菊人形とは?その発祥・歴史・作り方や菊人形で知られるお祭りをご紹介!

菊人形とは?その発祥・歴史・作り方や菊人形で知られるお祭りをご紹介!

菊人形は、かつては秋の興行の名物として高い人気を誇り、現在は文化・芸術作品として展示されることが多い細工物です。そんな菊人形がどのようにして作られているかは意外に知られていません。この記事では菊人形の由来や作り方、有名な菊人形展について紹介します。

記事の目次

  1. 1.菊人形の概要
  2. 2.菊人形の由来と歴史
  3. 3.菊人形の作り方
  4. 4.全国の有名な菊祭り
  5. 5.まとめ

菊人形の概要

出典:写真AC

菊人形とは、江戸時代から続く細工物です。等身大の人形の衣装部分を、菊の花や葉で飾りつけます。このため、菊人形展や菊人形を展示するイベントは、菊の最盛期である秋に開催さています。菊人形は、かつては秋の風物詩として大変な人気を博していました。しかし娯楽が増え、人々の嗜好も多種多様化している現代では、人気はやや下火となっています。

菊人形の由来と歴史

菊人形の由来は菊細工

菊人形の由来は、江戸後期に生まれた「菊細工」にあるといわれています。もともと江戸は園芸が盛んな土地でしたが、時代が下るにつれて園芸人気が大衆化すると、豪華な一輪の花を愛でるよりも、たくさんの花を使って、華やかに飾る楽しみ方が好まれるようになりました。そこで誕生したのが、菊の花をいろいろな形に仕立てて楽しむ菊細工です。さまざまな細工物が作られていくうちに、菊人形が生まれました。

当初の菊細工は、富士山、孔雀、船など、有名な自然物や縁起物を題材にしていました。

菊人形がたどった歴史

Photo by 準建築人手札網站 Forgemind ArchiMedia

菊人形が大きな人気を博したきっかけは、江戸時代後期、江戸本郷の団子坂で行われた見世物です。ここで飾られた菊人形は、有名な歌舞伎の名場面を題材にしていました。人形の顔も当時の人気役者に似せて作られたと伝わっています。

団子坂の菊人形の衰退

団子坂の菊人形は、その後に訪れた幕末の混乱で一時期衰退しますが、明治時代に入ると復活し、その人気の高さから正式な興業となりました。団子坂の菊人形は、東京の風物詩の1つとして長く愛されてきたのです。しかし、全国で大規模な菊人形展が開かれるようになり、徐々に衰退していきました。

現代の菊人形展

出典:写真AC

菊人形は江戸後期~明治時代にかけて、興行として非常に高い人気を博しました。しかし、時代の流れには勝てず衰退していきます。現代の菊人形は、伝統工芸・園芸品として展示することが多いです。題材はおもに歴史上の伝説や、大河ドラマからとられています。昔の菊人形が主に題材としていた歌舞伎の話は、歴史の有名な逸話や伝説を由来とするものが多いです。

菊人形の作り方

作り方①専用の菊を用意する

フリー写真素材ぱくたそ

菊人形の制作は、菊人形に使用する菊の栽培から始まります。菊人形に使う菊は普通の菊ではありません。「人形菊」と呼ばれている専用品種です。特別な菊なので、「菊栽培師」という専門の園芸職人が栽培します。人形菊は細かい作業に使うため、花は小さく、茎は細長くて折れにくいのが特徴です。

人形菊は、職人たちの手で1年もの時間をかけて育てられるんですよ。

作り方②人形を作る

出典:写真AC

菊人形の土台となる人形の頭と手足は、「人形師」と呼ばれる専門の職人が作ります。菊人形が普通の人形と違う点は、菊を飾り付ける着物の部分の制作です。この部分は「銅殻(どうがら)」と呼ばれています。銅殻は竹ひごの芯を藁(わら)やイグサで包んだ後、糸で固定した「巻藁(まきわら)」を使って組み立てて作ります。これを人形の骨格に取り付ければ、銅殻のできあがりです。

