はじめに
秋海棠(シュウカイドウ)という名前はあまり聞き馴染みがない方も多いでしょうが、日本庭園や湿った山野でもよくみる植物です。あまりにも自然に自生し、松尾芭蕉の俳句にも登場することから、帰化植物でありながら日本の固有種と間違われることもあります。日本の風土や文化に定着している秋海棠とは、一体どのような植物なのでしょうか?花言葉や特徴、育て方などをご紹介します。
秋海棠の特徴
日本の山野に自生し、松尾芭蕉をはじめ、多くの俳人がその俳句の中で詠んでいる秋海棠。日本庭園でもよくみかけ、歌人にも愛されてきた植物とは、一体どのようなものなのでしょうか?特徴を整理してご紹介します。
秋海棠の基本情報
分類 | 球根・草花 |
形態 | 多年草 |
原産地 | 中国・マレー半島 |
草丈 | 30~70cm |
開花時期 | 7月下旬~10月(地域による) |
花色 | 白・ピンク |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 強い |
中国からの帰化植物
秋海棠が中国から渡ってきたのは、1640年ごろといわれています。園芸用として持ち込まれましたが、本州では自生もみられるほど定着している植物です。山野草らしい楚々とした風情を持っていることと、夏~秋の時期に咲くことから、秋の季節を代表する花の一つとして、多くの文人に愛されてきました。
雌雄異花同株
秋海棠は開花時期になると、葉腋(ようえき)と呼ばれる葉のわきから花茎をのばし、その先端に雄花を咲かせます。さらに花茎が二股にわかれて伸びていき、その先端にも雄花を咲かせるのです。そのようなことを3~4回繰り返したあとに、最後の先端に雌花を咲かせます。雌花は雄花と違って三角形の子房がついているため、みわけることは簡単です。
秋海棠の種類
秋海棠は変異が起きにくい特徴があるため種類は多くありません。草丈がやや小柄で白い花を咲かせる白花シュウカイドウがありますが、ピンク花の種類より弱いため、一緒に植えない方がよいでしょう。ほかでは葉の裏が濃い紅色になるためカラーリーフとしても使える、裏紅シュウカイドウがあります。
秋海棠の名前の由来
秋海棠の名前の由来は、秋海棠の花の見た目が、春に咲くバラ科の花木である海棠(カイドウ)の花に似ていることと、秋の季節が開花時期にあたることの2点から、「秋に咲く海棠」を略して秋海棠と名付けられました。この海棠という名前にはさらに深い意味があるというのでご紹介します。
秋海棠の「海棠」は中国では特別な花
中国では海棠の「棠」の字に、一文字でバラ科の落葉高木をさす「山梨」という意味があります。そんな「棠」の字に「海」がついて「海棠」になると、高貴な花を指す代名詞になるのです。そんな海棠は美人の代名詞にもなり、楊貴妃を評するときにも使われました。それだけ海棠は特別な花だったのです。
秋海棠の別名
秋海棠には別名がいくつかあります。「瓔珞草(ヨウラクソウ)」「相思草」「断腸花(ダンチョウカ)」などです。瓔珞草の「瓔珞」は仏像の飾り玉のことで、花の姿が似て見えることからついたといわれています。断腸花は中国の逸話に由来し、恋人と引き裂かれた女性の涙から咲いた花というものです。さまざまな呼び名や逸話が生まれるほど、秋海棠は愛されてきた花といえます。
秋海棠の学名は「ベゴニア」
雰囲気は少々異なりますが、秋海棠の花はベゴニアの花とよく似ています。秋海棠はシュウカイドウ科シュウカイドウ属の植物ですが、シュウカイドウ属はあくまで日本語での表現であり、ラテン語では「ベゴニア」というのです。つまり秋海棠はベゴニアの一品種ということになります。ただしほかのベゴニアと違って花期は短く、秋にしか咲きません。
秋海棠の花言葉
秋海棠の花言葉は、「片思い」「恋の悩み」「自然を愛す」「未熟」です。断腸花の逸話からも切ない恋心が連想されますが、秋海棠の花言葉にはどのような由来があるのでしょうか?いくつかご紹介します。
秋海棠の花言葉の由来
秋海棠の花言葉の由来は、ピンク色の花を下向きに咲かせる様子が、まるで頬を赤らめてうつむいている姿に似ていることから、「恋の悩み」の花言葉がついたとする説があります。また、秋海棠のハート形の葉が左右で大きさが違うことから、「片思い」という花言葉につながったとする説は有名です。
出典:写真AC