きゅうりのトゲはなぜあるの?
とげはきゅうりの生存戦略
きゅうりの表面にトゲがある理由は、きゅうりが完熟するまで動物に食べられないよう、身を守るためだといわれています。きゅうりの実が熟すにつれてトゲは次第に柔らかくなり、完熟した実を動物が食べて種をより遠くまで運んでもらいます。人間はまだ未熟なきゅうりを好みますが、実が熟して種が充実するころには、きゅうりの苦みが消え動物が食べやすい味に変化しています。
きゅうりのトゲは食べられるか
トゲの多いきゅうりを食べるとき、トゲを取るべきか迷うかもしれません。きゅうりのトゲには毒性などなく、人体に無害のため食べても心配ありません。しかし、家庭菜園で摂れたばかりの新鮮なきゅうりのトゲは鋭いため、そのまま食べると口の中を傷つける不安を感じることもあるでしょう。不安なときには、トゲの処理をして食べるほうが安心です。口当たりもよくなりますよ。
ボタニ子
特に子どもがトゲトゲを食べるは不安よね。できる限り取り除いたほうがいいかも。
トゲに菌がいる?
きゅうりのトゲには、細菌が多くついているといわれています。きゅうりの輸送中に取れたトゲの跡には、形状的に大腸菌などが付着しやすいことが理由です。細菌が胃腸に侵入すると、食中毒の原因にもなりかねません。食べる前には流水でしっかりと念入りに洗浄しましょう。またトゲを取った後はそこから菌が繁殖しやすいため、保管せずその日に食べきるのが安心です。
きゅうりのトゲがあるほうが新鮮?
収穫直後のきゅうりのトゲは触れると痛いくらいに尖っていますが、時間が経つにつれて柔らかくなり取れてしまいます。つまり、きゅうりのトゲがトゲトゲして痛いほど、収穫したてで新鮮という証拠です。きゅうりを選ぶときは色や太さなどの目安がありますが、トゲの状態を見て選ぶのも新鮮さを見極める方法の一つになるでしょう。
きゅうりのトゲの取り方
家庭菜園で取れるきゅうりや、おすそ分けでもらうきゅうりには、トゲが刺さって痛いものもあるでしょう。トゲが口に刺さるのが気になるときには、トゲの処理をしてから食べましょう。簡単な方法でトゲトゲが取れて口当たりがよくなり、また料理によっては味がよく浸透します。
取り方①手でなで洗いする
きゅうりのトゲは、手でなで洗いすると取れます。スーパーなどで並んでいるきゅうりのトゲは、手でなでて洗えば簡単に取れるものも多いですが、なかにはトゲが硬くて痛いものもあります。硬い場合は、手の代わりにゴム手袋やスポンジでこすり落としましょう。
取り方②板ずりする
日本料理では、きゅうりのトゲを取るときに「板ずり」という方法がとられます。洗ったきゅうりをまな板にのせ、少量の塩を振ってまな板に押し付けながら転がしましょう。きゅりを板ずりすると、きゅうり独特の青臭さやえぐみがとれて、調理の際に味がよく染みます。塩の効果で色を鮮やかに保てるため見た目にも美しいですよ。また、板ずりは漬物や酢の物の下ごしらえにも向いています。
取り方③包丁の背でこそげ取る
採れたてできゅうりのトゲが非常に鋭く、手でなで洗いするのが痛いというときは、包丁の背でこそげ取りましょう。表面が削り取られて少し見栄えが悪くはなりますが、しっかりトゲが取れます。家庭菜園で採れた板ずりできないほど曲がったきゅうりも、この方法でなら簡単にトゲが取り除けますよ。
取り方④ピーラーで皮をむく
きゅうりの表面をピーラーでむくと、トゲトゲがきれいに処理できます。きゅうりはもともと皮が柔らかいため、簡単にむけますよ。きゅうりの一本漬けや浅漬けを作る際には、全部ではなくところどころに皮を残しながら縞模様になるようにむくことがコツです。トゲも気になりにくく、味がよく浸透して美しい見栄えになり、食卓が華やかになるでしょう。
トゲが特徴的なきゅうりの品種
昔のきゅうりは、現在流通しているきゅうりよりもずっとたくさんのトゲがありました。昔ながらのトゲトゲしたきゅうりは、皮が薄く柔らかで苦みが感じられます。しかし、トゲで傷ついて腐りやすかったり、表面を覆う白い粉(ブルーム)のせいで見た目が悪かったりして人気はいまひとつだったといわれます。現在は品種改良されて、ブルームのないきゅうりが出回るようになりました。
四葉(スーヨー)きゅうり
トゲが多い四葉きゅうりは中国の品種で、昭和19年に韓国から日本に入ってきたといわれています。現在スーパーで売られているきゅうりよりも、皮が薄く歯切れがよいのが特徴で、味が浸透しやすく漬物やぬか漬け向きです。流通量は少ないですが四葉きゅうりの濃いうまみにはファンも多く、家庭菜園にもおすすめです。
四川きゅうり
四川きゅうりは表面がたくさんのトゲで覆われ、しわがあるのが特徴です。現在は、ブルームレスといわれるつやつやしたきゅうりが主流ですが、四葉きゅうりや四川きゅうりには表面にブルームといわれる白い粉がついています。四葉きゅうりは四川きゅうりを品種改良したもので、四葉きゅうりによく似て皮が薄く歯切れがよいきゅうりです。
トゲがないきゅうりの品種
きゅうりの特徴であるトゲがないきゅうりも流通しています。「イボなしきゅうり」という名前で呼ばれ一部で生産されていますが、市場に出回る数は少なく一般的なきゅうりよりも割高です。きゅうりのトゲ跡には大腸菌などが繁殖しやすいですが、イボなしきゅうりは表面がなめらかで菌が繁殖しにくく衛生的で、給食用・加工用・業務用としての利用が増加しています。
フリーダム
フリーダムは、サカタのタネが日本と欧米のきゅうりを交配して作出したイボなしきゅうりです。フリーダムは青臭さや渋みが少なく、パリッとした歯切れのよさが特徴です。またトゲがないことで、調理の際に雑菌が入りにくく衛生的で、給食などの業務用にも向いています。
ポリッシ
ポリッシは日本園芸生産研究所が育成し、2001年に発表されたイボなしきゅうりの品種です。うどんこ病に強く、栽培管理がしやすいのが特徴です。ポリッシの果皮は艶のある鮮やかな緑色で、肉質は緻密で食味のよさがあります。生食用・漬物用のほかカット野菜や惣菜用として利用が増加しています。
ラリーノ
ラリーノは神田育成農場が育成し、2008年に販売開始されたイボなしきゅうりの品種です。特徴はフリーダムと同じですが、大きな違いは一般的なきゅうりの半分ほどの長さという点です。流通量は少ないですが苗や種は販売されているため、家庭菜園で栽培してみるのもよいですね。小さなサイズで、プランターでの栽培にも向いています。
カルティア
カルティアは、株式会社久留米種苗園芸が開発したイボなしきゅうりです。カルティアは一般的なきゅうりよりもやや淡い緑色が特徴で、ほかのイボなしきゅうりと同様にパリッとした歯ごたえがあります。褐斑病(かっぱんびょう)とうどんこ病に強く、ハウス栽培に適した品種です。
きゅうりのトゲは新鮮の証!
きゅうりのトゲが刺さるほど痛いのは、きゅうりが採れたてで新鮮な証拠です。また、きゅうりのトゲに毒性はなく安心して食べられます。しかし、刺さったり口当たりが悪かったりして気になるときは、トゲを取って食べてみてくださいね。
出典:写真AC