伊予柑とはどんな果物?
伊予柑は甘味と酸味のバランスがちょうどよく、色・味・香りの3拍子そろった果物です。1本の木にたくさん実をつけるため、収穫の喜びを感じられるのが魅力です。常緑性のため、収穫期以外でも庭木や植木として楽しめます。植えてから収穫までの栽培管理のコツをつかみ、地植えや鉢植えにして育ててみましょう。
伊予柑の基本情報
分類 | 果樹 |
樹高 | 2.5~3m |
結実までの年数 | 地植え4~5年、鉢植え3~4年 |
収穫時期 | 11月下旬~2月 |
耐寒性 | 弱い |
耐暑性 | 強い |
受粉樹 | 不要 |
伊予柑の特徴
伊予柑は温州みかんに次いで生産量が多く、11月下旬ごろから収穫が始まり1~3月が旬の時期です。糖度とクエン酸度のどちらも高い状態のことを指す「高糖高酸(こうとうこうさん)」の特徴をもつ代表的な品種です。1個の重さは220~280gもあり、鮮やかな橙色の皮に果汁がたっぷりの果肉が詰まっています。
特徴①味
伊予柑は甘味と酸味のバランスがよく、柑橘類の中でも豊かな「香り」が特徴です。柔らかい果肉とみずみずしい果汁とともに香りも楽しめます。生育時に高糖高酸の状態になっているため、収穫後に貯蔵庫で数週間~数カ月かけて酸を抜き、糖度と酸度のバランスがよくなってから出荷されます。愛媛県の「弥生紅(やよいべに)」というブランド名の伊予柑は、1月に収穫し3月まで貯蔵した品種です。
特徴②皮
伊予柑の皮は、艶のある濃い橙色です。やや厚めの皮ですが、手でむける柔らかさが特徴です。食べるときは、ヘタの部分が小さく、皮にはりとつやのあるものを選びましょう。お尻のほうから指を入れると簡単に皮がむけますよ。また皮はマーマレードにするとおいしいためおすすめです。砂糖漬けジャムにしても香りがあり、きれいな橙色をいかして素敵な食べ方を楽しめます。
おもな産地
おもな産地は、名前の由来になっている伊予の国「愛媛県」です。現在、伊予柑の生産量の約9割を愛媛県が占めています。元々は明治時代に山口県萩市で発見され、明治時代は産地名「穴門(あなと)」にちなんで「穴門蜜柑(あなとみかん)」と呼ばれていました。その後、徐々に愛媛県松山市を中心に広がり「伊予柑」と名を変え愛媛県のほぼ全域で栽培される名産になっています。
愛媛県では「愛媛のいよかん、いい予感」のキャッチフレーズで伊予柑をPRしています。伊予柑は冬の受験シーズンにおすすめの縁起のよい果物です。
伊予柑の育て方
柑橘類は、苗木を植え付けてから収穫まで年数がかかる植物です。伊予柑は実をつけるまで3~5年の歳月がかかりますが、ほかの柑橘類に比べて樹高が低く、実も小さいため家庭でも育てやすい品種です。温州みかんと違い、やや寒さに弱く温暖な気候を好むため、日当たりのよい場所で栽培しましょう。植えてから収穫までの育て方を詳しく見ていきます。
育て方①植え付け
植え付けは3~4月上旬ごろにしましょう。日当たりと風通しがよく、冬に寒風が当たらない場所が適しています。直径50cm、深さ50cm程度の穴を掘り苗木を入れます。掘り上げた土の半分くらいに化成肥料や鶏糞を混ぜて穴に入れ、残り半分の土には何も混ぜずに埋め戻しましょう。土をかぶせて地面より20~30cmくらいの高さに植え付け、株元が浸かるほどたっぷり水を与えます。
植え付ける前に苗木をポットから出して、半日ほど根を水に浸けて十分に濡らしておきましょう。
鉢植え
寒冷地では鉢植えのほうが管理しやすいです。鉢底にネットと鉢底石を敷き、水はけのよい用土に植え付けます。冬場は寒風の当たらない場所に移動しましょう。また鉢植えで栽培する場合は、2年に1回程度植え替えが必要です。鉢の中で根が詰まってしまうのを防ぎ、通気をよくしましょう。植え替えは3月下旬~4月上旬が適期です。枝が茂り大きく成長したら、鉢植えから地植えに植え変えましょう。
