さつまいもの上手な蒸し方
おいしい蒸しいもは、蒸し器はもちろん、蒸し器がなくても自宅で作れます。手順も難しくありません。鍋やフライパンを使った方法にも、チャレンジしてみましょう。
さつまいもの基本情報
学名 | Ipomoea batatas |
別名 | 甘藷(かんしょ) |
科名 | ヒルガオ科 |
属名 | サツマイモ属 |
秋の味覚さつまいもは、全国で栽培されています。代表的な産地は、鹿児島県や茨城県、千葉県、宮崎県などです。品種や産地にもよりますが、さつまいもの収穫は夏の終盤から秋ごろまでです。
時間をおいたサツマイモがおいしい
さつまいもは収穫してすぐより、2カ月ほどおいてから食べるほうが、水分が抜けてぎゅっと甘みが凝縮されおいしくなります。蒸(ふか)して食べるときは、時間をおいたサツマイモを選びましょう。
蒸したサツマイモがおいしい理由
蒸したサツマイモが甘くておいしいのは、加熱によって含まれているでんぷんが変化するからです。サツマイモを加熱すると、でんぷんが酵素(アミラーゼ)により分解され「麦芽糖」へ変化します。麦芽糖は優しい甘みでカロリーが低く、食物繊維が豊富でヘルシーな糖類です。65℃~70℃で、ゆっくり時間をかけて蒸かすと、さらに甘みが増しておいしいくなります。
皮つきで蒸すのがおすすめ
さつまいもは、皮つきのまま蒸すほうが、実の中に甘みを閉じ込められます。また加熱後の皮は食べられます。皮や、皮と実の間には多くの栄養が含まれているため、食感が苦手でないなら皮ごと食べるのがおすすめです。じゃがいもと違い、さつまいもの皮や芽には毒性がないため安心です。
ボタニ子
さつまいもの蒸し方①蒸し器
蒸し器でさつまいもをふかす手順
- 洗ったさつまいもを3cmほどに切る
- 塩水で切り口のぬめりを洗う
- 蒸し器に約3cmの水をはって、中敷きをセット後さつまいもを並べる
- ふたをして強火にかけ、沸騰させる
- 蒸気があがったら、火を弱め蒸気が少しあがる程度に調整し、約30分ふかす
- 竹串がすっと通ればできあがり
蒸し器で蒸かすポイント
- 蒸し器にさつまいもを入れてから加熱する
- 塩水で切り口を洗うと、口当たりがよくなる
さつまいもの蒸し方②電子レンジ
電子レンジでさつまいも蒸す手順
- さつまいもを洗い、全体をすきまなくキッチンペーパーで包む
- 包んだキッチンペーパーを水で濡らす
- さつまいもを耐熱皿にのせ、600Wで約1分加熱する
- 150Wや200Wで約10分加熱する
- 裏返して150Wや200Wで約10分加熱する
- 5分ほど蒸らす
電子レンジで蒸かすポイント
- レンジ強でさつまいもの温度を60℃~70℃にし、レンジ弱でゆっくり加熱する
- レンジ加熱後に5分ほど蒸らす
ボタニ子
レンジの加熱時間は目安です。さつまいもの大きさやレンジによって違うので調整してください。
さつまいもの蒸し方③フライパン
フライパンでさつまいもを蒸す手順
- フライパンに水1カップを入れる
- クッキングシートを敷く
- 洗ったさつまいもを丸ごと並べる
- フライパンにフタをして中火で加熱、蒸気が上がったら弱火にして20分加熱する
- フタを取って、さつまいもをひっくり返し、20分加熱する(水が少なくなったら、1/2カップほど水を足す)
フライパンで蒸かすポイント
- 蒸している途中に水が少なくなったら、追加する
さつまいもの蒸し方④鍋
本格的な蒸し器がなくても、深めの鍋があれば蒸し器の代用になります。蒸し方の手順は、蒸し器を使ったときと同じです。
鍋で代用する方法
- 深めの鍋を用意する
- 鍋に入れるザルかこし器を準備する
- 鍋のフタを布巾やタオルなどで包み、蒸したときに水滴が落ちないようにする
- 底に耐熱カップや茶わんなどを置き、上にザルやこし器がのっても水がつからないように底上げする
さつまいもの蒸し方⑤炊飯器
炊飯器でさつまいもをふかす手順
- さつまいもは洗い、小さいものは半分、大きいものは3等分ほどに切る
- 塩水で切り口のぬめりを洗う
- 炊飯器にさつまいもを入れる
- 2に水100㏄を入れる
- できれば玄米モード、なければ通常の炊飯モードで炊く
炊飯器で蒸かすポイント
- 炊飯器にさつまいもを入れるときは、重ならないようにする
- 玄米モードで時間をかけて炊く。ただし、早炊きモードは使用しない
ボタニ子
自宅にあるフライパンや鍋を、蒸し器の代用にする方法は便利だね!ふかし方の手順も簡単!
同じいもを使ってふかし方を変えてみるのもおすすめ。微妙な味の違いが発見できるかもしれません!
