都会のオアシス「東京」の植物園
明治以降の東京は皇居周辺の武家屋敷が庭園や公園として整備され、都内でありながら自然豊かな緑が多く残されました。例えば新宿高層ビル群の近くにある新宿御苑もその一つで、広大な緑の敷地には植物園もあります。このように東京都には約30カ所以上の植物園があるのです。皆さんのお住まいの近くにもあるかチェックしてみましょう!
小石川後楽園
特徴
東京ドームの近くに、江戸時代の水戸藩主の中屋敷跡(7万平方メートル)が「小石川後楽園(国の特別史跡)」という日本庭園として開放されています。庭園の中には四季折々の花木が自然のままあり観察できます。江戸は京都を模して造られた人工の街です。武家屋敷の庭もそれに倣った造りが多いのが特徴です。小石川後楽園は琵琶湖を模した「大泉水」を中心にして、梅や桜の木などが植えられています。
小石川後楽園のおすすめは北側のエリアをチェックしてください。このエリアはここは本当に都内なの?と思わせるほど景観が変わります。日本の昔話に出てくるような田園風景を再現したような梅林、稲田、花菖蒲、藤棚などが展開するのです。庭園の中に田園を作ったのには理由があります。水戸光圀が彼の養子である綱条の夫人に、農民の苦労を教えようと作ったのです。
東京の大学施設内の植物園
植物園が大学構内にもあるのをご存じでしょうか?大学の植物学や薬学などの研究機関には、研究や教育のために必要な植物が栽培されている植物園があり、一般にも公開しているところがあるのです。
小石川植物園
特徴
植物学の研究・教育をしている東京大学の教育実習施設で、日本で最も古い植物園として世界的にも有数な歴史がある植物園です。特に東アジアの植物研究の中心施設でとしての機能をもっています。一般に公園としても公開され親しまれていますが、レジャー施設ではないので自然の歴史を学び感じるための植物園と言えます。
この植物園では、自生困難な世界の珍しい植物や小笠原などで絶滅が危惧される植物を入手し、保全のための研究や繁殖活動をしています。つまり、他の植物園では観ることのできない、類いまれな植物を都内にいながら多数見ることができるということです。
小石川植物園には「万有引力の法則」が発見されたきっかけとなった、ニュートンのリンゴの木が接ぎ木から分譲され育てられています。昭和39(1964)年に英国物理学研究所長サザーランドから寄贈された記念樹で「科学の心を育てる記念樹」として親しまれています。
東京の多摩地域は薬用植物園が集約
薬用植物園とは
都心からも近い多摩地域には、八王子市の東京薬科大学をはじめ「薬用植物園」がいくつか点在してあります。施設の周辺に自然が多いことが立地の条件にあっているのでしょう。薬の原料として研究のために植栽されている薬用植物の原料を観ることができます。古くから人の健康に役立ってきた薬草は、現代でも新薬の研究に欠かせないものとして研究がされています。
敷地面積 | 種類の数 | 温室の有無 | |
東京都薬用植物園 | 31,398平方メートル | 不明 | 有 |
東京薬科大学薬用植物園 | 41,000平方メートル | 約1,500種 | 有 |
昭和薬科大学薬用植物園 | 18,000平方メートル | 不明 | 有 |
星薬科大学薬用植物園
特徴
品川区荏原の閑静な住宅街の中に由緒ある薬科大学があります。明治から昭和にかけて民間薬、漢方薬の製薬業に勤しんだ星一氏が創立した「星薬科大学」です。薬用植物は800種あり、温室では熱帯の薬用植物が栽培され時期によっては、スパイスの原料やトロピカルフルーツをつけた植物を見ることができます。また、植物名の他に薬効成分などが説明されていて、薬用植物が身近に感じられる植物園です。
大学の本館は1924年に、世界的に有名な建築家アントニン・レイモンドの設計です。日本建築学会でも「近代日本の名建築」に選ばれ、品川区の「しながわ百景」でもあります。本館内の大講堂には大学のシンボルとも言える、ホオノキ、トロロアオイ、モモ、ボケ、ノアザミ、セイヨウタンポポ、アサガオをモチーフにしたステンドグラスがあります。
出典:写真AC