タマネギはサラダや炒め物、スープやカレーなどさまざまな料理に使える便利な野菜です。タマネギの種や苗はホームセンターで販売されているため、コツをおさえれば家庭菜園でも気軽に育てられます。露地栽培だけでなく、鉢やプランターに植え付けると、キッチンやベランダでも栽培できる植物です。
園芸部類 | 野菜 |
形態 | 多年草(園芸上では一年草もしくは二年草) |
樹高 | 40cm〜60cm |
花の色 | 白 |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | やや弱い |
耐陰性 | 普通 |
栽培難易度 | ★★☆☆☆ |
タマネギは、中央アジアが原産の多年草です。日本では、北海道の北見地域でとくに栽培が盛んで、日本一のタマネギ栽培地としても知られています。主な可食部は、球根(鱗茎)が肥大した部分ですが、タマネギから伸びてくる芽も長ネギのような感覚で食べられるのが特徴です。
タマネギは、白色の小花がいくつも集まった球状の花を咲かせます。まん丸としたかわいらしい形で「ネギ坊主」とも呼ばれており、放任で育てると春先に花が咲くのが特徴です。花が咲くと花に栄養分が吸汁され、球根部分の成長が滞ったり茎だけが間延びしたりします。おいしいタマネギを収穫するには、花は咲かせないように管理しましょう。
名前の由来は?
タマネギは球根部分が「玉」のようにまん丸の形に育つ「葱(ネギ)属」の植物のため「玉葱(タマネギ)」と名付けられました。英名の「Onion」はラテン語で「集合体」を意味する「union」という言葉が元になっています。タマネギの皮が、何枚も重なっている様子からついた英名です。
花言葉は?
タマネギには「不死」という花言葉がついています。タマネギは、球根の状態でも日当たりのよい場所に置いておけば、勝手に茎が伸びて成長していくという性質からつけられました。また、タマネギは皮を次々と剥いてもなかなかなくならないため「不死」という花言葉がつけられたともいわれています。
たまねぎ 猩々赤
参考価格: 737円
猩々赤は生色に適した品種で「レッドオニオン」とも呼ばれています。とう立ちや珠割れを起こしにくいのが魅力で、初心者でも育てやすい品種です。肥料の分量を少なくし、早めに追肥を行うと真っ赤に美しく色付きます。
皮の色 | 赤色、えんじ色 |
---|---|
1玉の重さ | 約320g |
札幌黄 北海道産 たまねぎ
参考価格: 3,690円
札幌黄は「イエロー・グローブ・ダンバース」という品種を元に作られました。タマネギの品種の中でも肉厚で甘みが強く、高級タマネギとして料亭やレストランでも使用されています。
皮の色 | 黄土色 |
---|---|
1玉の重さ | 約250g |
種まき時期 | 9月 |
植え付け時期 | 10月〜11月 |
肥料時期 | 12月〜3月 |
開花時期 | 4月〜5月 |
収穫時期 | 5月〜6月 |
栽培に適した時期は?
タマネギは耐暑性がやや弱いため、秋に種まきをして夏がくる前に収穫を終わらせるようにしましょう。台風や暴風の被害を防ぐために、発芽するまでは室内で育苗ポットを使用して育てると安心です。台風の季節が過ぎてから、地面に苗を植え付けましょう。
タマネギは、地植えでも鉢植えでも栽培が可能です。根が深くまで成長するため、浅い鉢を使用すると発芽前に枯れる恐れがあります。そのため、鉢植えにする場合は、20cm以上の深さがある鉢を使用してください。地植えにする場合は、土をよく耕してふかふかの状態にしておきましょう。
タマネギは水耕栽培も可能です。タマネギの根の部分が水に浸かるように管理してください。ペットボトルを半分に切ったものや、深さのある空き容器を使用しても育てられます。水耕栽培の場合は、毎日新しい水に交換するのがポイントです。
タマネギは基本的には屋外で管理しましょう。広いスペースが確保できる場合は、地植えにして畝を立てて管理するのがおすすめです。庭や畑がない場合は、深さのある大きめのプランターを使用すれば、ベランダ栽培でも気軽に育てられます。鉢植えや水耕栽培にすると室内でも管理できますが、しっかりと日光の当たる場所で育てましょう。
タマネギは、日当たりのよい場所で管理してください。タマネギの生育適温は15℃前後のため、風通しのよい涼しい場所を好みます。耐暑性がやや弱いので、夏の暑い時期は直射日光が当たらないように、建物の陰や半日陰に移動させましょう。地植えの場合は、遮光ネットや寒冷紗を使用して、適度な日陰を作っておくと安心です。
タマネギは、ネギ属に分類される植物のため、連作障害を起こしにくいといわれています。しかし、タマネギが成長する過程で「リン酸」と「カルシウム」を多く吸収するため、元肥の成分には注意してください。
上手に連作するコツは?
