チャノキは中国やインド、ベトナムが原産の常緑性小高木です。ツバキ科ツバキ属に分類されており、10月〜12月にかけて真っ白なかわいらしい花を咲かせます。庭木や鉢植えだけでなく、シンボルツリーや生垣にもおすすめの植物です。
園芸部類 | 庭木、花木 |
形態 | 常緑性小高木 |
樹高・草丈 | 1m〜15m |
花の色 | 白 |
耐寒性 | やや強い(品種によっては弱い) |
耐暑性 | 強い |
特性・用途 | 庭木、生垣、鉢植え、初心者向け |
栽培難易度 | ★☆☆☆☆ |
チャノキは「中国種」と「アッサム種」の2つに大きく分けられます。中国種は耐暑性と耐寒性が強く、初心者でも育てやすい品種です。アッサム種は熱帯地方が原産のため、寒さと乾燥に弱く、上手に管理しないと枯れ込んでくる恐れがあります。山野に自生しているチャノキは15mほどまで大きくなりますが、茶畑では1mほどに剪定されている場合がほとんどです。
チャノキの葉は「煎茶」「ほうじ茶」「緑茶」「紅茶」「烏龍茶」全てのお茶の原料として利用されています。チャノキの葉をどのように乾燥させるかで、お茶の種類が異なるのが特徴です。チャノキの葉を使用しない「ルイボスティー」や「マテ茶」「ごぼう茶」などは「茶外茶(ちゃがいちゃ)」と呼ばれます。
チャノキは茶葉として利用されるだけでなく、新芽は天ぷらやおひたしにしてもおいしく食べられます。また、花も食用にできるのが魅力で、新芽と同じく薄く衣をつけて天ぷらにしたり、料理の飾りつけにしたりするなど、さまざまな食べ方ができる植物です。花を乾燥させたものを茶葉にすれば「花茶」としても利用できます。
名前の由来は?
チャノキは漢字で「茶の木」と表記され「お茶の木」という別名でも親しまれています。チャノキの葉を乾燥させたものが、茶葉として利用されているのに由来してつけられた名前です。
花言葉は?
チャノキには「追憶」「純愛」「謙遜」という花言葉がついています。チャノキの花は下をむいて、うつむき気味に咲くのが特徴です。その咲き姿が、恥じらいをもっているように愛らしく見えたため「純愛」「謙遜」という花言葉がつけられました。
寿命は?
チャノキの寿命は本来100年未満とされていますが、原産地でもある中国では800年以上生きているチャノキが存在しています。ツバキ科の植物は寿命が長いとされていますが、庭木として育てている場合のチャノキの寿命は40年〜80年が一般的です。
お茶の木 大輪種 天白 (テンパク)
参考価格: 1,898円
天白は、チャノキの品種の中でも3cm〜4cmほどの大きな花を咲かせる「大輪種」です。あまり流通していない希少種で、苔玉などを使用すれば室内で盆栽としても育てられます。
樹高 | 1m〜5m |
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花の大きさ | 3cm〜4cm |
チャノキ 紅富貴(ベニフウキ)
参考価格: 1,200円
紅富貴は、紅茶の茶葉用に品種改良された品種で、開花時期には芳香が楽しめます。アッサム種に分類されており、大きな葉にはタンニンが多く含まれています。
樹高 | 1m〜10m |
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花の大きさ | 2cm〜3cm |
植え付け時期 | 4月〜5月 |
植え替え時期 | 4月〜5月 |
肥料の時期 | 2月〜3月、9月〜10月 |
剪定の時期 | 4月〜6月 |
花が咲く時期/開花時期 | 10月〜12月 |
チャノキは地植えでも鉢植えでも育てられます。地植えで育てると樹高が15mほどまで成長するため、広いスペースを確保してから植え付けてください。小さく剪定しながら育てると、鉢植えでも育てられます。葉が密に茂る性質をいかして、生垣や「玉仕立て」にするのもおすすめです。
「玉仕立て」とは?
玉仕立てとは、玉のようにまん丸な樹形に剪定する方法をさします。側枝を深く刈り込み、丸い形になるように切り戻し剪定をしながら樹形を整えていく方法です。玉をいくつか作る「玉散らし」や、三角形に剪定する「円すい型仕立て」などの剪定方法もあります。
チャノキは「小高木」に分類される植物のため、基本的には屋外で育てます。しかし、種まきから育てる場合は、発芽適温が23℃〜25℃と屋外では調節が難しいため、室内で発芽まで管理するのがポイントです。室内では、エアコンの風が直接当たらない置き場所を選んでください。
チャノキは日当たりと風通しのよい場所で管理しましょう。日当たりの悪い場所で育てると、枝だけが間延びして葉付きや花付きが悪くなります。耐陰性があるので、ほかの植物が育ちにくい半日陰でも管理できますが、日光が全く当たらない場所は避けてください。葉がたくさんつくため、風通しのよい場所で管理して病害虫被害を予防しましょう。
葉が黄色く変色する場合は?
