カイガラムシの生態
果物の樹や庭木にいつの間にかたくさんのカイガラムシがついていたことはないですか?カイガラムシは、樹液を吸って果実や枝をボコボコにするだけでなく、病気を誘発する困った害虫です。この記事では、カイガラムシの生態や特徴から上手に駆除できる防除方法について解説します。
カイガラムシの殻
カイガラムシには多くの種類があり、日本では12科400種近いカイガラムシが確認されています。全カイガラムシに共通することは、自らの身を防御するためにまとう脱皮殻や排泄物などでできた被覆物です。特に、ロウ状の殻を被るとちょっとの衝撃ではびくともせず、水も弾くためなかなか落下することもありません。
カイガラムシの脚
カイガラムシには動く種と動かない種がいます。動かない種のカイガラムシは、日本で最も種が多いマルカイガラムシの仲間であり、この種類は成虫になると殻を被り脚が消失します。一方で、動く種は成虫になっても、殻を被らず綿やロウ状の物質をまとい移動ができます。いずれも、卵を抱きながらふ化するまで被覆物の中で籠城するのがカイガラムシの基本性質です。
カイガラムシの幼虫
外からの衝撃に強いカイガラムシですが、対照的に幼虫はとても脆弱です。生まれたての幼虫はカイガラムシ特有の被覆物で体表を防御しておらず外の影響を最も受ける時期です。ふ化後は素早く動き隙間に定着して被覆物を数日後には体にまといだします。
カイガラムシの生態
- カイガラムシの被覆物には殻や綿、粉状などのさまざまな種類がある
- カイガラムシの成虫には動ける種と動かない種がある
- カイガラムシの幼虫は殻をまとわず脆弱
カイガラムシ被害の原因
カイガラムシ駆除で悩んでいる人は、「しばらく見ないうちにどうしてこんなにカイガラムシが増えているの」と思う人が多いと思います。ここでは、カイガラムシが大量発生する原因についてまとめてみました。
大量発生の原因①:根暗な性格
カイガラムシは日が当たらず風通しのよくない根暗な場所を好みます。幼虫のあいだに葉の裏側、果実のくぼみ、荒皮の中、幹の割れ目などの人目につきにくい場所に移動するため発見が難しくなります。カイガラムシは新梢や葉の根本、剪定切り口に集まっていることが多いので注意深く観察しましょう。
誘引ひもに注意
リンゴやナシなどの管理栽培では日当たりや風通しをよくするために、こまめな剪定をしてカイガラムシ被害を予防できます。ここでさらに、樹の形を整える誘引ひもにも注意する必要があります。長く使った誘引ひもの結び目は、暗くて狭いところが好きなカイガラムシの温床になりやすいです。そのため、誘引ひもや麻ひもは毎年交換して、古いひもはその場に捨てず燃えるゴミといっしょに出しましょう。
大量発生の原因②:産卵数
自らを被覆物で防御するカイガラムシは雌成虫ばかりで、産卵してふ化の瞬間までじっとこもっています。この殻の中には100~300程度の大量の卵があり、1年間で世代交代は3~4回起こります。このことは、1個体を3ヶ月くらい放置するだけで1万近い個体に増えるを示します。どのようなことにも言えますが、最初の予防がとても大事なポイントですね。
カイガラムシの雄成虫
被覆物で身を守るのはカイガラムシの雌成虫だけですが、雄成虫は飛行することができます。しかし、カイガラムシの雄成虫の寿命が短く、羽化してから2~3日、長くても1週間と極めて短命です。ふだん目にすることができるのは、雄雌幼虫か雌成虫ですので、微小な羽がある雄成虫はめったにみることができません。
大量発生の原因③:天敵の駆除
防御力の高い被覆物にこもるカイガラムシですが、意外にも自然界に天敵は多く、捕食性・寄生性の昆虫や小動物に狙われやすい昆虫です。しかし、防除効果の高い殺虫剤を年に何度も散布すると、カイガラムシだけでなく天敵昆虫の存在まで防除してしまいます。これにより、害虫と天敵のバランスが崩れ、カイガラムシの異常発生につながることがあります。そのため、農薬の使用は必要最小限にとどめることが、重要なポイントになります。
カイガラムシの天敵
カイガラムシの自然界の天敵には寄生性昆虫、捕食性の昆虫・小動物、微生物があります。寄生性の昆虫では特に、寄生蜂が有名であり例えばナシの大害虫であるクワコナカイガラムシの天敵はクワカイガラヤドリという寄生蜂です。この寄生蜂は、カイガラムシに卵を産み付け、絶命させるまで身体の中で幼虫を育てさせます。補食性の昆虫にはカゲロウやテントウムシ、タマバエなど多くの種類がいます。
無農薬の環境ではカイガラムシが増えやすくなるから注意が必要です。次のページは駆除方法の解説をします。
カメノコロウムシ