ヤマアジサイは古くから日本で自生していた植物です。関東地方以西~九州の太平洋側を中心に分布しています。山に生えていることから「ヤマアジサイ(山紫陽花)」、特に湿気のある林や沢沿いを好んで生息することから「サワアジサイ(沢紫陽花)」という別名がつけられました。日本の気候風土によくあっているため、育てやすい植物です。花色は土質によって変わることがあります。
園芸部類 | 庭木、花木 |
形態 | 低木 |
樹高・草丈 | 50cm~2m |
花の色 | 青、紫、赤、ピンク、白、緑 |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 強い |
特性・用途 | 落葉性 |
栽培難易度 | ★★☆☆☆ |
ヤマアジサイは通常のアジサイと比べると、花も葉も小ぶりです。そのため株全体が繊細な雰囲気をまとっています。ガクアジサイと同じく、縁にそって装飾花をつける咲き方ですが、ガクアジサイよりも花序が小さいです。また、地域による花色や花形の違いが大きい植物でもあります。このため、山野草愛好家の間では高い人気がある花木です。
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藍姫はヤマアジサイの人気品種です。開花時期になると、鮮やかな濃い青色の小さい花が株いっぱいに咲き誇ります。全体的に小ぶりな姿から繊細な印象がありますが、暑さにも寒さにも強い丈夫な品種です。小型品種で樹形のまとまりもよく、地植えでも鉢植えでも美しい花姿を見せてくれます。
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七段花はヤマアジサイの品種ですが、一時期は「幻の花」と呼ばれていました。名前の由来は、装飾花が七段に重なる特徴からきています。江戸時代に栽培され、シーボルトの著書「日本植物誌」でも紹介されました。しかし、江戸時代以降は姿を消してしまいます。それから長い間「幻の花」とされていましたが、1959年(昭和34年)、兵庫県神戸市の六甲山で自生しているところを発見されました。
ヤマアジサイの植え付け時期は?
ヤマアジサイの植え付け時期は12月中旬~3月です。
ヤマアジサイの開花時期は?
ヤマアジサイの開花時期は5月~6月です。
植え付け時期 | 11月~3月 |
植え替えの時期 | 11月~3月 |
肥料の時期 | 5月~10月、1月 |
剪定の時期 | 5月下旬~7月中旬/2月~3月 |
花が咲く時期/開花時期 | 5月~6月頃 |
ヤマアジサイを植え付ける適期は11月~3月です。この時期はヤマアジサイの休眠期にあたるため、植え付け作業を行っても、株がダメージを負う危険が減ります。2月以降は剪定などの作業があるため、植え付け作業を行うのは、12月~1月が最適でしょう。
ヤマアジサイを鉢植えで育てる場合、鉢は駄温鉢か盆栽鉢がおすすめです。素焼きの鉢は通気性がよすぎるため、ヤマアジサイが苦手とする乾燥しやすい環境を作ってしまいます。プラスチック鉢は保温性がある点では向いています。しかし風情に欠けるため、見栄えがよくありません。見た目にこだわる方は避けたほうがよいでしょう。
ヤマアジサイを地植えする場合、適度に湿り気があって、乾燥しにくい場所が理想的です。強い直射日光や西日があたるなど、乾燥しやすい場所は避けましょう。また、ヤマアジサイは品種によって好む環境が違う植物です。自分の住んでいる地域にあった品種を選びましょう。
ヤマアジサイは、湿り気のある林や沢沿いに自生している植物です。このため栽培環境も、適度に湿り気がある半日陰~明るめの日陰を理想としています。日当たりがよすぎると、葉焼けを起こして枯れる恐れがあるので注意しましょう。ヤマアジサイは多少日当たりが悪くても生育に影響しませんが、花付きをよくしたいなら、午前中は柔らかい光が当たる場所が適しています。