チャノキの葉が黄色く変色している場合は、日照不足を疑います。地植えの場合は、ほかの植物や建物の陰になっていないか確認してください。鉢植えの場合は、半日以上は日光が当たる場所に移動させましょう。黄色く変色した葉を茶葉として利用すると、味や風味が落ちる可能性があります。
チャノキは多湿が苦手なため、排水性の高い用土で育てます。市販されている「花木用培養土」や「庭木用培養土」を使用しても構いません。自分で配合する場合は、赤玉土の中粒と腐葉土をよく混ぜ込んだ用土を使用してください。地植えにする場所が粘土質の場合は、川砂や腐葉土をたっぷりとすき込んで、水はけをよくしておきましょう。
鉢植えの場合は?
チャノキを鉢植えで育てる場合は、素焼きの鉢を使用するのがおすすめです。素焼きの鉢は、プラスチックの鉢に比べて通気性がよく、用土が蒸れるのを防ぐ効果が期待できます。用土の下に鉢底ネットと鉢底石を敷いて、さらに排水性をよくしておきましょう。
チャノキを地植えで育てている場合は、完全に根付いてしまえば降雨のみで十分です。しかし「アッサム種」の場合は乾燥に弱いため、雨が全く降らない日が続くようならば、様子を見ながら水を与えてください。鉢植えの場合は、土の表面が乾燥したら、鉢底から水が流れ出る程度にたっぷりと水やりをしましょう。
肥料は、2月〜3月にかけて「寒肥」として、鶏糞や油かすなどの有機質肥料を株元に適量与えてください。9月〜10月は緩効性の化成肥料を1カ月に1回〜2回の割合で与えます。植え付けの用土に、元肥として堆肥をすき込んでおいても構いません。肥料の与えすぎは、肥料やけを起こして枯れる原因となるため注意しましょう。
カイガラムシは、5月〜8月にかけて発生しやすい害虫です。貝殻のように硬い甲羅に守られており、殺虫剤が効きにくいのが特徴です。集団で寄生し、チャノキの栄養分を吸汁しながら成長するため、株が弱ったり枯れたりします。発見したらすぐに歯ブラシなどを使用して、株から払い落とすように駆除してください。
チャドクガは、ツバキ科の植物に発生しやすい害虫です。ツバキ科の中でも「茶の木(チャノキ)」がとくに被害を受けやすいため「茶毒蛾」と名付けられています。トゲに毒成分を含んでいるため、直接触るとかぶれやかゆみの原因になるので注意しましょう。発見したら殺虫剤で駆除したり、バーナーで焼き殺したりして駆除してください。
炭そ病は、湿度の高い環境で管理しているとかかりやすい病気です。感染した部分が、すすがついたように黒色や褐色に変色するのが特徴で、葉の光合成が妨げられます。炭そ病に感染した部分は薬剤を散布しても治せません。ほかの部分への感染を防ぐためにも、早めに切り取って処分しましょう。
チャノキは花後に花がらを放置すると、花びらが葉や枝にくっついてカビが発生しやすくなります。カビが原因で発生する「灰色カビ病」に感染する恐れがあるため、花後はこまめに花がら摘みを行い、株を清潔に保ちましょう。
植え替えは、植え付けと同じ4月〜5月に行います。根を傷つけないように丁寧に掘り起こし、根が傷んでいる部分を切り取ってください。根についている古い用土を落としてから、新しい用土に植え替えます。完全に根付くまでは、風通しのよい日陰で管理してください。
植え替えは必要?
チャノキを地植えで育てている場合は、植え替えの必要はありません。しかし、鉢植えの場合は、根詰まりを防ぐために1年〜2年に1回はひと回り大きな鉢に植え替えます。チャノキは根を深くまで伸ばす性質があるため、鉢植えで根付きが悪い場合は、地植えに切り替えるのがおすすめです。
チャノキの剪定は4月〜6月に行います。葉が込み入っている部分や、枝が伸びすぎている部分を切り戻し剪定して、樹形を整えていきましょう。樹勢が強いため、株の半分程度まで思い切って剪定しても構いません。梅雨前までに剪定をすませておくと、風通しがよくなり病害虫被害を予防できます。
チャノキは耐暑性が強いため、夏越しに必要な作業はとくにありません。夏は地面の土が乾燥しやすくなるため、植え付けたばかりの若木の場合は水切れに注意しましょう。
チャノキは地植えでも冬越しできますが、アッサム種の場合は耐寒性が弱いので冬越し対策が必要です。チャノキは常緑性のため冬でも葉をつけており、葉に雪や霜が当たると株が弱ったり枯れたりする恐れがあります。寒冷地の場合は、ビニールやバークチップなどを利用してマルチングをしてから冬越しさせると安心です。
チャノキの挿し木は6月〜7月が適期のため、剪定で切り落とした枝を使用しても構いません。若くて健康に育っている部分を選び、先端から15cm〜20cmほどの長さで切り取ります。切り口を水に挿してたっぷりと水を吸わせたら、赤玉土などの挿し木用の用土に挿してください。発根するまでは、水切れを起こさないように注意しましょう。
チャノキは花後に種子をつけるため、種子の中から種を採取すれば種まきでも増やせます。種を採取する場合は、花後に花がら摘みを行わずに、立ち枯れるまでそのまま育ててください。種子が黒くなり完全に立ち枯れたら、花茎から切り取って種を採取します。種が乾燥すると発芽率が下がるため、すぐに種まきするのがポイントです。
出典:写真AC