胡椒の栽培のようす
つる性の胡椒の木
ここで、原産地であるインドでの一般的な胡椒の栽培のようすを合わせてご紹介しておきます。
等間隔にたてられた支柱のまわりに定植されて成長した胡椒の木です。つる性の特性で支柱に絡みついていますね。本来であれば、胡椒はつるを長く伸ばさないと花もつけず結実しない植物なのです。収穫量は7~8年目あたりに最も増え、最終的には20年近くまで実の収穫をすることができます。
胡椒の花
クリーム色の穂に小さく咲いているのが胡椒の花です。こちらはつる性の一般的な胡椒の画像ですが、つるにならない矮性タイプのドワーフグリーンペッパーも同じ形状の花を咲かせます。花は小さく2mm程度で、花穂が10~20㎝ほどに垂れ下がる形状なります。花が終わると付け根がふくらみ、胡椒の粒となります。
胡椒の実
結実した胡椒の実は穂状花序(すいじょうかじょ)(花軸に柄のない花が穂状になって並ぶこと)の穂にぶどうのように実ります。一つの穂には50粒ほどの実がついています。成熟した1本のつるからは、乾燥後で2㎏の実が収穫可能といわれています。実は乾燥させると鮮やかなグリーンが黒っぽくくすんだような色に変化していきます。
収穫
無事に収穫をむかえた胡椒の実は、ここから4つのルートに分かれて名称が変わります。店頭に置かれているブラックペッパー、ホワイトペッパーといった名称の瓶をごぞんじですよね。これらは違う品種の胡椒ではなく、加工の仕方によって風味を変えているのです。
胡椒の種類
胡椒の4つの名称
胡椒には4種類の呼び名がありますが、どれも元は同じもので、収穫の時期と乾燥の処理の仕方が違っているだけです。今回は『ドワーフグリーンペッパー』を取り上げてご紹介しましたが、矮性タイプの商品名であり、長時間かけてじっくり乾燥させればブラックペッパーになると考えてよいでしょう。グリーンペッパーは鮮度を保ちながらの輸入が困難な為、生の状態ではあまり出回っていません。ですので日本で栽培できれば大変な希少種となります。ぜひ生の胡椒を味わってみてください。
黒胡椒【ブラックペッパー】 | 熟す前の実を収穫後、長時間乾燥 |
青胡椒【グリーンペッパー】 | 熟す前の実を収穫後、短時間乾燥または塩漬けしたもの |
白胡椒【ホワイトペッパー】 | 完熟後に収穫、乾燥させた後、水に浸けて外皮を剥いたもの |
赤胡椒【ピンクペッパー】 | 完熟後に収穫、乾燥させたもの |
間違えないでください!科も属性も違う【胡椒の木】
学名 | Daphne kiusiana |
属性 | ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属 |
分類 | 常緑小低木 |
樹高 | 1m |
耐寒暑性 | 耐暑性:強い 耐寒性:弱い |
植物には紛らわしい名前が多いのですが、この『胡椒の木』もその一つでしょう。花を見ればお分かりと思いますが、ジンチョウゲ科の全くの別品種です。遠目には白い沈丁花のように見えますね。名前の由来は実が胡椒のように辛いことからですが、そのほかの共通点は寒冷地では育たないことぐらいでしょうか。ここまで『胡椒の木』と言い切っておきながら全くの別種というのも痛快ですね。胡椒の苗木をお求めの際にはお間違えなく。
まとめ
食生活になじみのある胡椒ですが、その栽培は思った以上にむずかしいものでしたね。こうして考えてみると、植物が自分にあった環境を選んで生育していることがよくわかります。もしかしたら環境に合わせて植物自体が進化した部分もあったかもしれませんね。植物にあった環境を考えるよい機会になったのではないでしょうか。それにしても胡椒の名称が収穫後の処理の仕方で変わるというのは、お茶みたいでおもしろいですね。
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