ホップとは
ホップはアサ科カラハナソウ属のつる性多年草(宿根草)です。もともとはクワ科に分類されていましたが、葉柄や種子の特徴からアサ科に移されました。和名はセイヨウカラハナソウ(西洋唐花草)といいます。同じ種類で日本に自生するカラハナソウによく似ており、外国から来たのでセイヨウカラハナソウ(西洋唐花草)と名づけられたのです。
ビールの香りや苦味に欠かせない
ホップが初めてビールの原料として使われたのは、12世紀初頭のビンゲン修道院でのことでした。最初は、ホップを加えて作ったビールが腐りにくく保存性がよいという特徴が評価され、14世紀以降に定着していったのです。その後、ホップが生み出す特徴的な苦味や香り、泡もちのよさが注目され、ビールにとって欠かせないものとなっていきました。
ホップの種類
ホップは世界で100種類以上も栽培されています。大きく分けると3種類に分類され、「ファインアロマホップ」「アロマホップ」「ビターホップ」です。ファインアロマホップは香りも苦みも穏やかで、上品な味わいを生み出します。ファインアロマホップに比べて香りが強い種類がアロマホップ、苦みが強い種類がビターホップです。この3種類に属さない個性的ホップも登場しています。
在来種のカラハナソウはビールになる?
日本在来のカラハナソウはホップと同じ種類に属し、見た目が似ているので山ホップと呼ばれます。しかし香りや苦味がホップより弱く、ビール醸造には使われません。北海道にしか自生しないホップに比べて暑さに強い特徴があり、本州でも自生します。
ホップの特徴
ホップは黒海とカスピ海に挟まれたコーカサス(カフカス)地方原産とされ、冷涼な気候の地域に自生しています。日本での栽培は明治時代の初め頃に北海道で始まりました。日本のホップ生産量トップ3が岩手、秋田、山形であることからも、冬に強く涼しい気候に適した植物であることがわかります。その他のホップの特徴を見ていきましょう。
植物としての特徴
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— KAZ (@kaz_s800M) June 12, 2017
ホップは宿根草で、冬は地上部が枯れて根が残ります。秋には根元に来年の芽ができており、芽を出す時期は5月初旬です。つるは1日に30cmも伸び、夏までに6~12mに育ちます。つるは左巻きで、手のひら大の葉は対生です。分裂しないハート形の葉も混在しますが、葉の多くは3裂します。つると葉には「登はん毛」と呼ばれるとげのように痛い粗毛が生えているのも特徴です。
開花時期は7~9月
開花時期は7~9月です。雌花は画像のように40~60個の雌花が集まって、小さな線香花火のような形を作ります。ホップの雌花は雄花の花粉がなくても変化、成長するのが特徴です(後述)。一つひとつの雌花を抱いている苞葉(ほうよう)の部分が育って重なり合い、マツボックリのような房になります。これが毬花(きゅうか、まりはな)です。
毬花のルプリンが香りや苦みの決め手
夏が最盛期の #ホップ はビールに欠かせない大事な素材。
— 杉山雅一「伊豆の酒屋 杉山商店」笑顔の乾杯のお手伝い (@sugichanz) August 17, 2018
半分に割るとひときわ華やかな芳香を放つ。この独特の香りは、花粉のように見える黄色い #ルプリン の中にある成分に由来する。
ビールを飲んだ時に、華やかな果実のような香りがしたら、このルプリンの仕業だなと思ってね!
7月の収穫体験より pic.twitter.com/11PcnXEx0z
ホップの毬花は、「花」という字がついても花の状態ではなく、果実のように見えても未授精で種もない、とても中途半端な状態です。毬花の苞葉のつけ根には、画像のように半透明の黄色の微粒子があります。これはルプリン(ルプリン腺)と呼ばれ、香りや苦味の元になる物質を含む組織です。毬花はつるの先のほうに多くつき、1本のつるに数千個つくこともあります。
ホップは雌しか栽培されない?
ホップの毬花は受粉をしなくても成長すると前述しましたが、どういうことなのでしょうか。ホップは雌雄異株です。雄株は小さな雄花が20~100個集まった円錐花序をつけるといいます。しかし栽培されるホップは雌株のみで、雄株は淘汰されてしまうのです。苗も雌株しか流通しません。
受粉するとビールに使えない
ホップの雌花は受粉するとルプリンの芳香が消失し、ビール製造に使えなくなってしまいます。雄花自体もビールの原料にはなりません。ゆえにホップ畑に雄株は侵入禁止なのです。通常の雌花は授精しないと枯れるだけですが、ホップの雌花は毬花という形に成長し役立つ点で不思議な植物といえます。
花言葉
ホップの花言葉にはポジティブな言葉とネガティブな言葉があります。ポジティブな花言葉は「希望」「天真爛漫」です。「希望」という花言葉は、ホップがhope(希望)と発音が似ているからだという説があります。「天真爛漫」の花言葉は、ビールを飲むと爽やかで楽しい気持ちになるからでしょう。
ネガティブな花言葉もある
ネガティブな花言葉は「不公平」「不正」「不法」です。雌株だけが重要視されて雄株は虐げられることから、「不公平」という花言葉が生まれたとされます。「不正」「不法」という花言葉は、密造酒を連想させることからきているのかもしれません。
ボタ爺
ホップとは面白い植物じゃな。しかし苗はどうやって入手すればよいのかのう?次項ではホップの植え方を解説するぞい。
出典:写真AC