ハイブリッド芝とは?
ボタニ子
ボタ爺
そのようじゃの。今回ラグビーへの関心が高まっているのと同時に、スタジアムで使われている芝生にハイブリッド芝が導入されたことに注目されているのだが、知っていたかな。
ボタニ子
ハイブリッド芝?ハイブリッドって、何かと何かの合体だよね。芝が何と合体してるのかな?
ボタ爺
うむ。このハイブリッド芝はこれまでの芝生とどう違うのか、構造などを解説していくぞ。
ハイブリッド芝の構造
ハイブリット芝は天然芝と人工芝を混ぜ合わせた芝生のことをいい、ラグビーやサッカーなどのスポーツ競技が行われるフィールドで用いられています。混ぜ合わせたといっても、天然芝95%、人工芝5%程度で構成されているため見た目は天然芝とほとんど変わりません。天然芝の根元を補強するために、人工芝繊維を等間隔で深く打ち込んでいます。これにより、天然芝の根が人工芝に絡みつき、深く根付けるのです。
ハイブリッド芝の種類
ハイブリッド芝は、3種類あります。
- 人工繊維補強型
芝が生育する土壌の中に微小な繊維であるマイクロファイバーを混ぜてつくる方式です。マイクロファイバーが根の役割をして砂利を掴むため、長期間安定したフィールドを維持できます。
- 打ち込み式(ステッチ式)
大きなソーイングマシンという機械で、天然芝に人工芝繊維を打ち込んでいくタイプです。人工芝繊維は深さ9~20cmまで打ち込みますが、地上部にでるのは2cmほどです。この地下部の人工芝繊維に芝の根が絡みつくことで、摩擦に強い芝生になります。
- カーペット式
その名のとおり基礎部分に人工芝が植え付けられており、そこに砂利や天然芝を敷いていく構造です。他の二つの種類と異なり別の場所での育成が可能で、導入後からの利用開始期間を短くできます。
ハイブリッド芝の管理
これまで説明してきたとおり、ハイブリッド芝は大半が天然芝のため管理は天然芝とは遜色なく行えます。さらに人工繊維を打ち込んでいることにより排水性が向上しているため、散水回数は増えますが、雨の多い日本における導入に期待が集まっています。
ハイブリッド芝の特徴
特徴①:激しいスポーツでも耐えられる
ハイブリッド芝は、人工繊維に芝の根が絡みつくことで、踏圧や摩擦に強くなってます。これまでスタジアムの芝生はサッカーや野球などの競技によって芝生がめくれたり穴ができたりするなどで修復作業が大変でした。ハイブリッド芝であればラグビーのようにかなり負担のかかるスポーツでも芝生の損耗を抑えるられるようになりました。
特徴②:滑りにくいため怪我をしにくい
ハイブリット芝は滑りにくさと柔らかさから、選手の怪我を軽減できます。ハイブリット芝は基礎部分に人工繊維が打ち込まれていることから、弾力性のある構造が」特徴です。この構造は、安定した平面上で程よい柔らかさを生み出し、サッカーや野球におけるスライディングをしても摩擦の衝撃を最小限にします。また、雨などで濡れても排水性が高いことから滑ることが少なく選手の脚の負担にもなりにくいです。
ボタニ子
野球を見ていると、雨で滑ることも多いものね。滑ることを防げたら、試合に集中できそう!
特徴③:コストを安く抑えられる
ハイブリッド芝は天然芝に比べて張り替えの頻度が少なくなるため、これまでの天然芝の維持管理費に比べてコストを抑えられます。ハイブリッド芝の施工業者によると、コストについて下記の内容でうたわれています。これにより、芝生全面張替えの回数が減らせるだけでなく、滑ることを気にせず安定したフィールドでプレイできることによる選手のパフォーマンスの向上、スポーツ以外のイベントへの貸出も可能になることから収益化の向上も見込めます。
グラウンドの寿命が3倍伸びるため維持コストが削減!
ボタニ子
今後はより一層フカフカの芝生がみんなに馴染みのある存在になるかもねっ。次のページで他の芝のメリットやデメリットも見ていこう!
