家庭でできるイチゴの水耕栽培
イチゴは土で育てるのが一般的です。イチゴを育ててみたいけれどイチゴ畑を作るほどのスペースがない、世話に手間暇をかけられないという人も多く、最近では家庭の室内でもイチゴを育てられる水耕栽培が人気です。
水耕栽培とは?
水耕栽培とは、培土(植物を育てるための肥料分を含んだ土)を使わずに、水と液体肥料の養液のみで植物を栽培する方法です。植物は養液から水分と栄養分を吸収して育ちます。根を養液に浸してセットしてしまえば、水やりや肥料を与える回数も少なくて済み、雑草や病気、害虫の対策に煩わされることありません。
水耕栽培用のイチゴの種
一般にブランド品種のいちごの種は販売されていない
イチゴは品種改良されたイチゴが多く、種から育てても親と同じ品種になるとは限らないため、「とちおとめ」の種とか「女峰」の種というようにブランド品種のイチゴの種が売られていることはありません。
農家はランナーから育てている
イチゴ栽培農家は、収穫後のイチゴから伸びたランナーの子苗で翌年の苗を株分けして育てています。ですので、家庭で種からイチゴを育てるのであれば、自分で種を用意するか、種類の限られた市販の種を利用することになります。
イチゴから種を採る方法
イチゴの種を購入する
イチゴから種を採って準備するのは手間がかかって面倒だという方はイチゴの種を購入してみてはいかがでしょうか。家庭の室内で栽培しても比較的育てやすい四季なりイチゴの種がおすすめです。
種の発芽から育苗へ
卵パックに入れた種まき培養土を霧吹きで湿らせて苗床(なえどこ)とし、種をまきます。他にも、湿らせたスポンジ、キッチンペーパー、パームピート(ヤシの実の繊維の土)などにまく方法もあります。
発芽させるための注意点
イチゴを室内で種から育てるのは簡単ではありません。イチゴの種の発芽には、日当たり、湿り気、20度前後の温度、そしてカビの生えない清潔な苗床(なえどこ)が必要です。種播き時の注意点は、種が沈まないように覆土(ふくど)しないで播くこと、発芽するまで適切な環境管理をすることです。イチゴの種の発芽期間はおよそ2週間~1ヶ月です。
休眠打破
イチゴの種は低温下(0〜 12℃程度)で休眠しながら春の開花結実に向けて準備をします。休眠したままでは発芽が難しいため、冷蔵庫などで一定期間低温処理をした後、日当たりの良い場所に置いて休眠を解く必要があります。(休眠打破)
育苗時の注意点
種が発芽して双葉になったら、育苗ポットの培養土(弱酸性土壌)に仮植え付けして、しっかりと根が付くまで育てます。イチゴは酸性土壌を好むためです。育苗時は根が肥料焼けしないように気を付け、葉の色や勢いを見ながら液体肥料を適切に与えていきます。
水耕栽培キット
水耕栽培キットは自作できます。材料も家庭にあるペットボトルや100円ショップで購入できるものがほとんどで、費用もそれほどかかりません。何よりキットを自作することで水耕栽培の仕組みを学ぶことができます。本格的に水耕栽培を楽しみたいという人には、費用は高くなりますが、機能性に優れた市販の水耕栽培キットもおすすめです。
自作キット
ペットボトルの自作キット
プラスチックケースの自作キット
酸素放出錠剤の利用
イチゴの水耕栽培の注意点の一つに酸素の供給があります。イチゴは光合成だけでなく呼吸も行っているため、根から取り込む酸素が不足するとイチゴ全体が酸素不足になり、成育に悪影響が及びます。酸素放出錠剤の利用はエアーポンプが用意できない時には便利で経済的な方法です。
市販キット
自作キットのように手間をかけずにすぐ利用でき、機能性にも優れた豊富な種類の水耕栽培キットが市販されています。イチゴの栽培でも利用できる人気の水耕栽培キットをいくつか紹介します。
