サザンカはツバキ科の日本固有種で、椿やお茶の木(チャノキ)の仲間です。九州や四国など暖かな山林に自生していた野生種が品種改良され、各地に植栽されるようになりました。成長が穏やかで日陰でも育ち排気ガスにも強いため、公園樹や生垣などに活用され、冬に咲く花として親しまれていますね。
園芸部類 | 花木、庭木 |
形態 | 常緑樹 |
樹高・草丈 | 1.5m~4m |
花の色 | 白、赤、ピンク、複色 |
耐寒性 | 普通 |
耐暑性 | 強い |
特性・用途 | 生垣、庭木 |
栽培難易度 | ★★☆☆☆ |
サザンカの花は、一重咲き、八重咲き、丁子咲きなどがあり、清楚な趣をかもしながらも華やかです。花色は原種に近い白のほかに赤やピンクの濃淡、ぼかしなどの複色があります。葉は厚めで、艶やかな濃緑色です。先がとがった長い楕円形をしていて、縁にギザギザがあります。幹は低い位置からよく枝分かれし、その年に伸びた枝の先端部分に花芽をつけます。
サザンカと椿の見分け方は?
花びらの付け根が合着しているのが椿で、合着していないのがサザンカです。そのため、咲き終わると椿は花の形のまま落ち、サザンカは花びらが分かれて散ります。また、品種にもよりますが、サザンカは晩秋から咲き、椿は1月~2月頃から咲き始める傾向があります。
サザンカには300種ほどの多くの園芸品種があり、3つのグループに大別されます。原種に近いサザンカ系は11月~12月に開花します。椿との自然交雑といわれるカンツバキ系は12月~1月に咲き、ヤブツバキなどと交配したハルサザンカ系は1月~3月頃に開花する遅咲きの種類です。
サザンカ 苗 【七福神】
参考価格: 1,078円
七福神(しちふくじん)はサザンカ系の半八重咲きです。関東地方で古くからある園芸品種で、花が多く咲くのが特徴です
種類 | サザンカ系 |
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花 | 八重咲き |
さざんか 富士の峰 苗木
参考価格: 2,308円
富士の峰(ふじのみね)は、カンツバキ系の八重咲き~千重咲きで、明治初期に広まったといわれています。白色の柔らかな花びらに気品がある人気品種です。
種類 | カンツバキ系 |
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花 | 白、八重~千重咲き |
鎌倉絞(かまくらしぼり)は、一重咲きで白と赤の絞りが特徴的なハルサザンカです。歴史は古く、江戸時代の資料に記載があります。
植え付け時期 | 3月~4月 |
肥料 | 3月 |
開花時期 | 11月~2月(種類による) |
サザンカは庭木・鉢植え、どちらでも育てられます。基本的に温暖な地域に自生していた植物なので、椿よりも寒さには弱いです。寒冷地では鉢植えのほうが管理しやすいでしょう。
サザンカは、日当たりが適度によく、夏の西日が避けられる場所に植えるのが理想的です。日陰でも育ちますが、花芽がつきにくくなります。寒くなる地域では、冬に寒風が直撃しない場所がよいです。排気ガスに強く、成長が穏やかで樹形が整えやすいので生垣にも向いています。
サザンカは、弱酸性の日本の土壌に適した植物です。土質は、水はけがよく、有機物が多い土でよく育ちます。庭植えは、腐葉土を混ぜてください。固い土地なら植え穴を掘るときによく耕し、腐葉土を多めに混ぜるとよいでしょう。鉢植えの用土は、赤玉と鹿沼土、腐葉土を同じ割合で混ぜるか、花木用の培養土を使ってください。
酸度未調整の培養土を使ってください。
鉢植えには、土の表面が乾いたらたっぷり水やりをします。庭植えは、根付いたら降雨のみで育ちますが、根が広く張るまでの1~2年くらいは、土の表面が乾いたら水を与えてください。
庭木は、植え付け時に骨粉油粕などを元肥として植え穴に混ぜておきます。追肥は1年に1回、3月頃に緩効性化成肥料を与えてください。鉢植えも植え付け時に元肥を与え、追肥は3月頃と花芽ができ始める6月頃に化成肥料を置き肥します。
気をつけたい害虫はチャドクガの幼虫です。ツバキ科の木に発生し、葉を食い荒らします。毛に毒があり、触れると痛く激しいかゆみを伴います。発生しやすい時期は6月~9月頃で、葉裏にある卵を見つけて葉ごと処分するのがおすすめです。予防するには、混みあった枝を透かし剪定して風通しをよくしてください。
風通しの悪い環境下では、カイガラムシが発生することもあります。樹液を吸われると樹勢が弱ります。早めに見つけて、幹を傷つけないように古い歯ブラシなどでそぎ落としてください。
すす病は、葉にすすがかかったような灰色のカビができる病気で、カイガラムシなどの分泌物から併発します。症状がすすむと葉全体が黒くなって光合成ができにくくなるため、弱ったり枯れたりすることもあります。早めに見つけて拭き取るか摘み取るなど、対処してください。
葉が黄色くなるのはなぜですか?
