にんにくの食べ過ぎはよくない?
にんにくは栄養価が高く、疲労回復やスタミナ増強に役立つ食材として古くから親しまれてきました。古代エジプトではピラミッド建設の労働者が強壮剤としてにんにくを大量に消費していた、という記録が残っているほどです。しかしスタミナ食材として親しまれる一方で、過剰摂取によって不快な症状が発生するという話も聞かれます。食べ過ぎには注意が必要です。
「副作用」の記述について
本来「副作用」とは医薬品によって起こる好ましくない作用のことで、食材に対して使用する言葉ではありません。しかし、にんにくは疲労回復や風邪の予防などの健康効果を目的として食用されることも多い食品です。そのため本記事ではあえて「副作用」という言葉を使用しています。
にんにくについて
にんにくはユリ科ネギ属の多年生植物です。私たちが普段にんにくとして口にしているのは球根の部分で、茎も「にんにくの芽」として食用されています。世界的には中国、日本では青森が名産地で、風邪の民間療法などによく用いられる食材です。
にんにくの栄養成分
にんにくの栄養成分として特筆すべきなのは「アリシン」です。アリシンはネギ類の独特のにおいのもとである、硫化アリルの一種です。もとはアリインという無臭の物質ですが、にんにくを切ったりすりおろしたりすることで酵素と反応しアリシンが生成されます。にんにくはほかにも抗酸化作用のあるスコルジニンや、身体の調子を整えるビタミンB群・ビタミンCといった栄養素が豊富です。
強い抗菌・殺菌効果
にんにくのにおい成分のアリシンには強力な抗菌・殺菌効果があります。この効果によって感染症の原因になるコレラやジフテリアなどの細菌、風邪のウイルスなどが失活します。にんにくが風邪によいとされるのはスタミナ増強だけでなく、抗菌・殺菌効果によるものです。また、サルモネラなどの食中毒菌を抑える効果もあるため、肉や魚の刺身によく添えられます。
にんにくの食べ過ぎで起こる副作用
食べ過ぎによる副作用①体臭の変化
にんにくを食べるとしばらくのあいだ息がにんにく臭くなることは広く知られています。しかし、にんにくの影響を受けるのは口臭だけではありません。にんにくのにおい成分は腸から吸収されると血液に入り全身へ運ばれます。そのにんにくのにおい成分は汗に含まれ、全身からにおいがするのです。体臭はにおい成分が完全に代謝されるまでなくならず、24時間以上継続するという研究発表もされています。
ボタニ子
なんかにおうな…。
ボタ爺
じつは昨日、餃子を山盛り食べてしまってのう!
ボタニ子
たくさん食べればその分ニオイもきつくなるから注意してね。
食べ過ぎによる副作用②胸焼け・腹痛
にんにくのにおい成分のアリシンは非常に刺激の強い物質です。適量であれば胃腸の働きを活性化させますが、過剰に摂取すると胃腸の粘膜が荒れてしまいます。粘膜が荒れることで胸焼けや腹痛などの症状が発生するのです。おなかが弱い人は刺激によって下痢の症状が出ることもあります。特に細かく刻んだり、すりおろしたりした生にんにくは刺激が強いので注意が必要です。
ボタニ子
おなかが弱い人は少量の生にんにくでも危険なので気をつけて!
食べ過ぎによる副作用③腸内環境の悪化
にんにくの食べ過ぎは腸内環境の乱れを引き起こします。アリシンは殺菌・抗菌効果があり感染症や食中毒の原因となる細菌の活動を抑えてくれます。しかしアリシンが攻撃するのは悪い菌だけではありません。腸内の善玉菌もアリシンからの攻撃を受けて数が減ってしまいます。腸内環境が悪化した影響で下痢や便秘、腹痛、腸内にガスがたまる、おならがにおうなどの症状が発生します。
ボタニ子
腸内環境が乱れちゃうといろいろな不調のもとになるのよね。
ボタ爺
にんにくを食べるときは、善玉菌であるビフィズス菌入りのヨーグルトを食べるといいといわれておるぞ!
