アイヌネギは北海道を主な産地とする山菜です。寒い地域で育つ山菜で、日本では奈良県よりも北の地域に自生していますが、東北以南では高地でしか育ちません。近年は自生数が減っており、地域によっては採取が禁止されている場所もあります。栽培物も生産者離れから店頭に出回る数も減り、貴重な山菜となっています。
園芸部類 | 山菜 |
形態 | 多年草(宿根草) |
樹高 | 40cm~70cm |
花の色 | 白 |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 弱い |
耐陰性 | 普通 |
栽培難易度 | ★★★★☆ |
アイヌネギは株に近寄っただけでも感じるニンニクのような香りが特徴です。このような強い香りは、スズランやイヌサフランなどほかのよく似た植物にはないものなので、見分ける基準にもなります。収穫できるまで時間がかかるうえ、収穫期間も1年のうちで数日しかないためとても貴重な植物といえます。
植え付け時期 | 3月~12月中旬 |
花が咲く時期 | 5月中旬~7月 |
肥料を与える時期 | 7月 |
種ができる時期 | 7月 |
収穫時期 | 4月中旬~5月中旬 |
アイヌネギの植え付けは1月~2月の厳寒期を避ければ基本的にどの時期でも可能ですが、おすすめの季節は秋です。秋植えは氷点下になる土地では9月~10月、氷点下にならない地域では10月~12月です。寒さが来る前に植え付け、しっかりと根を張った状態で冬を越すことによって、根や球根が寒さで傷むことを防ぎます。また、球根に多くの養分を蓄えた状態で春の芽吹きを迎えられるという利点もあります。
アイヌネギはプランターでも露地でも栽培できます。初心者の場合は季節に合わせた栽培場所の移動がしやすく、土の管理もかんたんなプランター栽培がおすすめです。
アイヌネギは本来雪国の山菜なので、平均気温が25℃以下の涼しい地域を好みます。アイヌネギは強い日差しを嫌うので午前中~昼頃によく日があたる半日陰で、西日はあたらない場所を選んでください。プランターや鉢植えで栽培していても屋外での管理が基本です。数年間育てて大きくなった株は一日中日光が当たる場所でも問題ないですが、夏の直射日光はあてないようにしてください。
アイヌネギには連作障害が起こる場合があります。同じユリ科の植物を育てた場所での栽培は1~2年あけましょう。
アイヌネギは水はけのよい場所を好むため、地植えをする場合は高さ10cmほどの畝を作るのがおすすめです。幅は種のまきかたによって変わりますが一条まきの場合は60cmを目安にしてください。
アイヌネギは水はけがよく、肥沃な土を好みます。地植えの場合は植え付けの2週間前に有機質の肥料と腐葉土を混ぜ込んでおきましょう。プランターや鉢植えの場合は黒土と腐葉土を半々ずつ合わせた用土がおすすめです。pHは6以上で酸性か弱酸性になるように調整してください。
植え付けの適期は秋です。アイヌネギを定植する際の株間は10cm~15cmで、1株あたり3球ほどが目安です。アイヌネギは雑草や乾燥を防ぐために少し密集気味に植え付けるのがコツです。あまり密集するようであれば、地上部が枯れて休眠期に入ったあとに株分けすれば問題ありません。
アイヌネギは肥沃な土を好みます。春の芽吹きから秋に地上部が枯れて休眠期に入るまでの間、継続的に肥料の効果があるのが理想的です。有機質の肥料は緩やかな効き目が長期間続くのでアイヌネギに向いています。そのため、元肥として被覆緩効性肥料を施しておくのがおすすめです。
アイヌネギの水やりのタイミングは土の表面が乾いたときです。アイヌネギは乾燥を嫌うので水切れしないように注意してください。水やりするときはたっぷりと与えましょう。7月~8月に休眠期に入り、葉が枯れてきますが翌春になると再び芽が出るので休眠期も乾燥しないように水やりを続けてください。
アイヌネギは寒さに強い山菜ですが、霜が降りたり土が凍ったりするような地域では冬越しの準備が必要になります。株元にマルチングすると防寒になります。また、春先からカビの胞子による病気が出る可能性がありますが、原因となるカビの胞子は雨によって土が跳ねて、葉に当たることによって感染するので、マルチングをして土が跳ねないようにしておくと予防になります。
アイヌネギは植え付けたときに元肥を施している場合は、基本的に追肥は必要ありません。葉が黄色くなっていたり、元気がないと感じたりしたときは液肥を薄めて与えましょう。元肥に有機質の肥料を使用した場合は液肥も有機質の液肥を使うのがおすすめです。特にプランターや鉢植えの場合は肥料の成分が水やりの際に外に流れてしまう可能性があるので注意してください。
葉が黄色くなるのはなぜ?
アイヌネギは7月頃になると休眠期に入ります。その時期に入ると地上部は枯れ始めるので葉が黄色くなるのは自然なことなので問題ありません。暖かい地域では6月頃から葉が黄色くなる場合もあります。それよりも前に葉が黄色くなる場合は肥料切れの可能性があります。液肥を薄めたものを与えて1週間~2週間ほど様子を見てください。それでも治らなければ更に追肥をし、繰り返しても治らなければさび病を疑いましょう。
カビが原因で発症する病気で葉に鉄さびのような病斑が現れます。成長が阻害されて、ひどい場合は枯死します。多湿の環境や窒素分の多い肥料の与え過ぎで発症するので風通しをよくしておくことで予防できます。症状が出た部分は切り取って処分しましょう。初期段階では薬剤散布も有効です。
土中のカビによる病気で、水はけが悪いと発生します。感染すると葉に褐色の病斑が出て、症状が進むと白いカビに覆われて葉が枯れます。カビの胞子を含んだ土が葉にはねないようにマルチングすると予防になります。
葉に小さな3mm~5mmのオレンジ色の病斑が出ます。やがては全体が黄色くなり、病斑部はすすのようになります。
アイヌネギには成長に支障が出るほどの害虫はほとんどつきません。寒冷紗をかけて害虫の飛来を防いだり、薬剤を散布したりすることで予防します。
葉に寄生して表面を舐めたり汁を吸ったりする害虫です。葉に小さな黄白色の斑点が現れたらネギアザミウマがついている可能性があります。
ネギ類にだけつくアブラムシです。薬剤には弱いですが、繁殖力が旺盛なので早い段階で駆除しましょう。
アイヌネギは種からも育てられますが発芽率はよくありません。種は開花後の7月頃に採取できるので自宅で栽培しているアイヌネギを種で増やせます。ただし、アイヌネギの収穫は開花前に行うため、収穫してしまうと種は採取できません。種を採取する場合は収穫しないよう注意しましょう。
アイヌネギを種から育てる場合は育苗用のポットや箱を使うのがおすすめです。箱を使う場合は7cmほどの間隔をあけてまきましょう。用土は市販の種まき用土で問題ありません。手順は以下のとおりです。
発芽するまでの間、土の上に腐葉土やワラをかけて乾燥を防ぎます。土が乾いたら水やりをし、半日陰で管理してください。
乾燥し過ぎた種は特に発芽率がよくないので、種を植える前に1週間~3週間ほど水につけておきましょう。幼苗の頃も乾燥に弱いので水切れしないように気をつけてください。
アイヌネギ
参考価格: 1,744円
アイヌネギ(ギョウジャニンニク)の苗です。種からも育てられますが、早く収穫したい場合は苗からの栽培がおすすめです。
おすすめ度 | ★★★ |
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育てやすさ | 中級者~上級者 |
出典:写真AC