芝生のサッチとは?
天然芝は人工芝に比べて、ふかふかで気持ちよく手触りもよいです。でも、芝生がスポンジのように柔らかすぎる場合は注意が必要ですよ。そのような芝生はサッチが堆積しすぎている状態が考えられ、対策をしないと芝生の寿命を短くしてしまいます。この記事では、上手なサッチ取り方や管理方法について解説します。
サッチの基本情報
サッチとは、芝生表層の芝草の間にたまる茶色の層状のものを指します。正体は芝生の剪定かすや、枯れた茎が堆積したものであり、さらに生きた根や地下茎が張り巡らされることでサッチ層は厚くなります。芝刈りで発生したかすは、微生物が分解できるためサッチになりにくいのですが、古いほふく茎や根などは分解しにくいリグニンを含むためサッチになりやすいです。
サッチ取りをする理由
天然芝でサッチを放置すると生育に悪影響を及ぼすため対策が必要です。サッチが堆積すると床土までの距離があき、水や肥料の効きが悪くなります。さらに、芝生の通気性が悪くなることで微生物の働きが弱くなり、サッチの分解能が落ちるといった悪循環になるのです。このことで、特定の病原菌が発生しやすくなったり、芝の先端が白くなったりなど最悪芝生の張替えをする事態になります。
サッチによる芝生への被害
サッチを放置していると芝生の生育環境が悪化しさまざまな被害が発生します。ここでは、よく見られるふたつの症例について紹介しましょう。
芝生への被害①ラージパッチ
日本芝に発生しやすい病気
「ラージパッチ」は高麗芝などの日本芝が円状に枯れる病気で「日本芝葉腐病」とも呼ばれます。芝生が直径0.1m~10mの茶色やオレンジ色のリング状もしくは円状(パッチ状)に変色し、簡単に抜けてしまう程度に枯れます。気温が上昇すると病勢は衰え、枯れた部分の匍匐茎から新芽がでてくるため放置しても問題にはなりません。
ボタ爺
サッチによるジメジメした環境で発生しやすい
ラージパッチは春~夏にかけて発生しやすく、高い湿度条件を好みます。厚いサッチを放置しておくと、雨が降ったあとに多量の水分を含むため、地際部分で病原菌が活発になりやすいです。対策としては、サッチングによる通気性の改善やバランスのよい施肥管理があげられますが、ひどいときは殺菌剤の使用が効果的です。
芝生への被害②シバフタケの発生
天然芝には目立つきのこの発生
きのこは雨のあとの芝生によく生えています。よく確認されるきのこは茶色の傘を持つ「シバフタケ」や、トゲトゲの白い傘を持つ「ヒメホコリタケ」があげられます。きのこは湿った芝生の有機物を利用して生育し群生します。きのこ自体に害はありませんが、地際に菌が拡がって水を弾いてしまい、リング状に芝生を枯らすフェアリーリング病の原因となることも。
きのこの発生はサッチ取りのサイン
きのこが生育する有機物は主にサッチ層になります。茶色や白いきのこが生えている状態は景観を損ねる程度の害しかありませんが、放置すると芝生の生育環境が悪化するだけなので対策が必要です。サッチ取りをして有機物を取り除きつつ、見つけたきのこの除去や駆除剤の活用を組み合わせるのが効果的です。
日本芝のサッチング
日本芝はノシバやコウライシバなど日本で自生していた植物であり、暑さに強く寒さに弱いです。一般的な家庭でみられることが多い芝生である日本芝の上手なサッチングについて解説します。
必要な道具
サッチ取りをする際は熊手やガーデンレーキなどを使用します。爪でひっかくことによって、冬枯れした芝草をかき集められるのです。ただ、古いほふく茎や地下茎を取り除けませんので、サッチ層の形成を遅らせるにとどまります。
ボタニ子
レーキなどはアルミ製で先が細くなっているタイプだと、快適に作業できますよ。
日本芝のサッチング(春~夏)
春~夏でサッチ取りを始めるタイミングは、5月の新葉が揃った時期がおすすめです。サッチ取りはいつしてもよいですが、4月ごろの芝の葉が生え出す時期は生長に影響するため控えるとよいでしょう。梅雨に入ると湿度が高くなり、サッチが病原菌の温床になりやすくなるため、積極的なサッチングをして芝生表面が乾きやすい状態にしてください。
日本芝のサッチング(秋~冬)
8~9月の日本芝は生育が盛んであり、施肥量が多いと過密気味に茂ります。高い密度の状態で放置すると、葉が白くなるなどの病気の原因となるので、芝を傷めない程度にサッチングしてください。秋以降は芝の生長が低下するため、熊手でサッチングをやりすぎないように注意する必要があります。ただし、芝生のうえに落ちた枯れ葉は光合成の妨げになるので取り除くようにしましょう。
ラージパッチは見た目を損ねるから、気になるなら対策が必要だぞ。