食べ過ぎによる副作用④肌・粘膜の荒れ
にんにくを食べ過ぎた影響で胃腸が荒れてしまうと、消化・吸収能力が低下します。肌を健康に保つための栄養素がしっかり吸収できなくなり、肌や粘膜が荒れるのです。また、腸内の善玉菌には身体に必要なビタミンを作り出す働きをする菌がいます。にんにくの副作用で善玉菌が減った影響でビタミンが生成されず、肌の代謝が停滞することも肌荒れの一因です。
ボタニ子
にんにくは美肌の敵!?
ボタ爺
いやいや、適量ならむしろ美肌にいい効果はたくさんあるんじゃ。やはり量が大切じゃな。
食べ過ぎによる副作用⑤めまい・吐き気
にんにくの栄養成分には、血管を拡張し血行をうながす作用を持つ成分がいくつか存在します。この血管拡張作用によって血圧が下がり、低血圧のような症状が起こることがあります。低血圧の症状とは、めまい、頭痛、吐き気、発汗、動悸、下痢などです。血圧が極度に低下すると臓器が損傷する可能性があり非常に危険です。
ボタニ子
内臓が損傷するの!?
ボタ爺
にんにくで内臓に影響が出るほど血圧が下がることはほぼないぞ。しかしにんにくを食べ過ぎて、めまいや吐き気で救急搬送された例もあるんじゃ。
食べ過ぎによる副作用⑥貧血
にんにくは適量であれば鉄分の吸収をうながし、貧血を改善する効果があります。しかしにんにくの食べ過ぎの影響で逆に貧血を引き起こしてしまうこともあるのです。アリシンを過剰摂取すると赤血球中の主成分であるヘモグロビンが減少し、赤血球が破壊されてしまいます。寿命を迎える前の健康な赤血球が破壊されることで「溶血性貧血」という貧血を発症します。
ボタ爺
ペットの症状でたまに耳にする「玉ねぎ中毒」もアリシンなどの硫化アリルによる溶血が原因なんじゃ。
ボタニ子
玉ねぎ中毒って命にかかわることもある危険な中毒症状よね?にんにくでも起こるの?
ボタ爺
そうなんじゃ。犬や猫は遺伝子の関係で人間よりもずっと溶血を起こしやすい。少量でも危険なんじゃ。
食べ過ぎによる副作用⑦出血が止まりにくくなる
アリシンには血液の凝固を抑制する効果もあります。血小板の働きを抑制するため血液が凝固しにくくなるのです。ちょっとした怪我でもなかなかかさぶたにならなかったり、歯磨き中の出血や原因不明の鼻血などが起こるといわれます。海外では手術や歯科治療、出産の前にはにんにくの摂取を中止するよう推奨している国もあります。
ボタニ子
血液凝固系の疾患がある人は気をつけて!
食べ過ぎによる副作用⑧その他起こりうる事象
報告数は少ないですが、発熱・発汗・不眠といった症状を訴える人もいます。発熱や発汗はにんにくの血行促進作用による体温上昇が原因とされています。不眠はにんにくのにおい成分に副交感神経が刺激され、アドレナリンの分泌がうながされることが原因です。
ボタニ子
確かに、にんにくって栄養があって元気になるし興奮しそうな感じ!
ボタ爺
それが、にんにくは適量ならストレスを緩和して寝つきをよくしてくれるんじゃよ。
ボタニ子
やっぱり食べ過ぎると逆の効果が出ちゃうのね。
症状が激しいときは受診を
にんにくをたくさん食べたあとに身体の不調を感じたら、無理をしてはいけません。激しい腹痛や下痢、めまいなどを感じたら病院で診察を受けることをおすすめします。その際にはにんにくをたくさん食べたことや、摂取量をきちんと伝えましょう。
ボタニ子
次のページでは、にんにくの1日の適量について解説します!
出典:写真AC