さつまいもにカビが生えた?
「さつまいも」とはデンプンが豊富で、エネルギー源として適しています。ビタミンCや食物繊維が多く、加熱してもビタミンCが壊れにくいです。柔らかい身だけでなく葉や茎も食べられます。さつまいもにカビが生えていたり、黒くなっていたりして驚いたことはありませんか?実は食べられるものと食べられるものがあります。その違いや見分け方、対策について紹介します。
さつまいもとは
名称 | さつまいも |
学名 | Ipomoea batatas |
科属 | ヒルガオ科サツマイモ属 |
原産国 | 中南米 |
さつまいもは非常に繁殖能力が高く、窒素があれば育つので痩せた土地でも栽培できます。初心者でも比較的育てやすく、江戸時代以降の飢餓対策として広く栽培されてきました。日本人の重要なタンパク源として付き合いが長いので、私たちの生活にさつまいもはとても馴染み深いです。そのため市場に出回ることも多く、秋の風物詩として手に取ることも多いです。
さつまいものカビの原因
カビは世界に3万種類おり微生物の30~40%はカビです。中には、食品や医薬医療品など、私たちの生活に役立つカビもありますが、食品のカビは多くの場合は食べるのに危険が伴います。対策が必要ですが、実はカビ菌自体は空気中どこでも存在します。目視できる大きさになる条件は湿度60~80%、温度25~28度、食べカス、埃、汚れ、ダニに付着することです。
保管している温度・湿度の条件
さつまいものカビの主な原因の一つとして、保管場所の温度や湿度が関係していることがあります。よく知られているように、カビは湿度が高く温度の高いところを好みます。食品貯蔵庫や玄関先、段ボールに入れっぱなしの状態で保管しておくと、カビが生えて傷みの原因になる恐れがあります。
埃・汚れ・ダニ
フローリングのみの家は要注意です。フローリングの家でさつまいもを処理した場合、長く見積もって保存期間は3カ月ほどと考えられています。それは目に見えないカーペットに付着するようなアレルギーを引き起こす埃・汚れ・ダニが宙を舞いやすいのが原因です。対策としては屋外で処理して家に持って入るか、3カ月以内で食べきる量しか家に持って入らないことです。
さつまいもにつくカビの種類と見分け方
サツマイモにつくカビは3種類
青カビ
切り口から見える青いカビは青カビという名前のカビです。斑点状に青いスポットができることもあります。学術名はPenicilliumです。青カビは食用、医療用のカビとして、非常に有名です。青カビはペニシリンの原料としても知られています。青カビは人体に異常をきたすものではありません。またほかのカビの見分け方として、青カビは立体的な形状にならないという特徴があります。
緑カビ
さつまいもの傷に付着した食べると有害な緑色のカビがあります。「カビ毒」が人体に悪影響を与えます。アフラトキシンB1は天然物で最も発がん性が高い物質で、人間が大量に摂取した場合は急性肝障害を、少量を長期間摂取した場合は慢性の毒性を、それぞれ引き起こします。2004年にケニアで急性毒性中毒事件が起こり死者も出ています。緑カビの見分け方はブロッコリーのように立体的かどうかです。
ボタニ子
白カビ(ケカビ、クモノスカビ)
ふわふわ白い綿のような形状の皮についているカビの種類は、ケカビ、クモノスカビという種類のカビです。「ケカビ」は、湿気の多い有機物上に出現する白いカビです。「クモノスカビ」は、菌糸の様子がクモの巣を思わせることからその名前がつきました。斑点状にはえるだけでなく、コロニーの成長が早く、瞬く間に腐るので諦めましょう。白いカビの見分け方はどちらもふわふわした、まさに毛のような形状かどうかです。
ボタニ子
白いカビが生えてしまったら腐る直前なのでどんな食べ物でも諦めましょう。
ボタ爺
次ページからはカビのようでカビでない、さつまいもの異常の見分け方の紹介じゃ。
カビに似ていているがカビでないものもある
さつまいものカビについて紹介しましたが、実はカビのように見えても、カビでないものもあります。ここではカビに似ているさつまいもの変色の種類や原因を紹介します。
黒いかさぶたになった部分
さつまいもの切り口が黒く変色してしまうことがあります。これはヤラビンという物質が原因です。さつまいもを切断すると切り口から粘性の白い乳液がしみ出てきます。この切り口から染み出した成分がヤラピンです。放っておくと黒いタール状の物質に変ります。この変色は焼いても蒸しても変わりません。ただし味は落ちてしまいます。
ヤラビンは重要な成分でもある
このヤラビンはさつまいもの皮の近くに分布しており、昔から緩下剤としての効果が知られています。さつまいもを食べると便秘を防ぐと言われるのは、ヤラピンと食物繊維との相乗効果によるものだそうです。
加熱後に緑色になる部分
加熱後の緑色の斑点はクロロゲン酸が原因です。コーヒーにもよく含まれているもので、脂肪の吸収を抑えたり、活性酸素の働きを抑制する抗酸化作用や、動脈硬化や糖尿病・ガンの予防が期待されている成分です。さつまいもの切り口の色は白でクロロゲン酸も白濁色なので加熱後に変色したように見え、驚くこともありますが、健康によいとされています。こちらも味は落ちてしまいます。
種類によってはオレンジ、ピンク色のものも
一般のさつまいもは白色から黄色になります。しかし生の「安納芋」や「紅あずま」は、特徴としてもともとの色が一般のさつまいもと違う品種です。このような品種のさつまいもの場合は、切り口の色が鮮やかでも問題ありません。あらかじめ手に入れた品種の切り口をしっかり確認するようにしましょう。もちろんおいしいくなるよう改良された品種なので、味は抜群で柔らかいです。