「LEDガーデン(学研ステイフル)」
狭い室内のスペースで育てるのに最適な初心者向けの水耕栽培キットです。節電タイプのLEDライト付きなので長時間光をあてても安心です。
「ホームハイポニカぷくぷく」
コンパクトでお手頃価格になったホームハイポニカです。養液を循環するエアポンプがついており、より発芽や成育がしやすくなっています。
「窓際族(窓辺でサンチュ)」
水耕栽培の仕組みが良くわかるシンプル構造の低価格キットです。
「ピッコラ」
植物工場に採用されているプロの技術が取り入れられています。失敗の少ない自動運転付きの栽培キットです。本格的に水耕栽培を続けてみたい人におすすめです。
上記で紹介した市販の水耕栽培キットはいずれも税込み価格1万円以下の商品です。詳細はAmazon、楽天、Yahooショッピングなどの通信販売サイトで確認してみて下さい。
水耕栽培キットを選ぶ注意点は、収穫したい量に見合ったサイズを選び、置き場所スペースや日当たりを考慮して選びます。失敗を避け放置して育てたいという人は、オート運転機能付きの栽培キットを選んでみてはいかがでしょうか。
水耕栽培専用の液体肥料
ハイポニカ
液体肥料にはいろいろ種類はありますが、水耕栽培専用の液体肥料には「ハイポニカ」が広く使われています。水耕栽培ならどんな種類の植物にも一律500倍の希釈で使えるので利用しやすいです。
希釈方法の注意点
1000ml(1ℓ)の500倍希釈液を作るには、まず水1000mlを用意し、添付のA液専用スポイトとB液専用スポイトで2mlそれぞれ測って同時に原液の投入をします。原液同士を先に混ぜてしまうと化学反応で結晶化するので水を先に入れてから原液を入れます。
実際の原液の稀釈は250倍
収穫のコツ
イチゴの人工授粉の方法
室内ではミツバチなどの虫を媒介した受粉ができません。家庭にある耳かきのふわふわした綿の部分や綿棒、柔らかい筆などで、全ての花の中心部の雄しべをまんべんなく撫でて人工授粉をします。この作業を忘れるとイチゴの実がなりません。
イチゴの葉の摘み方
丈夫で活力のある健康な苗には葉が多く茂ってきます。葉が混み過ぎると栄養分が葉にいってイチゴの実になる茎部分に行き渡らなくなったり、風通しが悪くなったりします。古い枯れた葉や傷んだ葉を中心に適度な葉の枚数を保つ摘み方をします。
イチゴの脇芽の摘み方
根元に脇芽があると茎が増えすぎて株が痛むので、小さい脇芽のうちに摘み取ってスッキリさせておきます。
イチゴの花の摘み方
厳寒期に咲いた花や蕾を取ってしまうのがイチゴの花の摘み方です。花を摘むのはその後の苗の成育が悪くなってしまうのを防ぐためです。花や蕾を摘むと茎が太くなり、収穫量が増加します。暖かい季節になればまた次々に花が咲くので、どんどん摘んでも心配はありません。
イチゴの摘み方
収穫するときのイチゴの摘み方は、実をひっぱらないで指で茎を挟み、そのまま下手から直角に曲げて茎を折るような感じの摘み方がコツです。
まとめ
美しい草花や新鮮な野菜を育てられたらいいなと思っていても、土いじりが嫌いだったり虫が苦手という人は少なくないですよね。また「多忙で植物の世話はできないが、室内で元気に育つ植物があったらどんなに癒されるだろう。」という人も結構いたりします。水耕栽培は、そういう人達でも気軽に始められる室内ガーデニングの方法ですよね。
種育てから得る収穫
美味しいイチゴを収穫するだけなら、苗を購入して育てる方が容易で理想的です。しかしあえて小さなイチゴの種から収穫まで育ててみることで、植物の生命力に感嘆したり自然の摂理への造詣が深まることもあります。小さい種育てから得る大きな収穫です。是非一度経験してみてはいかがでしょうか。
1. イチゴを購入します。