菊花茶とは
食用できる菊というと多くの人が思い浮かべるのはお刺身のつまに添えられているものや、おひたしなどではないでしょうか。お茶にして飲むというのは日本ではあまりなじみ深くはありません。しかし菊花は中国では古くから延命長寿に効く生薬として親しまれ、お茶として飲まれてきました。お茶のほかにも菊花酒や漢方薬としても利用されています。この記事では菊花茶について、味や効能、家庭での作り方や飲み方についてご紹介します。
菊花茶に使われる菊の種類
菊花茶に使われる菊は大きく分けて3種類あり、効能や味が少しずつ違います。流通しているお茶向けの菊花はほとんど中国産で、浙江省杭州や安徽省が産地として有名です。
黄菊
苦みのある味です。風邪の熱を発散させる作用があり、風邪の時の頭痛に効くといわれています。
白菊
甘苦い味です。気持ちを落ち着け、ストレスを和らげます。緊張・興奮したときのめまいや、目の疲れ・充血にも効果があるといわれています。
野菊
黄菊よりもさらに苦みのある味です。解毒作用があり、化膿してしまった皮膚の炎症を抑えてくれます。ものもらいにも効果があるといわれています。
「工芸茶」とは別物です
お湯の中でゆっくりと花が咲く工芸茶。そのフォトジェニックな見た目からお土産やプレゼントとして人気です。菊花茶と聞くと、この工芸茶を想像してしまう人がいるかもしれませんが全くの別物です。確かに菊が使われているものも多くありますが、工芸茶の花は見た目を楽しむ意味が強く味はおもにウーロン茶やジャスミン茶です。本来の菊花茶は菊の花だけでできたお茶です。
菊花茶の成分・効能
中国では古くから目の疲れや痛みの対処のため菊花茶が飲まれてきました。菊花茶にはビタミンAとクサンテノンという成分があります。ビタミンAには視覚機能の維持、クサンテノンには眼精疲労の回復を手助けする効果があるとされています。パソコンやスマートフォンで疲れた目にはとてもよい飲み物といえます。他にも利尿作用、抗菌作用、解熱作用などがあります。身体にこもった熱を冷ますので夏バテ予防にも効果があるとされます。
古典「神農本草経」には
中国最古(後漢時代)の薬物書といわれる神農本草経に、菊花は「風による頭眩や腫痛、目が脱けるように涙出するもの、死肌、悪風、湿痺を治し、久しく服すれば血気を利し、身を軽くし、老に耐え、年を延す。」といった記述があります。中国では2,000年前から菊の花が目の健康や不老長寿に効果のある薬として重用されてきたことがわかります。
お茶以外にも
漢方薬に
菊花が入れられている漢方薬とその効能をご紹介します。
漢方名 | 効能 |
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杞菊地黄丸(こきくじおうがん) | かすみ目、疲れ目、のぼせ、めまい、疲労など |
清上蠲痛湯(せいじょうけんつうとう) | 頭痛、のぼせ、頭重 |
釣藤散(ちょうとうさん) | めまい、肩こり、神経痛、高血圧 |
菊花酒
9月9日は重陽の節句といい、菊の節句です。中国では古代から白酒に菊を漬け込んだものを飲み、長寿を祈ります。日本でも中国にならい菊酒を飲む習慣がありますが、漬け込んだものではなく酒に菊の花弁を浮かべたものが多いようです。菊花酒には疲労回復や食欲増進に効果があるとされています。
ボタニ子
次ページからは菊花茶の作り方を紹介します。
菊花茶にはカフェインは含まれていませんが身体を冷やす作用があるため、冷え性の方や妊娠中の女性、お腹が弱い方は注意しましょう。