肥料不足か乾燥、あるいは根詰まりの可能性があります。追肥や水やりが適切か、鉢植えは植え替えの間隔を確認してください。それ以外には、土壌があっていないケースが考えられます。鉢植えはアルカリ成分の含まれていない弱酸性の土に植え替えてください。庭木は、酸度調整していないピートモスを土に混ぜてみるよいでしょう。
花は枯れる前に崩れて散ります。花びらが散ったあとは、残った子房を摘み取ってください。散り残って絡みついている枯れた花びらも取り除きます。そのままにしておくと果実(種)を作るのに養分が取られ、翌年の花数が少なくなります。全体が咲き終えたときに剪定する場合は、花後にこまめに摘み取らなくても問題ありません。
サザンカの苗木は、ポット苗か根巻きの苗木が売られていて、サイズは小苗~大苗まであります。成長が穏やかなので、すぐに生垣などにするなら中苗か大苗を、鉢植えならポットの小苗を選ぶとよいでしょう。生垣用に10本~30本などセット販売するショップもあります。
鉢植えは、数年経つと根が詰まってきて花付きが悪くなります。2~3年に1回植え替えましょう。植替えの適期は3月頃か開花前の9月頃です。庭木は、植え替えの必要はありません。
3月頃に、剪定をして樹形を整えます。成長が穏やかなので、通常は、伸びた枝先を軽く剪定する程度で大丈夫です。分枝しやすいため、内部の古くなった枯れ枝や内側に向かって伸びる枝などは取り除いて、風通しをよくしましょう。梅雨から夏の間に伸びた枝は、9月頃に花芽の位置を確認しながら、短く整えてください。
暑さには比較的強く、とくに夏越し対策は必要ありません。鉢植えは西日の当たる場所には置かないようにしてください。
暖地や中間地では、冬でも戸外に置けます。ただし、寒風にはできるだけ当てないほうがよいでしょう。寒冷地では、軒下などに取り込んで防寒してください。
サザンカは、挿し木で増やせます。その年に伸びた枝を7cmほど切り取って挿し穂を作り、水揚げしてから湿った小粒赤玉土などに挿します。発根するまで乾燥させないように管理してください。
もうひとつの増やし方は、とりまき(種をとってすぐまく)です。花後、子房をそのままにしておくと、翌年の10月頃に結実して種ができます。種が乾燥しないうちに種まきしてください。実生の場合、花が咲くまで鉢植えで約3~5年、庭植えで5~7年ほどかかります。
桜月夜
サザンカ 苗木 桜月夜
参考価格: 3,410円
桜月夜(さくらづくよ)は、サザンカ系の淡いピンク色の品種です。一重~半八重咲きの可憐な花が魅力的です。
種類 | サザンカ系 |
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花 | ピンク、半八重咲き |
獅子頭
サザンカ 寒椿 獅子頭
参考価格: 2,200円
獅子頭(ししがしら)は、赤に近いピンク色の八重咲きで、寒椿と呼ばれる種類です。多くのカンツバキ系品種が獅子頭から誕生しています。
種類 | カンツバキ系 |
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花 | 濃いピンク、八重咲き |
出典:筆者撮影