タマネギは連作可能ですが、何年も同じ場所で育てると病害虫被害を受けやすくなるのが特徴です。鉢植えの場合は新しい用土に交換し、地植えの場合は用土を追加して土壌改良してから植え付けましょう。土壌改良をすると、収穫量や増えたり、タマネギの味や風味がよくなったりします。
タマネギを露地栽培する場合は、畝を立ててから植え付けます。タマネギの苗を植え付ける2週間〜3週間ほど前に用土をよく耕し、堆肥をたっぷりとすき込んでおきましょう。堆肥が馴染んだら石灰を混ぜ込み、土壌の酸性度を5.5pH〜6.5pH程度に調節します。1週間前に元肥として緩効性の肥料肥料を加えてから畝を立てていきましょう。
畝の高さは5cm〜10cm程度、畝間は15cm以上あけるのがポイントです。畑の排水性が悪いようならば、畝を10cm〜20cmほど立てて「高畝」にしても構いません。タマネギは種をまいてから収穫までの期間が長いので、黒マルチを利用してマルチングをしておくと雑草対策ができます。タマネギ用に販売されている穴のあいた黒マルチを使用すると便利です。
タマネギは、水はけと水もちのよさを兼ね備えた用土で育てます。市販されている「野菜用培養土」を使用しても構いません。自分で配合する場合は、赤玉土と腐葉土を混ぜ込んだ用土を使用してください。酸性の用土を嫌うため、地植えにする場合は「石灰」や「苦土石灰」をすき込み、酸性濃度を調節しておきましょう。
タマネギの種まきは9月に行います。地植えにする場合でも、一旦育苗ポットに種まきをしましょう。種は「すじまき」という方法でまいていきます。2cm〜3cm感覚で一直線上に種をバラバラとまきます。土を薄くかぶせてから、たっぷりと水やりをしてください。
種まきをしたあと、土の中で種が乾燥すると発芽しない恐れがあるので、水切れを起こさないように管理します。適度な湿度を保つために、用土の上に不織布やもみ殻をかぶせておくのもおすすめです。水をたっぷり与えながら育てると、種まきをしてから約1週間ほどで発芽します。
健康で丈夫な苗を育てるためには、発芽後に間引きをしながら管理するのがコツです。すじまきした種から芽が出たタイミングで、発育の悪い苗や、茎が細くてヒョロヒョロしている苗を間引いていきます。最終的には、苗の株間が5cm〜10cmになるように間引いてください。
草丈が15cm〜20cm程度まで成長したら、葉や茎を折らないように丁寧に引き抜きます。定植する場合は、株間を20cmほどあけて植え付けましょう。苗の根元にある白い部分が、完全に土に埋まるように植え付けるのがポイントです。
タマネギは「リン酸」を多く含んだ元肥をしっかりと混ぜ込んでおくのがポイントです。リン酸は用土に染み込んでいかない性質があるため、土をよく耕して地中深くまでしっかりとリン酸を行き届かせておきましょう。
種まきをしてから発芽するまでは、毎日たっぷりと水やりをします。地植えの場合は、完全に根付いてしまえば降雨のみで十分です。鉢植えの場合は、土の表面が乾き始めたら水やりをします。球根を乾燥させると発育しにくくなりますが、あまり多湿にすると腐ってしまう恐れがあるため、適度な水分量で水やりをしましょう。
タマネギは草丈が低く、つる性の性質ももっていないため、支柱に誘引する必要はありません。
タマネギは栽培期間が長いので、雑草が生えるのを防ぐためにもマルチングをしておくのがおすすめです。また、タマネギは秋に種まきをして、冬越ししてから春に収穫するというサイクルで育てます。雪や霜が当たって枯れるのを防ぐためにも、マルチングをしてから冬越しさせましょう。
