牡丹桜の概要
八重咲き桜の品種を指す名前
牡丹桜は八重咲きの桜です。花びらがたっぷりと詰まった咲き方が牡丹の花を思わせるため「牡丹桜」と呼ばれるようになりました。なお桜の種類の分け方には、いろいろありますが、5枚の花びらをつけるものを一重咲き、それ以上の花びらをつけるものを八重咲きと、咲き方で分ける場合もあります。牡丹桜は花が大きくて花びらも多く、見応えがあることから多くの園芸品種が存在しています。
牡丹桜の基本データ
植物学的分類 | バラ科サクラ属:落葉広葉樹 |
原産地 | 日本 |
開花時期 | 4月中旬~5月上旬 |
花色 | 白・ピンク色 |
別名 | 里桜・菊桜 |
牡丹桜の特徴
咲き方の種類は細分化される
最大の特徴は、名前の由来にもなっている八重咲きの花です。花びらが多いので、一重咲きの桜よりも大きい花となります。八重咲きをさらに細分化すると、6枚から15枚の花びらをつける品種を半八重咲き、20枚から70枚の品種を八重咲き、100枚以上の花びらをつける品種を菊咲きと呼びます。また、八重咲きの品種には、花と同時に葉を展開させるものが多いのも大きな特徴です。
特徴からつけられた別名
100枚以上の花びらをつける菊咲き品種は「菊桜」とも呼ばれています。また、牡丹桜は豪華で見応えがあることから、人工的に品種改良された園芸品種が多く存在するという特徴があります。そのことから、野生種の桜の代表格である山桜に対して「里桜」という別名がつけられました。
牡丹桜の開花時期
牡丹桜の開花時期は4月中旬から5月上旬です。春の花の代表格とされる桜の種類にしては、開花時期はやや遅めと言えるでしょう。一方で開花から散るまでの期間が一重咲きの桜と比較すると、やや長い特徴があります。
牡丹桜の花言葉
牡丹桜の花言葉は、以下の3つです。
花言葉①「豊かな教養」
たくさんの花びらを、これまでに積み重ねてきた知恵、知識、教養、経験になぞらえたことが花言葉の由来とされています。
花言葉②「善良な教育」
「豊かな教養」と同じく、たくさんの花びらが重なる咲き方を、豊かな知恵や知識を蓄えてきたことになぞらえたのが花言葉の由来とされています。優れた教育によって、さまざまな知恵や知識を身に着けた人物に成長するということでしょう。
花言葉③「しとやか」
この花言葉の由来は、豪華な咲き方をしながらも上品で、最後には花びらが散っていくところが、いさぎよさと奥ゆかしさを感じさせるからだと言われています。
牡丹桜と八重桜との違いとは?
八重咲きの桜で「八重桜」と呼ばれている種類があります。牡丹桜と八重桜には、どのような違いがあるのでしょうか。ここでは牡丹桜と八重桜について紹介しましょう。
実は同じ種類の桜
結論から言いますと、牡丹桜と八重桜とは呼び名が違うだけで、種類としては同じです。正確に言えば、八重咲きの桜の品種の総称を八重桜と呼び、牡丹桜は八重桜の別名の1つとされています。前に触れたように牡丹桜という名前は、花の咲き方が牡丹に似ていることが由来です。
八重桜の歴史は古い
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園芸品種が多い八重桜ですが、その歴史は古く「百人一首」でも有名な「いにしへの奈良の都の八重桜けふ九重ににほひぬるかな」という歌は、平安時代の中期に詠まれています。
牡丹桜(八重桜)の品種
ここからは、牡丹桜(八重桜)の品種を紹介します。牡丹桜は「里桜」という別名を持つほど園芸品種が多いため、ここで紹介するのはごく一部ですが、いずれも魅力的な品種ですよ。
関山(カンザン)
日本を原産とする桜の園芸品種で、八重桜の代表的品種と言われているほど有名な桜です。4月中旬から5月上旬の開花時期に、大輪の花を咲かせます。花色は濃い目のピンク色で、花びらの数は25枚から50枚ほどです。豪華な花と強健で育てやすい性質から西洋人にも好まれ、欧米でも広く植栽されています。塩漬けにした花は桜湯やパン、スイーツなどによく使用されます。そのため業務用として栽培されることも多いです。
普賢象(フゲンゾウ)
上記の関山と共に、八重桜の代表的品種と呼ばれている桜です。古い品種で室町時代にはすでに存在していました。名前の由来は細い葉のような2本の雄しべの形状が、普賢菩薩が乗る象の鼻に似ていることからきています。4月下旬が開花の最盛期です。花色は最初は薄紅色ですが、時の経過と共に白くなっていき、最盛期を過ぎると花の中心部が赤くなるという、不思議な特徴を持っています。
一葉(イチヨウ)
日本原産の園芸品種で、花の外側が薄ピンク色、内側が白色という特徴的な花色を持つ桜です。このため満開期は白い花のように見えます。一葉の名前は、葉のような雄しべが1本から2本、花の中心部から突き出ている特徴に由来しています。
鬱金(ウコン)
数多ある桜の品種の中で、唯一黄色い花をつける品種として知られている桜です。花びらに葉緑体を持ちますが、緑色が弱いため淡黄色に見えます。名前の由来はその花色が、ウコンの根を染料にして出す鬱金(ウコン)色に似ているからです。ただし、この黄色い花色は咲き進むごとに白くなり、最後にはピンク色を帯びるという特徴があります。
八重紅枝垂(ヤエベニシダレ)
エドヒガン系の栽培品種で、名前が示すように濃紅色の八重咲きの花が特徴の枝垂れ桜です。「平安紅枝垂」「仙台小桜」「遠藤桜」「仙台八重枝垂」など、別名が多い桜でもあります。江戸時代から栽培されていましたが、明治時代に当時の仙台市長であった遠藤庸治氏が普及に努めたことで、仙台市から全国各地へと広まりました。別名の「遠藤桜」「仙台八重枝垂」「仙台小桜」は、このことに由来しています。
兼六園菊桜(ケンロクエンキクザクラ)
日本三名園の1つである「兼六園」の名前がついているのは、実際に兼六園にこの品種の原木があったからです。残念ながら原木はすでに枯死しており、現在は原木から接ぎ木された二代目が植えられています。300枚以上の花びら、咲き進むにつれて濃紅色、淡紅色、白色と変わっていく花色、最後は花びらが散らずに花ごと落下するなど、非常に大きな特徴を複数持つ個性的な品種です。
出典:BOTANICA