育て方②支柱立て
植え付けた後は、地上部を高さ40~50cmで切り戻しして、風で倒れないように支柱を立てて固定しましょう。主枝と側枝の分岐している部分が裂けないように注意します。枝先が垂れていると枝全体が衰弱するため支柱を添えて持ち上げましょう。45度くらいの角度に支柱を立てるのがコツです。
育て方③水やり
鉢植えの場合は、土の表面が乾いたら鉢底から流れ出るくらいたっぷり水を与えます。地植えの場合は、あまり水やりを必要としませんが、雨が降らない日が続いたときは水やりをしましょう。夏に日照りが続くようなときは、特にしっかり水を与える必要があります。
育て方④肥料
地植えの場合は、3月と10月中旬に速効性化成肥料か有機肥料を施肥しましょう。鉢植えの場合は6月にも施肥します。幹に近い場所を避けて、枝の先端の下ぐらいの地面に散布しましょう。地中に肥料を埋める際は深さ10cm程度の穴を、樹木を中心に輪をかくようにぐるりと掘って施肥するのがポイントです。
育て方⑤摘果
伊予柑の摘果は7~8月が適期です。果実が発育するためには葉からの供給が大切なため、葉70~80枚あたり果実が1個になるように摘果をしましょう。伊予柑は受粉しなくても実がなるため人工受粉は必要ありませんが、実がつくようになったら摘果が必要です。上向きのものや傷のあるもの、小さいものは摘み採ります。摘果後は、収穫時期まで放っておきましょう。
鉢植えの場合は、1鉢あたり3つほど果実がなるように摘果をするのが栽培のコツです。
伊予柑の収穫
伊予柑の収穫時期は、12~2月です。暖かな地域では11月下旬ごろから収穫できます。皮にはりとつやがあり、濃い橙色になったら収穫のサインです。寒さにあてると凍害が発生するため、天候をよくみて収穫しましょう。収穫した後は乾燥させないように保存しておくと、酸味が抜け甘みが増しておいしくなります。
凍害が発生すると、実がスカスカになってしまうため注意が必要です。
保存方法
収穫した後の伊予柑は、直射日光を避けて風通しのよい場所で保存しましょう。涼しい場所がおすすめです。冷蔵で保存する場合は、乾燥を防ぐためにビニール袋に入れてから野菜室で保存します。収穫後約1カ月、じっくり追熟させるのがおいしさのポイントです。
伊予柑の剪定
伊予柑は「開心自然形仕立て」で栽培し、3月に剪定します。開心自然形仕立てとは、主幹を短く切り詰め、主枝を2~4本に配置した樹形です。自然の樹形に近いため花芽がつきやすくなり、果実の生育がよくなるメリットがあります。この樹形になるように、収穫後は枯れ枝や混み合った枝などを切り、樹の内側まで日当たりや風通しをよくしましょう。
剪定の方法
伊予柑はあまり強い剪定をせず、果実の生育に十分な葉を残すことが大切です。どの枝に果実をならせるのか考えながら、混みあっている枝や不要な枝を切りましょう。弱い枝や風通しを悪くしている枝を間引くのがポイントです。2~3年目以降は、実が多くなった年は軽めに剪定し、実が少なかった年は強めに剪定します。
剪定の方法によって翌年の果実のつきかたが変わります。樹全体に日が当たるように剪定しましょう。
まとめ
伊予柑は橙色のつやつやした輝きが美しいみかんです。食べると豊かな果汁と爽やかな香りが、口いっぱいに広がります。またビタミンCがたっぷり含まれているため、風邪の予防や疲労回復に効果があるいわれています。植えてから収穫まで栽培管理のコツをつかみ、上手に育ててみましょう。
出典:写真AC