ヤグルマギクは、素朴な風情と青紫色の花が魅力的な一年草です。枯れても花色が褪せにくいため、古代エジプト王朝の時代から花輪などに使われてきました。フランス王妃マリー・アントワネットにも愛され、食器の小花散らしの模様に図案化されています。ドイツの国花でもあり、日本には明治期にやってきました。
園芸部類 | 草花 |
形態 | 一年草 |
樹高・草丈 | 30cm~100cm |
花の色 | 青、青紫、白、ピンク、赤紫 |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 普通 |
特性・用途 | 花壇、切り花、ドライフラワー、ポプリ |
栽培難易度 | ★☆☆☆☆ |
ヤグルマギクは、ヨーロッパの荒れ地や麦畑などで群生していた丈夫な野花です。茎は枝分かれしやすく、株元の披針形の葉は幅広で、上部の葉は線状で繊細です。形が崩れにくく花色が褪せないので、ドライフラワーにしても好まれます。
ヤグルマギクの花は、キク科の特徴である小さな筒状花が中心に集まります。花びらのような舌状花はもたず、筒状花が矢車のように放射状に広がります。美しい青紫色は「コーンフラワーブルー」といわれ、極上のサファイアの色に使われる言葉です。
ヤグルマギクの名前は、花の形が鯉のぼりの竿などに付ける矢車に似ていることに由来します。矢車草とも呼ばれていましたが、同名の別の植物(葉っぱが矢車に似ている)との混同を避けるため、あまり使われなくなりました。
コーンフラワーは、穀物畑に咲いていたことから名づけられました。学名でもあるセントーレアは、ギリシャ神話の半人半馬のケンタウルスのことです。ケンタウルス族のケイローンが負傷した際、消炎作用のあるヤグルマギクで手当てした逸話に由来します。
ヤグルマギクの中で、最も入手しやすいのは平山寒咲きと呼ばれる種類です。畑地などで野生化しているのは一重咲きですが、八重咲きの花色ミックスが流通しています。育てやすく、草丈は100cmまで伸びます。
ブラックボールは、パステルカラーの多いヤグルマギクの中ではめずらしい濃い赤紫色の花です。シルバー系の葉が花色を引き立てて、シックな風情をかもしだします。
種まきの時期 | 10月~11月 |
植え付け時期 | 11月、4月 |
花が咲く時期/開花時期 | 4月~5月頃 |
ヤグルマギクは基本的には、秋に種をまき、春に花を咲かせます。寒冷地では、春まきで初夏咲き栽培も可能です。苗は、手に入ったときに植えつけてかまいません。
ヤグルマギクは庭植え・鉢植えどちらでも育てられます。寄せ植えもでき、ヤグルマギクだけを群生風に育てるのもナチュラル感が出て素敵ですよ。
ヤグルマギクは日当たりのいい場所でよく育ちます。荒れ地でも咲く丈夫な植物ですが、日陰では生育が悪く、花芽も少なくなります。
ヤグルマギクは水はけのよい土を好みます。酸性度の強すぎる土地は苦土石灰をまいて調整してください。鉢植えには、赤玉土と腐葉土を7:3の割合で混ぜた土か、草花用培養土を使います。
鉢植えには、土の表面が乾ききったらたっぷり水やりして下さい。庭植えは降雨だけで十分で、水やりは必要ありません。
植え付け時に、緩効性肥料を与えます。庭植えには追肥しなくても十分です。肥料が多すぎると茎が高く育ちすぎて倒れることがあります。鉢植えには、1か月に1回置き肥するか、液肥を2回ほど与えてください。
ヤグルマギクに寄ってくる害虫はアブラムシです。葉裏や新芽に集まるので、早めにみつけて水で洗い流すか食品成分由来の殺虫スプレーなどで撃退しましょう。
ヤグルマギクは病気にかかりにくい植物です。それでも何年も同じ場所に植えていると、立枯病を発症することがあります。植える場所を適度に替えましょう。
花後は放任していてもそれほど見苦しくない植物ですが、枯れかけた花の茎を剪定すると、また芽が伸びて次々に花を咲かせます。開花期の終盤では、枯れた後そのままにして種を採るのがおすすめです。
発芽適温は20℃前後です。育苗ポットに種まき用土を入れてまきます。軽く覆土して水やりし、発芽するまで乾かさないように管理してください。本葉が7枚くらいのときに植えつけます。花壇やプランターに直播も可能です。
秋ごろにポット苗が、春になると花つきの鉢植えが店頭に並びます。ポット苗は葉の状態のよいものを選んでください。鉢植えは、葉の間をチェックして茎のしっかりした苗を選びましょう。
ヤグルマギクの根は直根性なので、植え替えを嫌います。ポット苗を植え付けるときは、根鉢をできるだけ崩さないように気を付けて下さい。
ヤグルマギクは、こまめに摘心しなくても、花後に茎の下の方で剪定する程度で十分です。草丈を低くおさえたいときは、適度な位置で剪定しましょう。
耐寒性があるので、種まき(植え付け)後に根がしっかり張っていれば冬越しできます。鉢植えは、軒下に取り込んでおくと安心です。寒い地域では、春に種をまいて初夏に咲かせるとよいでしょう。
ヤグルマギクの増やし方は、挿し木よりも種まきが簡単で、おすすめです。種は採取しやすく、発芽率も高めです。花色混合で植えていると、青花の種が多くなる傾向があります。こぼれ種で自然に育つこともありますが、枯れた後に種を採取して、種まきをするほうが確実です。
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