枝垂れ桜とは
春になると優雅に咲き誇り、儚く散っていく桜は、日本人に広く愛されている花です。桜といってもソメイヨシノやエドヒガン、オオヤマザクラなど、その種類は500種類にも及ぶといわれています。中でも、枝が柳のように垂れ下がっているのが枝垂れ桜です。枝垂れ桜とは桜の種類ではなく、枝が垂れ下がっている桜を総称した呼び方です。見頃となる3月中旬~4月にかけて、優美な姿を見せてくれます。
基本情報
学名 | Cerasus spachiana ‘itosakura‘ |
科 | バラ科 |
属 | サクラ属 |
開花時期 | 3月中旬~4月 |
樹高 | 5~15m |
花の色 | ピンク、白、赤 |
花言葉 | 優美、ごまかし |
別名 | 糸桜、大糸桜 |
特徴
枝垂れ桜の特徴は、枝が上から下に垂れ下がっていることです。この枝垂れは、突然変異によって枝が柔らかくなり、成長するにつれて重力に耐えられなくなることで発生します。遺伝的に劣勢であるため、枝垂れ桜の子が枝垂れ桜になるとは限らないといわれています。また、鉢植えで育てられることも特徴で、通信販売やホームセンターで苗を購入できます。
花言葉
枝垂れ桜の花言葉は「優美」と「ごまかし」です。「優美」は、他の桜と違って枝が垂れ下がっている見た目に由来します。「ごまかし」は、垂れ下がっている枝が何かを隠しているように見えることからつけられました。どちらの花言葉も、枝垂れ桜の特徴的な姿に由来しています。
別名
枝垂れ桜は「糸桜」という別名で、古くから和歌に詠まれています。代表的な歌は、松尾芭蕉の「半日の 雨より長し 糸桜」、与謝蕪村の「ゆきくれて 雨もる宿や 糸桜」があります。季節を楽しむ歌人にとって、枝垂れ桜の優美な姿は印象的だったのかもしれません。
枝垂れ桜の品種
枝垂れ桜には多くの品種があり、野生の桜が突然変異して枝が枝垂れたものが、栽培品種として改良されて全国に広がりました。品種によって花の色や見頃の時期が違うので、詳しく見ていきましょう。
品種①八重紅枝垂れ
特徴
八重紅枝垂れは、エドヒガンから生まれた栽培品種の八重桜で、日本の八重桜の中でも代表的な品種です。小さな花びらが幾重にも重なった八重咲の桜で、樹高は高いもので8mを超えます。江戸時代から栽培されている歴史のある品種で、明治時代には仙台で盛んに植樹が行われました。
開花時期
八重紅枝垂れの開花時期は、東京で4月中旬と、桜としては遅めの時期に開花します。花の色はピンク色で、5分咲き~7分咲きの頃に花の色が最も濃くなり、その後は淡いピンク色へと変化します。東北地方以南が栽培適地ではありますが、北海道でも栽培は可能といわれています。
品種②紅枝垂れ
特徴
紅枝垂れはエドヒガンの変種で、濃い紅色の花を咲かせます。花びらは小さいですが、大きな樹から滝が流れ落ちるように咲き誇る姿は圧巻です。個体によって花の色や花びらの大きさに変異が見られるので、樹ごとの違いを楽しむのもおすすめです。
開花時期
紅枝垂れの開花時期は、エドヒガンより少し遅く、4月上旬~下旬です。日本は南北に細長いため、地域によって差異が出ます。全国的に有名な福島県の「三春滝桜」は紅枝垂れで、4月上旬に開花し、満開は例年4月中旬です。
品種③吉野枝垂れ
特徴
吉野枝垂れはソメイヨシノが枝垂れた品種です。葉より先に花が咲くのが特徴で、いくつかの花が集まり、てまりのように丸くまとまっています。花の色は満開の時は白色ですが、咲き始めは淡紅色です。満開に近づくにつれて変化する花の色を楽しめる枝垂れ桜です。
開花時期
吉野枝垂れの開花時期は4月上旬です。満開の時期はたくさんのてまりが樹の上から下に向かって枝にくっついているような、不思議な光景が見られます。桜の中でも特徴的な花を持つので、満開の季節を狙ってじっくりとお花見することをおすすめします。
品種④清澄枝垂れ
特徴
清澄枝垂れは、千葉県の清澄寺に原木があることから名前がついた枝垂れ桜です。マメザクラとオオシマザクラの交雑種と考えられています。別名を枝垂れ小葉桜といい、縁がギザギザした長細い楕円形の葉をもちます。また、葉に小さな毛が生えていることも特徴です。花の色は白色、または淡紅色で、大きさは3cmほどです。
開花時期
清澄枝垂れの開花時期は4月上旬~中旬です。満開の時期は4月中旬頃で、透き通った白色の花が咲き乱れます。花は一重咲きで、大きさは3cmほどです。1輪1輪がとてもかわいらしく、花の色も相まって優しさを感じる枝垂れ桜です。
品種⑤雨情枝垂れ
特徴
雨情枝垂れはエドヒガンの栽培品種で、詩人の野口雨情が住んでいた栃木県宇都宮市の邸内にあったことからその名が付けられたといわれています。樹高が4m程度とあまり大きくならないことが特徴です。また花は八重咲で、八重紅枝垂れよりも大きな花を咲かせます。
開花時期
雨情枝垂れの開花時期は4月中旬と遅く、見頃は4月下旬です。淡紅色の大きな花を咲かせ、満開の姿は非常に美しく、その美しさから東北地方では津波の伝承のシンボルとして、約600本の雨情枝垂れが植樹されました。植樹された山に桜が咲き乱れ、人々の希望となってほしいという願いが込められています。
出典:写真AC