さつまいも本来の食べられる状態
- 黒いかさぶた:ヤラピンが原因
- 加熱後の緑色の斑点:クロロゲン酸が原因
- ピンク色やオレンジ色:もともとの品種による色
カビではないが食べられないもの
低温障害による茶色い状態や土臭いもの
保存状態が5度以下になると、茶色い身になり土臭い「低温障害」になります。低温障害にかかったさつまいもは、まず食べる前から切り口が茶色い色になり、土臭いにおいがします。身を食べても土臭く、まさに土の味がします。身はとても固くなっています。腐っている場合も同じ現象が出るようです。茶色い土臭い状態のさつまいもをおいしく食べる方法は開発されていません。臭いを感じたら食べないようにしましょう。
感染症による黒ずみがあるもの
さつまいもに亀裂が入っており、その傷み部分が黒くなっている状態は、傷み部分から菌が入り込んでいる場合があります。食中毒を起こす恐れがあるので、食べないでください。亀裂が入っているかは掘り起こすときに確認することが多いので、市場に出回らないのですが、保存時にも痛みが出る場合があるので目を光らせてください。特に黒く傷み部分がついている場合は要注意です。
食べられないさつまいもの状態
- 黒ずみや茶色く土臭くなっている:低温障害
- 傷があり、傷部分が黒くなっている:感染症
ボタニ子
次はカビの生えたさつまいもを安全に食べる方法・対策について紹介します。
カビの生えたさつまいもを安全に食べる方法・対策
さつまいものカビは「食べられるカビ」と「食べられないカビ」がありました。食用のカビの中でも有名なカマンベールチーズがあるように、カビが生えているから食べられない状態であるとは限らないのです。ではカビが生えたさつまいもはどうやって食べたらよいのでしょうか?対策を紹介します。
食べられるのは青カビだけ
青カビは取り除き加熱する
青カビは食べられる、と言ってもそのまま食べてはいけません。食用にしていい青カビは、きちんと衛生的に管理されたものだけです。保管状態が悪いため生えた青カビはしっかり取り除くようにしましょう。青カビ部分を包丁などでしっかり取り除き、水で洗いましょう。さらに気になる場合はしっかり火を通して殺菌します。この処理を行えば、青カビが生えたさつまいもも食べることができます。
ボタニ子
カマンベールチーズのカビは通常、専用の部屋で製造されています。
白カビ、緑カビがついたものは食べられない
緑のカビは強力な毒性を持っています。白いカビは腐る寸前です。緑のカビも白いカビも食べられるカビではありません。どちらも発作や病気の原因になります。特に緑のカビは食べてしまった自覚があれば、すぐ病院に行くのがおすすめです。白いカビとは違い明確な毒なので放っておいても治りません。2種類とも絶対に食べたりしないでください。
乳幼児は取り除いても食べられない
青カビの生えたさつまいもは正しい処理をすれば食べられる、とお伝えしましたが、これは大人に限ってのことです。また未発達な乳幼児には決して与えないようにしましょう。またそもそも食物繊維の含有量から、さつまいもは離乳食として慎重に与える必要がある食品でもあります。気を付けて取り入れるようにしたいですね。
見た目だけでなく味覚・嗅覚・触覚でも判断する
見た目だけではわからない…どうしても不安…というときは、最終的に味覚・嗅覚・触覚で判断しましょう。腐っている場合は、水分が抜けてシワシワで小さくなったり、逆に身がとても柔らかい状態になっています。また臭いも酸味のある臭いがしたり、皮の表面が触るとヌルヌルしたり、張りがなく触ると凹んだりします。悩んだ場合はこれらで総合的に判断しましょう。
腐っているさつまいもの状態
- 水分が抜けてしわしわ
- 酷く柔らかい
- 酸味のある臭い
- 触るとぬるぬる
- 表面を押すと張りがなく凹む
サツマイモの正しい保存方法
カビの生えにくい保存方法
店舗にて購入した場合はさつまいもを切って水につけてアクを抜き、茹でて柔らかくなった状態でジッパーに入れて冷凍保存します。10日は保存できます。穫れたての場合、水で洗った場合は発泡スチロールや新聞などで包みます。1カ月は保存できます。水で洗っていない場合は、土がついたままの状態で穴の開いた段ボールに入れて保存します。保管場所がよければ6カ月ほど保存できます。
(傷がない)さつまいもの最長の保存期間
- 店舗で購入したさつまいも:10日間
- とれたてで水で洗った状態の土のついていないさつまいも:1カ月間
- とれたてで水で洗っていない状態の土のついたさつまいも:6カ月
カビの生えにくい保存場所
さつまいもは気温の涼しい場所(10~15℃)で保存する必要があります。気温の変化が少なく、風通しの良い日光の当たらない場所がおすすめです。また水分を嫌うので、湿度が低く安定している場所を保管場所にするようにしましょう。ただし対策を取れば、長い期間さつまいもを保管できますよ。
(傷がない)さつまいもまるごと1本の最適な保存条件
- 気温が10~15度
- 風通しのよい
- 日光が当たらない
まとめ
さつまいもは青カビ、黒い変色、加熱後の緑の変色なら、適切な処理を行えば問題なく食べられることがわかりました。しかし青カビ以外のカビや、低温障害にかかったもの、折れて黒ずんでしまったものなどは残念ながら食べられません。見分け方は難しいですが、不安な時は様々なポイントで比較して、おいしいさつまいもを食べましょう。
上の図のような緑色のカビは絶対に口に入れないようにしましょう。