薄めた液体肥料や活力液を、春と秋に1回ずつ水やりのタイミングで与えます。
サラセニアの栽培で気をつけたい病気は、ウイルス病です。モザイク病とも呼ばれ、葉の色がまだらに変色したり、葉が縮れて変形したりします。傷んだ葉を剪定して、様子を見ましょう。ウイルス病は薬剤で対応できない病気で、アブラムシやスリップス(アザミウマ)などの害虫が媒介する病気で、害虫予防も効果があります。
サラセニアの栽培で気をつけたい害虫は、アブラムシやハダニです。特にアブラムシは病気を媒介することもあり、繁殖力が旺盛なので早めの予防や対策が大切です。
サラセニアは日照不足や乾燥・低温などで、葉が茶色く枯れることがあります。落葉性で春になれば新芽が出てきますが、枯れた葉をそのままにしておくと病気が発生しやすくなるので、その都度剪定して整理しましょう。
葉が茶色く枯れてしまうのはなぜ?
サラセニアの葉が茶色く枯れるのは、夏は葉焼けや肥料の与えすぎ・根腐れ、冬は生理落葉です。完全に茶色くなってしまったら元に戻ることはないので、剪定して整えます。部分的に茶色くなった場合は、変色したところだけを切り落とします。
サラセニアは春3〜5月ごろに花を咲かせます。タネを採らない場合は開花後に花茎を剪定して、株を大きく成長させましょう。タネを摂る場合も1株でひとつだけ残して、ほかは花後に剪定し秋頃に採種します。
サラセニアは、多少霜が降りる程度なら屋外での冬越しが可能です。根鉢全体が凍るような寒冷地では、室内での冬越しが向いています。枯れた葉を剪定して昼間は日が当たる場所に置き、休眠中も適度な湿度を保って根の乾燥を防ぎます。
サラセニアの植え替えは、休眠時期の12〜2月が適期です。タイミングは1〜2年に1回で、鉢の中が混み合ってきたら株分けも同時に行います。材料と手順は次の項目の、株分けと同じです。
新芽が増えて鉢が詰まってきたら、植え替えと同じタイミングで株分けをしましょう。時期は12〜2月の休眠中で、株分けで鉢のサイズを大きくしすぎないことがポイントです。水の管理がしやすく、根腐れを防げます。
サラセニアの種は表面が硬くそのままでは発芽しないため、低温処理が必要です。種をまく前に湿らせたキッチンペーパーで包み、冷蔵庫で1カ月ほど保存しておきます。まく時期は1〜2月が最適です。
出典:Unsplash