鉢植え桜の育て方
ここからは鉢植え桜の育て方を紹介します。栽培は難しいというイメージが強い桜ですが、育て方の重要ポイントを抑え、丁寧に手入れすれば大丈夫です。植え付けや植え替え、水やりや肥料、剪定作業など、手入れする適期や作業のコツをしっかり把握して、桜を美しく育てましょう。
鉢植え桜の育て方:一年間の手入れ表
期間 | 行う作業 |
12月から2月 | 植え付けや植え替え・剪定・肥料など、開花に備えての作業は、この時期に行う。 |
3月から4月 | 桜の開花時期。 |
4月から5月 | 花後のお礼肥として、粒状化成肥料を少量与える。 |
6月から8月 | 月に2回、水やりの際に、薄めに希釈した液体肥料を与える。 |
8月下旬から9月上旬 | 根の活動が活発化する時期なので、油かすと骨粉を混ぜた固形肥料を与える。 |
12月から2月 | 早咲き品種は12月、通常の品種は1月から2月に植え付け・植え替えをする。なお、植え替えは最低でも4年以内に行う。 |
上の表は、鉢植え桜の一年間のおおまかな手入れ作業のスケジュールを表したものです。ただし、品種や栽培している地域、桜の生育状態、その年の気候条件などによって、開花時期や手入れ作業の適期にズレが生じる場合があります。この表は、あくまでも手入れ作業の目安として考えてください。
育て方と手入れのポイント
ここでは植え替えや剪定など、鉢植え桜の育て方の重要ポイントとなる作業について、詳しく紹介します。手入れの仕方やコツ、作業の適期などをしっかりと把握し、桜への愛情をこめて、丁寧に行いましょう。
手入れのポイント①植え付けと植え替え
植え付け・植え替えの適期は?
鉢植え桜の育て方の重要ポイントとして、真っ先にあげられるのが植え付け・植え替え作業です。桜の植え付け・植え替えの適期は12月から2月上旬とされていますが、品種によって少し時期が異なります。早咲きの品種の植え付け・植え替えの適期は12月、春に咲く桜の品種は1月下旬から2月上旬です。早咲きの桜は12月を過ぎてしまうと、花が小さくなってしまうので注意しましょう。
植え付ける際の鉢の大きさは?
植え付ける際の鉢の大きさは、苗木よりも一回りか二回りほど大きなサイズが適しています。小さ過ぎるとすぐに根詰まりを起こすし、大き過ぎると根腐れを起こしやすくなります。根鉢は軽く解す程度にとどめ、古い土を3分の1ほど落としてから、新しい鉢に植え付けてください。植え付けたばかりの苗木は倒れやすいので、根が生長して安定するまでは、支柱を立てておきます。
植え替えの頻度は?
桜はデリケートな植物なので、植え替えの際には、できるだけ根鉢を崩さないようにするのがベストです。根が回らないうちに植え替えましょう。鉢のサイズで植え替えの頻度が異なります。6号から7号鉢なら隔年、8号以上の大きなサイズなら、3年に1度の頻度でOKです。ただし、鉢底から根が出ていたら、年数に関係なく植え替えてください。
手入れのポイント②土・用土
桜が好む土は?
鉢植え桜の育て方のポイントその2は、土・用土です。桜は水はけも水もちも良く、栄養分豊富な土壌を好みます。鉢植え用の土の場合は、赤玉土(小粒)に鹿沼土(小粒)や川砂、腐葉土を混ぜた用土を使用します。配合率は赤玉土(小粒)4:鹿沼土(小粒)2:川砂1:腐葉土3です。植え付ける時、鉢底に赤玉土(中粒)を敷いておくと水はけがよくなります。土の配合が面倒な場合は、市販の培養土でもOKです。
植え替える際の注意点
植え替えの際、新しい用土に肥料を入れるのはNGです。肥料が直接根に触れてしまうので、根を傷めてしまいます。肥料を与えるのは根が新しい用土になじみ、芽が動き出してからです。
手入れのポイント③肥料
肥料は適期を選んで与える
鉢植え桜の手入れと育て方のポイントその3は、肥料の与え方です。桜は栄養分の多い環境を好むので、肥料は適期にしっかり与えるのが基本となります。まずは植え付け・植え替え時です。適期は1月下旬から2月中旬頃ですが、植え付けてすぐには与えず、根が落ち着くのを待ってから与えます。油粕と骨粉を配合した固形肥料がおすすめです。
花後の肥料は?