蒸すのに適したさつまいもの品種【しっとり】
しっとり食感のさつまいもといってもそれぞれに味や色、大きさなど特徴が違います。自分好みのしっとり食感のさつまいもを見つけてください。
品種①あいこまち
「あいこまち」は2014年に品種登録された新しいさつまいもで、「クイックスイート」と「関系107」との交配種です。収穫時期は9~11月で、12月以降でも手に入ります。蒸すと甘みが強くしっとりとした食感になり、加熱後もきれいな黄金色でお菓子の材料によく使用されています。
品種②シルクスイート
「シルクスイート」は2012年に販売が開始されたさつまいもで、「春こがね」と「紅まさり」を交配させて生まれた新しい品種です。収穫は9月末~10月ごろで、市場には1カ月ほど貯蔵した後出回ります。11月~2月ごろがおいしい時期です。収穫してすぐはホクホク感を、寝かせた後は、なめらかで品のある甘さのしっとり食感を楽しめます。
品種③ひめあやか
「ひめあやか」は「九州127号」と「関系91」を交配させた品種で、1998年に品種登録されました。名前にもある「ひめ」は小さいを意味します。「あやか」は調理しても色鮮やかなことからつけられました。甘すぎずしっとり食感で小ぶりの「ひめあやか」は、家庭でも扱いやすく、小腹が空いたときにちょうどよいサイズです。おやつにもおすすめですね。
品種④紅まさり
「紅まさり」は2001年に品種登録されました。別名は「かんしょ農林55号」で、「九州104号」と「九系87010-21」を交配させて生まれたさつまいもです。主な産地は茨城県で、加熱したときの色は濃い黄色、上品な甘さとなめらか食感が魅力です。
蒸すのに適したさつまいもの品種【ホクホク】
ホクホクとしたやわらかく甘いさつまいもは、少し寝かせて水分が適度に抜けるのを待つと食感が変化します。収穫後すぐと食べ比べてみるのも、味の違いを楽しめておすすめです。
品種①なると金時
「なると金時」は、徳島県で限られた地域で生産されたさつまいもに与えられたブランド名です。なると金時は、徳島の温かい気候と、海のミネラルを含んだ砂地を利用して生産されています。9〜10月が収穫時期にあたり、収穫後から適度に水分が抜け甘みが増します。糖度が高い品種で、調理後の黄金色の見事さと、栗のようにホクホクとした食感が魅力です。
品種②紅あずま
「紅あずま」は、1985年に品種登録されました。「関東859」と「コガネセンガン」を交配させて生まれた品種です。全国に広まっている品種ですが、主な産地は茨城県や千葉県などです。9月初め~11月中ごろが収穫時期にあたります。2カ月ほど貯蔵するとでんぷんが糖質に変わり甘みが増します。食べごろは12月~2月です。繊維質が少ないため食感がよく、甘みもあり人気があります。
品種③紅はるか
「紅はるか」は、2010年に品種登録されたさつまいもです。糖度がたいへん高く、ホクホクと品のある強い甘みで人気を集め、各地でブランド商標がつけられています。特に蒸したときの糖度が高い品種です。収穫時期は10月~11月上旬です。3週間ほど寝かせるとおいしさが増します。食べごろは11月〜1月です。
品種④パープルスイートロード
「パープルスイートロード」は千葉県産のアントシアニンが豊富な紫芋で2004年品種登録されました。収穫時期は9月末から11月はじめごろで、3週間寝かすほうが、美味しさが増し、10月中ごろ~1月ごろが食べごろです。ホクホクの食感とすっきりとした甘みがあります。
蒸すのに適したさつまいもの品種【ねっとり】
さつまいもには加熱すると、クリームのようなねっとりとした食感になる品種あります。お菓子にアレンジしてもおいしく食べられますよ。
品種①クイックスイート
「クイックスイート」は、「紅あずま」と「九州30号」を交配させ、2005年に品種登録されました。「クイックスイート」の特徴は、でんぷんが麦芽糖へ変化する温度が50℃前後と低温な点です。そのため、高温の日を使わなくてもレンジ調理で石焼きいもが作れるとうたわれています。大変おいしいさつまいもですが、生芋の状態では水分量が多く傷みやすいというデメリットがあり、市場では残念ながらあまり見かけられません。
希少品種は、ネット通販で買う方法がおすすめです!
品種②あやこまち
「あやこまち」は「サニーレッド」と「九州122号」を親に持ち、2006年に品種登録されました。さつまいもの外の皮は、普通のさつまいもと変わらない赤っぽい色ですが、中はにんじんのようなオレンジ色です。にんじん同様に、カロテンが多く含まれています。収穫時期は10月初旬~11月中旬で、収穫した後、3週間ほど寝かすと食べごろになります。冷めてもきれいな色と甘みはそのままのため、スイーツや料理に使いやすいです。
品種③安納芋
ねっとり食感の代表「安納芋」は、鹿児島県種子島の特産物として有名です。種子島の土は潮風が運んだミネラルをたっぷり含んでいます。収穫時期は9月~12月で、収穫後3週間ほど寝かした後が食べごろです。生のままでも糖度が高く、じっくり時間をかけて加熱すること甘みがさらに増します。
品種④隼人芋
「隼人芋」はアメリカから伝わり、大正時代に栽培が始まりました。皮の色は黄色っぽい薄茶色で、中は「あやこまち」と同じくカロテンを多く含むにんじん色です。別名「人参芋」とも呼ばれています。じっくり加熱することで甘みが増しますが、安納芋よりあっさりした甘さで食べやすいと人気です。近年は生産者が減ったため、珍しい品種とされています。
一口にさつまいもといっても、こんなに種類があるのね!食べ比べができるのもうれしいポイントです。
ふかし方を変えつつ、品種も変えてみるのも楽しくておすすめだよ!自宅でちょっとした品評会が開催できるね!
さつまいもをおいしく蒸そう!
さつまいもをおいしく蒸す方法は、低温でじっくり時間をかけることです。焦って短時間の高温で調理しないように、紹介した手順で蒸しましょう。また、蒸してさらにおいしくなるさつまいは多数あります。ぜひ、それぞれの食感を楽しみながら、自分好みの品種を見つけてみてくださいね。
さつまいもは芽が出ても大丈夫!芽が出たときの対処方法の記事も見てね!