ハイブリッド芝と芝生との違い
ハイブリッド芝のメリット・デメリット
ハイブリッド芝のメリットはこれまで説明してきた特徴のとおりですが、デメリットは天然芝が育ちにくい環境ではハイブリッド芝も育たないという点です。また、ヨーロッパから導入された技術のため、日本の気候とそぐわない部分もあり、まだまだグラウンドの芝生管理者が対応していかなければならない課題が多いです。
人工芝のメリット・デメリット
人工芝といっても、スタジアムで使われるような人工芝は家庭でみるような短いタイプではなく、遠目では本物と間違うような質の高いものです。水はけに強く管理費が安いなど、コスト面でも大きなメリットがありますが、天然芝に比べると硬いため選手への負担が大きいのがデメリットです。
天然芝のメリット・デメリット
天然芝は選手の体への負担が軽減されることから、サッカーやラグビーなどの大きなリーグでは積極的に使われています。しかし、雨の多い日本では排水性の悪さによる試合中止もおこりやすく、育つのに向いた気候とはいえません。スポーツをプレイする環境としては、優れた天然芝の環境が最高ではありますが、その分維持管理費がかかるのがデメリットです。
ハイブリッド芝の活用場所
ハイブリット芝は1990年代にヨーロッパから導入されてきましたが、かつてはフィールドが硬くなるという課題がありましたが、技術改良の進歩によって2010年代の国際大会からハイブリット芝が導入されるスタジアムが増えてきました。
世界におけるハイブリッド芝の活用
ハイブリット芝は世界的に普及がすすんでおり、野球、サッカー、フィールドホッケー、アメリカンフットボールなどの競技で採用されています。ハイブリット芝が導入されているスタジアムの中には、イギリスのマンチェスターユナイテッドやアーセナルFCスタジアム、イタリアのACミランのサンシーロスタジアムなどヨーロッパのトップレベルの選手が活躍しているところもあります。
ボタ爺
2018年に行われたロシアのサッカーワールドカップでは12会場中10会場でハイブリット芝が導入されているぞ。
日本におけるハイブリッド芝の活用
近年、日本では競技会場を天然芝に限定していたJリーグや日本陸連がハイブリッド芝の容認に踏み切りました。これは、ラグビーの国際団体が人工芝使用に関する基準においてハイブリッド芝を認可したことによる世界的なハイブリッド芝の評価の高まりのためと考えられます。Jリーグが認めているハイブリッド芝の規定は「ピッチ全体が天然芝と5%以下の人工芝と組み合わせたもの」となっています。
日本でハイブリット芝が導入されているスタジアム
日本でハイブリット芝が初めて導入されたスタジアムは兵庫県のノエビアスタジアム神戸です。ラグビーワールドカップ2019開催にあたり以下のスタジアムで導入が進んでいます。
- 人工繊維補強型
釜石鵜住居復興スタジアム(岩手県)
- 打ち込み式(ステッチ式)
ノエビアスタジアム神戸(兵庫県)
ヴィッセル神戸練習場・いぶきの森球技場(兵庫県)
- カーペット式
レッズスタジアム(埼玉県)
日産スタジアム(神奈川県)
味の素スタジアム(東京都)
昭和電工ドーム(大分県)
ボタ爺
このなかでも、日産スタジアムはラグビーワールドカップの決戦の地。また、2002FIFA日韓ワールドカップ決勝が行われ、2020東京五輪の男子サッカー決勝も行われることから、世界初の3大スポーツイベントの決勝戦が行われるスタジアムになるぞ。
まとめ
芝にはご紹介してきたハイブリッド芝など、さまざまな種類があります。スタジアムに生えているあのフカフカの芝生には、意外にも多くの維持管理費がかかっているものもあるのです。ラグビーワールドカップや東京オリンピックの影響で日本中でハイブリッド芝の導入が進んで、柔らかい芝生の上で気軽にスポーツができるようになる時代もそう遠くはないかもしれませんね。
ラグビーワールドカップ2019開催!開催地ではいろいろと盛り上がっているねぇー。