ヤマアジサイが好むのは、肥沃で水もちがよい土です。自分で作る場合は、赤玉土6:鹿沼土2:腐葉土2の割合で作りましょう。地植えの場合は、苗の植え付ける前の庭土に腐葉土を少し混ぜておきます。市販品を利用する場合は、花と野菜用の培養土がおすすめです。
ヤマアジサイは土の酸度が花色に影響を与える植物です。土が酸性なら花は青く、アルカリ性なら赤くなります。日本の土壌は酸性よりなので、ヤマアジサイの赤系品種を地植えにしたなら、少量の苦土石灰を開花前の株元にまきましょう。赤い花色をたもちます。ただし、アルカリ性が強過ぎると根が傷んでしまうので、やり過ぎないように注意しましょう。
ヤマアジサイの水やりの管理のポイントは、とにかく水切れに注意することです。ヤマアジサイは湿り気を好む植物であるため、水切れが続くと枯れる恐れがあります。鉢植えは土の表面が乾いたら、鉢底から水が出るくらいたっぷりの水を与えましょう。地植えも乾燥がひどい時期は、土の状態を見て水やりします。
ヤマアジサイの肥料は、5月~10月と1月が施す適期です。ヤマアジサイは5月から成長し始め、10月は花も葉も枯れていますが、翌年にそなえて株が充実します。この時期に肥料を与えれば、株をさらに充実させ、花付きや株全体の成長がよくなるでしょう。1月の肥料はその年の開花を助けるために与えます。肥料は油粕や堆肥などの完熟発酵肥料がおすすめです。
ヤマアジサイで注意すべき害虫は、アブラムシ、カイガラムシ、コウモリガです。特にアブラムシは発生しやすいので注意しましょう。こまめな観察や定期的な薬剤散布で予防し、発生した場合は殺虫剤などで早急に駆除します。
ヤマアジサイで注意すべき病気は、うどんこ病、モザイク病、炭疽病です。いずれも過湿状態で発生しやすいため、株の状態を見て、混み入った枝は剪定して通気性を確保しましょう。定期的な薬剤散布での予防も効果的です。
ヤマアジサイは耐暑性も耐寒性もあるため、夏越し・冬越し対策は特に必要ありません。ただし乾燥に弱いので、水切れしないように注意しましょう。
ヤマアジサイの花は、枯れて散ることがないのが特徴です。本来の花色がなくなり花びらが反り返った状態が、咲き終わりの合図となります。花びらが反り返ったら花がら摘みをしましょう。
ヤマアジサイの苗は、葉がたくさんついており、枯れたり傷んだりしておらず、きれいな緑色でいるものを選びましょう。ヤマアジサイは品種によっては気難しい性質を持つものもあるため、品種名のラベルがきちんとついている苗を選び、特徴や性質を確認することも重要です。
鉢植え栽培のヤマアジサイは、定期的な植え替え作業が必要です。植え替えの適期は植え付け時と同じですが、周期は鉢のサイズで変わります。3号鉢のような小さい鉢なら2年に1回、5号鉢~6号鉢なら3年~4年に1回のペースで植え替えましょう。一回り大きな鉢に植え替えると、株は大きく成長します。株を大きくしたくない場合は、根鉢の下を1/3ほど、周囲を一回りほど切除してから植え付けましょう。
ヤマアジサイの剪定作業は、5月~7月に行う花後剪定、2月上旬~3月上旬に行う冬剪定です。ヤマアジサイの花後剪定の適期は開花時期とかぶるため、花がら摘みもいっしょに行います。ヤマアジサイの花後剪定の基本は、上から2番目の芽の上で切ることです。切る場所を間違えると、新芽の成長が阻害されてしまうので注意しましょう。冬剪定は、古くなって木化した茎を整理するために行います。
ヤマアジサイの増やし方として、もっとも用いられている方法は挿し木です。ヤマアジサイの挿し木の適期は3月~4月、もしくは6月の年2回あります。挿し木に用いる枝の長さは、15cmほどで十分です。3時間~5時間ほど吸水させた後、挿し木用の用土に挿し、乾かないように管理しましょう。成功すれば約1カ月で発根します。
出典:写真AC