タマネギは2回に分けて追肥をするのがポイントです。1回目の追肥は、苗を植え付けてから1カ月を目安に行います。2回目の追肥は、苗が成長期に入る3月〜4月に行いましょう。緩効性の化成肥料を株元に適量施してから用土を軽くほぐし、株元に土を寄せるようにします。穴のあいた黒マルチを使用している場合は、穴からパラパラとまいてください。
タマネギの葉の部分を持って、優しく引っ張るように収穫しましょう。5月下旬〜6月上旬頃が収穫適期で、おいしいタマネギが収穫できます。収穫のタイミングは「株元の葉が自然に枯れ始めたとき」です。葉が緑色のときはまだ成長しているため、茶色く枯れ込んでくるまで待ちましょう。葉が完全に枯れると、球根や苗が腐り始めて病気や害虫被害を受けやすくなります。
タマネギを収穫したときに玉が2つや3つに割れている場合があります。この現象は「珠割れ」と呼ばれ、苗が大きく成長しすぎているのが原因です。タマネギを苗の状態で購入する場合は、小さめの苗を選びましょう。また、収穫時期を逃すと珠割れを起こしやすくなるので、早めに収穫するのがおすすめです。
タマネギに花(ネギ坊主)が咲く場合は、収穫時期が遅れて「とう立ち」している恐れがあります。タマネギの花を観賞用として育てている場合は問題ありません。しかし、タマネギの収穫を目的としている場合は、花が咲くと味や風味が落ちるので注意しましょう。
「とう立ち」とは?
タマネギは、冬越しして春が近付くと成長期に入ります。気温が高くなり、日光をたくさん浴びると花芽が伸びてくるのが特徴です。この、花芽のついた茎が伸びる状態を「とう立ち」と呼びます。とう立ちした野菜は、栄養分が花芽の成長に取られてしまうため、本来のおいしさを味わえません。
タマネギを収穫してすぐに腐る場合は、玉の中に病原菌が入り込んでいる可能性があります。タマネギは葉が自然に枯れ始めたら収穫するのが基本です。しかし、葉が完全に枯れるまで放任で育てると、傷んだ部分から病原菌が入り、玉の内部から腐ってきます。腐ったタマネギは食べないようにすぐに処分してください。
収穫後の玉が腐っている状態ではなく、皮を剥くと黒いすすのようなものが付着している場合があります。この「すす」は保存中に黒カビ病に感染し、表面が黒カビに覆われている状態です。食べる前に水でよく洗い流せば問題なく食べられますが、発見が遅れると腐りはじめてきます。タマネギを貯蔵する場合は、吊るして風通しのよい場所で保存するとよいでしょう。
立ち枯れ病は「苗立枯病」とも呼ばれ、下葉から茶色く枯れ込んでくる病気です。立ち枯れ病は「土壌伝染性」のため、苗の株元にある用土から感染が広がっていきます。そのため、立ち枯れ病に感染した場合は、苗だけでなく用土ごと処分するのが重要です。連作によって発生率が高くなるので注意してください。
べと病は湿度の高い時期に発生しやすい病気です。感染した部分が黄色や褐色に変色するのが特徴で、放置すると腐敗がはじまり悪臭を放つようになります。感染した部分がベトベトになり、次々とほかの葉に感染していくため、早めに切り取って処分しましょう。
アザミウマは「スリップス」とも呼ばれている、アザミウマ目に分類される小さな昆虫の総称です。タマネギの葉や茎を食害するため、成長が妨げられたり枯れたりします。体長が1mm〜2mm程度しかないため発見が難しく、気がつくと大量発生している恐れのある害虫です。防虫ネットやマルチングを使用して、苗にアザミウマが寄生しないようにしましょう。
タネバエは年に5回〜6回程度発生する害虫で、幼虫は土の中に生息しているのが特徴です。タマネギの球根部分を食害し、球根の内部まで入り込んで胚芽を食べます。また、タネバエよりひと回り大きな「タマネギバエ」も同時に発生する場合が多いです。発見したらすぐに殺虫剤を散布して駆除してください。
出典:写真AC