一足先の春の使者「沈丁花(ジンチョウゲ)」
沈丁花は、2月~3月のまだ早い春の時期に花を咲かせる植物です。常緑樹の低木で、中国から中央アジアが原産です。花の色は濃いピンクが主流ですが、内側が白く外側がピンクの花や全体が白い花、淡い黄色の花の種類もあります。枝の先に数個の小さい花がまとまって、まるで手まりのように花を咲かせます。
Daphne(ダフネ)はギリシャ神話のニンフ
沈丁花の学名は「Daphne odora(ダフネ・オダラ)」です。学名のダフネはギリシャ神話のニンフの名前です。アポロンの求愛から逃げるために、ダフネは自らの姿を月桂樹へと変えてしまったという神話があります。実は月桂樹と沈丁花は常緑で似たような葉の形をしています。沈丁花の学名にダフネがつくのは、似た点が多かったことが由来です。
三大香木のひとつ
沈丁花は香りがとても強く、花から離れた場所まで匂いが届くほどです。その香りは100以上の成分から構成されています。学名にある「odora(オダラ)」は香りがよいという意味をもっています。ちなみに残りの三大香木は夏に咲くクチナシと、秋に咲くキンモクセイです。
名前の由来
沈丁花の名前の由来は、花の香りと形に関係します。お香に使われる沈香(ジンコウ)のような香りと、外国では料理のスパイスとして使われる丁子(チョウジ)の花の形に似ていることから、2つの名前の頭文字をとって沈丁花とつけられました。
ボタニ子
沈丁花は、英語圏では学名のまま「Daphne odora」や「Winter daphne」と呼ばれています。
沈丁花(ジンチョウゲ)の花言葉
沈丁花に色別や種類別の花言葉はない
白、濃いピンク、黄色などの花色をもつ沈丁花ですが、色別の花言葉はつけられていません。また、沈丁花には白い花を咲かせる白花沈丁花や葉に白い色の模様が入る覆輪沈丁花、淡い桃色の花をつける薄色沈丁花などの種類があります。室町時代から日本で観賞されている沈丁花にはほかにも種類がありますが、種類別の花言葉はつけられていません。沈丁花全体の花言葉を、それぞれの花色・種類の花言葉として考えてよいでしょう。
花言葉①「不滅」「不老不死」「永遠」
ボタニ子
同じ沈丁花でも葉っぱに模様が入っていたりしてておもしろいね!
沈丁花は一年中、緑色の葉をつける常緑樹です。寒い冬でも枯れることなく、雪の中で緑の葉をつけるところから「不滅」「不老不死」「永遠」といった、ずっと変わらないものの象徴でもある花言葉がつけられました。また、沈丁花は花期が長いという特徴も「永遠」という花言葉がつけられる由来に挙げられます。
花言葉②「栄光」「勝利」「戦争の神」
沈丁花の学名にもあるダフネは、月桂樹に姿を変えたニンフです。そのため、花言葉にも月桂樹が由来のものがあります。月桂樹はギリシャ神話の主神が勝利の証に贈る植物で、ヨーロッパでは月桂樹の冠がポピュラーですね。「栄光」「勝利」「戦争の神」といった花言葉は、勝利を意味する月桂樹の葉に似ていることからつけられました。
花言葉③「飾り立てる」「優雅」「甘い生活」
沈丁花の強く、甘い香りから連想された花言葉もあります。「飾り立てる」や「優雅」は見た目の華やかさではなく、匂い立つような美しさをイメージさせるような花言葉ですね。「甘い生活」もまとわりつくような沈丁花の甘い香りから連想されました。
花言葉④「実らない恋」
ポジティブな花言葉が多い沈丁花ですが「実らない恋」という少し切ない花言葉もつけられています。これはダフネに恋したアポロンの恋が実らなかったことが由来でしょう。また日本に存在する沈丁花は、ほとんどが雄株で実がつかないこともこの花言葉の由来といえそうです。
沈丁花(ジンチョウゲ)の花言葉【英語】
中国原産の沈丁花は、香りのよさから世界各国で愛されています。英語での花言葉は「glory(栄光)」や「immortality(不死・不滅)」という日本での花言葉と似たようなものをつけられています。「栄光」は沈丁花と似た葉を持つ月桂樹からイメージされたものです。また、一年中緑の葉をつけるという特徴から「不死・不滅」といった花言葉がつけられました。
ボタニ子
ちなみに月桂樹の花言葉は「栄光」「勝利」なの。全然違う植物なのに、似ているだけで花言葉が同じようなものとはね…。
沈丁花(ジンチョウゲ)の花と香りを楽しもう
三大香木の名に恥じない甘い香りを漂わせる沈丁花は、日本での歴史も室町時代からと深く、多数の花言葉をもっています。花色もいくつかあり、品種改良によって種類も多いにもかかわらず色別、種類別の花言葉がつけられていないのは意外かもしれません。沈丁花の花言葉は「不滅」や「永遠」など縁起のよいものが多いため、ぜひ庭に植えて香りを楽しんでみてくださいね。
出典:写真AC