ジンチョウゲ(沈丁花)は、香りのよさが有名な樹木です。クチナシ(梔子)、キンモクセイ(金木犀)と、同じく香りがよいことで知られる2つの樹木とあわせて「三大香木」と呼びます。早春の時期に花を咲かせることから、俳句では春の季語として詠われていました。
園芸部類 | 庭木、花木 |
形態 | 低木 |
樹高・草丈 | 1m~1.5m |
花の色 | 白、淡紅色 |
耐寒性 | 普通 |
耐暑性 | 普通 |
特性・用途 | 常緑性植物、強香 |
栽培難易度 | ★★☆☆☆ |
枝先に小さい花が塊になって咲く姿が、ジンチョウゲの大きな特徴です。じつはこの小さな花は、ジンチョウゲ本来の花ではありません。ガクの部分が花びらのように変化したものです。雌雄異株の植物で、雌株につく実には毒があります。しかし日本にあるジンチョウゲは、ほとんどが雄株です。このため、日本でジンチョウゲの実を見る機会は非常に少ないといわれています。
ジンチョウゲ(沈丁花)という名前は、香木の沈香(じんこう)のような強い芳香と、丁子(ちょうじ:香辛料のクローブの原料)の花に似た花姿を持つことに由来しています。学名の「Daphne」はギリシャ神話に登場する精霊ダフネに由来し、「odora」は芳香があることを意味する言葉です。
精霊ダフネは太陽神アポロンからの熱烈な求愛を拒み、ついにはゲッケイジュ(月桂樹)に姿を変えます。アポロンはダフネへの永遠の愛の証として、ゲッケイジュを自分の聖樹にしました。この伝説から競技の優勝者に月桂冠を贈る慣習が生まれ、ゲッケイジュに「栄光」という花言葉がつけられます。そしてジンチョウゲの葉がゲッケイジュの葉に似ていることから、学名と「栄光」の花言葉がつきました。
シロバナジンチョウゲ(白花沈丁花)は名前が示すように、真っ白な花が特徴の品種です。白い花と濃い緑色の葉のコントラストが美しく、清楚な雰囲気と甘い香りで人気があります。
フクリンジンチョウゲ(覆輪沈丁花)は、葉の縁に淡黄白色の斑模様が入る品種です。葉を縁取るように模様が入る様子から「覆輪」という名前がつけられました。開花時期になると、美しい葉とのコントラストで見る人を楽しませてくれます。
植え付け時期 | 3月~4月、9月~10月 |
挿し木の時期 | 4月、7月~8月 |
肥料の時期 | 1月~2月、4月、9月 |
剪定の時期 | 4月 |
花が咲く時期/開花時期 | 2月下旬~4月中旬頃 |
ジンチョウゲの植え付けの適期は春と秋の年2回、開花後の3月下旬~4月、または9月下旬~10月下旬です。春は開花後~新芽が伸び始める前と、本格的な成長が始まる時期、秋は過酷な夏が過ぎ、株が安定する時期であることから、植え付けの適期とされています。
ジンチョウゲの鉢植えは、根がよく張るように苗よりも一回り大きな鉢に植え付けるのが基本です。鉢植え苗を購入した際、鉢が苗に対して小さい場合は、5月下旬~6月下旬に一回り大きな鉢に植え替えましょう。ジンチョウゲの根は少しでもダメージを受けると、すぐに枯れてしまいます。大きな鉢に植え替える際は、根鉢を崩さないように気をつけましょう。
ジンチョウゲを地植えする場所は、日なた~明るめの半日陰となる場所が理想的です。土は水はけと水もちがよければ、土質は選びません。また、ジンチョウゲは根が傷つきやすいため、植え替えや移植はしないことが原則とされています。植え替えや移植の際に根が傷つき、枯れる原因となる可能性が高いからです。植える場所はよく考えてから決めましょう。
ジンチョウゲは鉢植えも地植えも、日当たりと風通しのよい場所が基本です。ジンチョウゲは日当たりが悪いと花が咲かなくなってしまいます。しかし西日や真夏の直射日光など、強過ぎる日差しは株を弱め、最悪枯れてしまうことになりかねません。このため、鉢植えの置き場所や植える場所は、明るめの半日陰となる場所が理想的です。
ジンチョウゲは、水はけと水もちのよい用土を好みます。水はけが悪いと、根腐れを起こして枯れる恐れがあるので注意してください。鉢植えの場合は赤玉土(小粒)3.5:赤玉土(中粒)3.5:腐葉土3の割合で作った土で植え付けましょう。地植えの場合は、掘り起こした土に川砂や腐葉土を混ぜ込んでおきます。
ジンチョウゲは水の吸い上げ力が弱いため、乾燥に弱いという弱点があります。特に水切れを起こしやすい鉢植えの管理には注意が必要です。こまめに土の表面を観察し、乾燥を確認したら水をたっぷり与えましょう。地植えの場合、基本的には水やりの必要はありません。ただし春の新芽が出る時期、夏の高温期は乾燥しやすいため、土が乾いていたら水を与えます。
ジンチョウゲの施肥は、春、秋、冬の年3回です。春は開花期が終わる4月中旬~4月下旬に与えましょう。開花後に伸びる新芽の成長を助けるためです。秋は9月に与えます。株が充実する時期に、さらなる活力をつけさせるためです。冬は1月~2月に寒肥として施して、開花期に株が弱らないようにしましょう。肥料の種類として、春と秋は緩効性化成肥料、冬は有機質肥料を使用します。
ジンチョウゲの栽培で注意すべき害虫は、春~夏に発生するアブラムシとハマキムシです。アブラムシはジンチョウゲの養分を奪うほか、ウイルス病を媒介する恐れがあります。ハマキムシはジンチョウゲの葉を食害する害虫です。ジンチョウゲが葉の食害で枯れてしまう可能性は低いですが、見た目を大きく損ねてしまいます。どちらも発見次第、早急に薬剤散布などで駆除しましょう。
ジンチョウゲの栽培で注意すべき病気は、白紋羽病(しろもんぱびょう)です。白紋羽病にかかると、葉が黄変したり委縮したりして生育障害を起こし、ついには枯れてしまいます。一度かかると治療が難しいため、この病気にかかった株は根ごと引き抜いて焼却処分するしかありません。白紋羽病は土が過湿状態になると発生しやすくなるので、水やりの管理に注意しましょう。
ジンチョウゲの苗は、葉の緑が濃く生い茂り、節が詰まっているものを選びましょう。フクリンジンチョウゲの場合は、葉の緑と斑模様との境目がハッキリしているものを選びます。
ジンチョウゲは自然に樹形が整う植物です。また、強剪定すると株が弱って枯れてしまうことがあります。そのため、混み入った枝を切る程度で十分です。剪定は開花後、4月中に行います。
ジンチョウゲの耐寒温度は-5℃です。寒冷地では鉢植え栽培で、冬は室内で管理するほうがよいでしょう。それ以外の地域は、霜や寒風に注意します。あまり雪が降らない暖地なら、特に寒さ対策する必要はありません。
ジンチョウゲは挿し木で増やします。適期は4月、または7月~8月です。4月は前年に伸びた枝を、7月~8月はその年伸びた枝を利用します。ジンチョウゲは寿命が短く、20年~30年で枯れてしまいます。増やし方ではなく、後継樹の作り方として挿し木を利用するのもよいでしょう。
出典:写真AC