植物は花を咲かせる際、多大なエネルギーを消費します。そこで花が咲き終わった後、肥料を与えて体力を回復させます。桜の場合は4月頃が適期です。疲労回復のためなので、有機肥料よりも効き目が早い粒状化成肥料を少量与えます。
夏バテ防止の施肥
桜は基本的に耐暑性がある植物ですが、それでも夏バテすることがあります。夏バテ対策として、6月から8月中旬は水やりの代わりに、2000倍に希釈した液体肥料を与えましょう。頻度は月2回ほどでOKです。桜は耐暑性が弱い品種もあるので、気温が高くなってきたら、樹勢をよく見ておくことをおすすめします。
晩秋の追肥
桜は秋にさしかかると、根の活動が盛んになります。この時に肥料を与えておくと、生長が促され、来年さらに良い花をつけるための活力が増します。油粕と骨粉を混ぜた固形肥料を与えておきましょう。適期は8月下旬から9月上旬です。
手入れのポイント④水やり
基本的には朝、表面の土が乾いた時に行う
鉢植え桜の手入れと育て方のポイントその4は、水やりです。必ず朝に行いましょう。表面の土が乾いていたら鉢底から水が出るくらい、たっぷりと与えます。特に夏場は水切れしないよう注意しましょう。朝に水やりをしても、夕方に土が乾いていたなら、水を与えてください。逆にあまり水分を必要としない冬場は、水のやり過ぎにならないように注意しましょう。
手入れのポイント⑤剪定
弱剪定が基本
鉢植え桜の手入れと育て方のポイントその5は剪定です。桜は「桜切るバカ」という言葉があるほど、剪定に弱いことで知られています。剪定した切り口から雨水や雑菌が侵入したのが原因で、腐ったり枯れたりすることも珍しくありません。そのため太い枝を切ったり、深く切り詰めたりする強剪定は行わず、不要な細枝や、地表近くから生えてくるひこばえを取り除くなど、弱めの剪定にとどめるのが基本です。
剪定の適期は?
桜の剪定の適期は12月から3月上旬です。前述したように強剪定は基本NGなので、太枝を切らなくて済むように、株が小さいうちから自然な樹形に整えていきましょう。剪定後の切り口には必ず癒合剤を塗って、切り口を保護することを忘れないでください。
手入れのポイント⑥病害虫
観察と定期的な薬剤散布が重要
鉢植え桜の手入れと育て方のポイントその6は、病害虫対策です。桜は病気に弱く害虫もつきやすいため、徹底した観察や定期的な薬剤散布が欠かせません。薬剤は種類によって対応できる病気や害虫が異なるので、取扱説明書をよく読み、書かれている用途・容量を守って使用しましょう。また、同じ薬剤をずっと使い続けていると、耐性がついて効きづらくなってしまうので、2、3種類をローテーションで使っていくのが基本です。
作業時は手袋やマスク、長袖の服を着用する
もう1つの注意点として、病害虫の確認作業の際には、必ず手袋やマスクを着用することがあげられます。桜は害虫がつきやすい植物ですが、その中でも特に、アブラムシやケムシがつきやすいと言われています。ケムシの中には毒性があって、触れると湿疹などの症状を引き起こす危険な虫もいるので、素手で作業をするのは危険です。服も肌を露出しない物を選びましょう。
番外:鉢植え向きでない品種の手入れと育て方
ソメイヨシノは鉢植えに向かない?
育ててみたいけれど、鉢植えには向かない品種もあります。桜の中でも最も有名な品種であるソメイヨシノはその好例でしょう。理由は元々の樹高が高めである上に生長も早く、すぐに大きくなってしまうことと、病害虫に弱いことです。また、近年では病気に弱い性質や寿命の問題からソメイヨシノの苗木の配布や販売が中止されたため、今後は苗木の入手も難しくなると言われています。
植え替えを丁寧に行う
ソメイヨシノのように鉢植えに向かない品種を育てる場合は、かなり注意点が増えます。まずは植え替え作業です。ソメイヨシノは生長が早いので、大きな鉢で育てることが必要になります。ですが、いきなり苗木を大きな鉢に植えてもうまく育ちません。植え替えの適期に、苗木の生長に合わせて、鉢を少しずつ大きくしていきます。
剪定や病害虫対策を入念に行う
ソメイヨシノは桜の中でも、特にデリケートな品種です。剪定作業と病害虫対策は、鉢植え向きの品種以上に注意して行います。強剪定を避けるために、細い不要な枝や病気にかかった枝を丁寧に取り除き、株が小さいうちから樹形を整えましょう。病害虫対策は、定期的な薬剤散布による予防に加えて、普段から株をしっかり観察し、病害虫の早期発見・早期治療および駆除に努めます。
まとめ
枝を大きく広げ、空間を桜色に染める勢いで花を咲かせる大きな桜は素晴らしいですが、小さいながらも株いっぱいに花をつける鉢植え桜には、また別の美しさがあります。何よりも「自分が手間をかけて、ここまで育て上げた」という達成感は、何物にも代えがたいものでしょう。愛情をこめて育て上げた鉢植え桜の花を、存分にお楽しみください。
写真:ヒカンザクラ