昔は銅殻を専門に作る職人がいたんだ。「銅殻師」と呼ばれていたんだよ。

作り方③衣装を作る

出典:写真AC

最後は銅殻を菊で飾り付ければ菊人形の完成です。この作業を「着付け」といいます。着付けを行うのは「菊師」と呼ばれる専門職人です。菊人形の菊は切り花ではありません。数株にまとめた根付き菊を水苔で巻き、藁などで縛ったものを銅殻につけていきます。ちなみに着付けに必要な菊の数は菊人形にもよりますが、一体につき約120株~150株です。

菊人形のメンテナンス

菊人形展や菊祭りの期間中は、菊人形に使用している菊が傷まないようにメンテナンスも行っています。1日に1回は水やりし、定期的に菊を付け替えます。菊は7日~10日ほどで枯れてしまうため、菊をすべて取り外し、新しい菊に付け替えるのです。これらの作業も、専門の職人たちの手で行われます。

菊人形は、専門の職人たちの分業によって完成します。まさに伝統技術の粋を集めた総合芸術品であるといえるでしょう。

全国の有名な菊祭り

二本松の菊人形

「二本松の菊人形」は、昭和30年代から続く菊祭りです。毎年10月中旬~11月下旬に二本松城跡にて開催されます。展示される菊人形は100体を超え、菊花も3万株が配置されるという大規模な菊の展覧会です。この規模の大きさから「日本三大菊人形」の1つに数えられています。

たけふ菊人形

「たけふ菊人形」は、福井県越前市武生中央公園で毎年開催されている菊人形祭りです。10月上旬~11月上旬に開催され、期間中は菊人形の展示、OSK歌劇団のレビュー、菊花展など、さまざまなイベントが行われています。「日本三大菊人形」に数えられているほどの規模を誇る菊人形展です。

武生は江戸時代の頃から菊作りが盛んな地域だったんだ。このことが「たけふ菊人形」が生まれる下地になったんだよ。

昭和20年代に終戦後の武生市(現・越前市)の活性化策として、菊人形と菊花の展覧会が始まりました。これが「たけふ菊人形」です。

ひらかた大菊人形

「ひらかた大菊人形」は、かつて大阪府枚方市「ひらかたパーク」で毎年開催されていた菊人形展です。「日本三大菊人形」に数えられたほどの大規模な菊人形展でしたが、客の減少、職人の高齢化と後継者不足などにより、2005年に閉幕しました。現在は市民ボランティアの手による作品の展示会という方向で、菊人形や菊花関連のイベントが開催されています。

2012年の秋には、ひらかたパーク開業100周年記念として、期間限定で「大菊人形祭」が復活したよ。

「ひらかた大菊人形」は閉幕しましたが、菊人形は今もなお、多くの枚方市民に愛されています。

南陽の菊まつり

「南陽の菊まつり」は、山形県南陽市で毎年10月上旬~11月上旬に開催されている菊人形祭りです。「もっとも古い歴史を持つ菊祭り」として知られており、起源をたどると17世紀初頭にまでさかのぼるといわれています。開催期間中は、熊野大社内の「宮内会場」と、南陽市中央花公園の「花公園会場」の2カ所の会場を設け、菊人形や菊花、現代フラワーアートなど、園芸技術の粋を凝らした多くの芸術作品を鑑賞できます。

まとめ

出典:写真AC

菊人形は、かつては集客目的で作られることが多い作品でした。現代では園芸文化と伝統技術を伝える作品として展示されています。実際に菊人形には、専門の職人たちの高度な技術が惜しみなく注がれています。その技術の高さと熱意が、菊人形の美しさを高めているのでしょう。職人たちに敬意を表しながら、菊人形や菊花の美しさを堪能してみてはいかがでしょうか。

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Laylah
ライター

Laylah

バラや百合のような美しくて香り高い花も好きですが、スミレやタンポポのような野に咲く可憐で強い花も好きです。

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