直播による水稲栽培とは?湛水直播と乾田直播の特徴・やり方を解説!

直播による水稲栽培とは?湛水直播と乾田直播の特徴・やり方を解説!

直播は地面に直接種をまいて育てる栽培方法です。苗から育てることが多い水稲でも直播の栽培方法があり、作業時間の短縮や省力化の効果があることから少しずつ取り組む人がふえています。この記事では、水稲直播栽培のやり方や特徴について解説していきます。

記事の目次

  1. 1.水稲の直播栽培ってなに?
  2. 2.水稲の播種方法
  3. 3.水稲直播栽培のメリット
  4. 4.直播栽培のデメリット
  5. 5.水稲直播栽培のポイント
  6. 6.地域ごとにやり方が異なる水稲直播栽培

水稲の直播栽培ってなに?

田植え

出典:写真AC

直播栽培とは「ちょくはんさいばい」や「じきまきさいばい」と読み、畑や田に直接種をまく栽培方法です。対義になる栽培方法は移植栽培といい、ポットや苗代で発芽育苗した株を植え付ける方法です。米づくりでは苗を泥に植え付ける田植え(移植栽培)が一般的ですが、直播をおこなう栽培方法もあります。

古代の水稲栽培は直播栽培

縄文時代に米栽培が伝来したあと弥生時代までは直播栽培がおこなわれており、種もみを田にまいていました。しかし、雨が続くと種が流されること多く生育が安定しません。そのため、田の一角で種もみから苗を育てる「苗代」が誕生し、奈良時代には直播栽培から移植栽培に完全に切り替わったとされています。

水稲の播種方法

田植え

出典:写真AC

田んぼに稲を植える手法は、移植と直播の種類以外にも苗の密度、株の並べ方、田んぼの耕し方などのバリエーションを加えると多数存在します。ここでは、苗を使うのか種子を使うのか、植えるタイミングに水が張っているのか乾いているのかに絞り、それぞれを組みあわせた手法について解説します。

移植栽培

田植

出典:写真AC

移植栽培は一般的な田植えのことを指し、水を張った田んぼに苗を植える栽培方法です。大きい苗を植え付けるため水に流されにくく生育率が安定します。また、場所ごとの生育差が出にくいことから、収穫時期が揃いやすいです。移植栽培は安定した米づくりができるため、古代から近年まで日本全国でおこなわれていた栽培方法です。

ボタニ子

ボタニ子

一般人が「田植え」と聞いてイメージするのが、このやり方ではないかしら?

移植栽培のスケジュール

移植栽培

出典:筆者作成資料

移植栽培は、田植えに使う苗づくりから始まります。また、田んぼに水を張る必要があるため代かき(しろかき)作業をして、水が抜けにくくする必要があります。その後は、田植えによって苗を移植しますが、この作業は田植え機が発明されるまで村人総出でおこなう多くの人手がいるものでした。

ボタニ子

ボタニ子

田植機で作業するにも機械に苗箱を設置したりと2人以上でやることが多いね。

コシヒカリの育て方!種まき・田植えから収穫まで大まかな流れを解説!のイメージ
コシヒカリの育て方!種まき・田植えから収穫まで大まかな流れを解説!
美味しいお米といえば新潟県産コシヒカリといわれるぐらいコシヒカリは有名なお米です。しかし、その育て方は実際に携わっていないと知ることはないでしょう。この記事では、多くの日本人が食べているコシヒカリの育て方について、一連の栽培の流れをわかりやすく解説します。

移植栽培まとめ

  • 日本中どこでもおこなわれている栽培方法
  • 苗を育てて水が張っている状態で植え付けをおこなう
  • 田植え作業までは人手と時間がかかる

湛水直播(たんすいじきまき)栽培

湛水直播

出典:写真AC

湛水直播栽培は(たんすいじきまき)と読み、水がある状態の田に種をまく栽培方法です。かつては、このようなまき方をすると発芽不良がおきたり、苗が浮いたりして効率が悪かったのですが、近年の農業関係者の技術開発により直播栽培が可能になりました。

湛水直播栽培を可能とした技術

湛水直播栽培では種もみが発芽できるよう、種子を資材でコーティングします。種もみの発芽には酸素が必要で、少しでも泥に埋まると発芽しません。そのため、泥の中で酸素を供給するカルパー剤(酸素発生剤)を種もみの表面にまぶします。また、別の資材に種子の重さを増やし根を抜けにくくする鉄コーティング種子があります。

湛水直播栽培のスケジュール

湛水直播栽培

出典:筆者作成資料

湛水直播栽培は田んぼに水を張った状態で種もみをまくため、移植栽培の作業工程と似ています。異なる点としては、苗作りの作業がなくなり種子のコーティング作業が追加された点です。また、はじめの水管理では種まき後に発芽促進のため、播種後に落水(田んぼの水を抜く)をおこない土中に酸素を供給します。

湛水直播栽培まとめ

  • 種にコーティング資材を塗布して播種する栽培方法
  • 種を水が張られた田にまく
  • 苗運びの必要がなくなるため省力的に田植えが可能

乾田直播(かんでんじきまき)栽培

乾田直播は水を貯めていない田に種もみをまく栽培方法です。水田で畑と同じ育て方がおこなわれないのは、まいた種が鳥に食べられたり雑草の駆除が大変だったりすることが原因です。このため、古代より生育が安定する移植栽培が一般的でしたが、近年の畑作用農業機械の普及や除草剤の進化によって、乾田直播の取組面積が拡大しています。

乾田直播栽培を可能にする技術

乾田直播栽培では、代かきをせずに地面を平らにする技術と高速で土の中に種を落とす技術によって可能となりました。海外の大規模畑作地帯で用いられていた農業機械が日本の稲作に流用されたことで普及しました。また、一定の時間経過とともに肥料成分が溶出し始める肥料(緩効性肥料)が安価に入手できるようになったことも普及に関係しています。

乾田直播栽培のスケジュール

乾田直播栽培

出典:筆者作成資料

水を張らずに種もみをまく乾田直播栽培は湛水直播栽培以上に作業が省略されており、代かき作業も行いません。一方で、雑草を駆除しやすくするために、土を平らにする整地作業に早い時期から取り組む必要があります。さらに種もみをまいた後は、段階的に高さを調整する水管理や生育ステージに合わせた除草剤散布の作業が必要です。

乾田直播栽培まとめ

  • 畑作用の機械を使って大規模に米作りをする栽培方法
  • 種もみを水が張っていない田にまく
  • 移植栽培の多くの作業を省略できる
ボタニ子

ボタニ子

ちなみに水を張らない状態の田に苗を移植する栽培方法では稲が育たたないよ。

次のページ

水稲直播栽培のメリット

関連記事

Article Ranking