淡墨桜とは
淡墨桜(うすずみざくら)とは、岐阜県本巣市にある根尾谷の淡墨公園にある桜の木です。推定樹齢1500年以上という驚異的な長寿の桜で、大正時代に国の天然記念物に指定されました。この桜がある淡墨公園は岐阜県本巣市の観光名所の一つです。公園内に建てられている「さくら資料館」には、淡墨桜に関する資料が展示されています。
淡墨桜は「淡墨の桜」と呼ばれ、長年愛されてきました。春の季節になると、淡墨の桜の周辺は多くの観光客でにぎわっているんですよ。
岐阜県本巣市の樽見鉄道(たるみてつどう)は花見客のために、淡墨桜の見頃の時期は特別ダイヤで運行しているんだ。
基本情報
所在地 | 岐阜県本巣市根尾谷板所995 |
電話番号 | 0581-34-3988(本巣市観光協会) |
駐車場 | 大型バス:30台 普通乗用車:700台 |
アクセス情報
- 樽見鉄道樽見駅から徒歩で約15分
- 東海環状自動車道大野神戸ICから車で約40分
- 東海環状自動車道山県ICから車で約40分
- 名神高速道路羽島ICから車で約70分
日本を代表する桜
淡墨桜は「日本五大桜」「三大巨桜」の両方に選ばれています。「日本五大桜」とは、国の天然記念物に指定されている5本の桜の古木の総称です。岐阜県本巣市の根尾谷淡墨桜のほか、福島県田村郡の三春滝桜、埼玉県北本市の石戸蒲桜、山梨県北杜市の山高神代桜、静岡県富士宮市の狩宿の下馬桜があります。「三大巨桜」は、このうちの三春滝桜、山高神代桜、根尾谷淡墨桜の3本を指す総称です。
淡墨桜の子孫
淡墨桜の子孫樹は、岐阜県のほか愛知県や栃木県、茨城県など、多くの地域に植えられています。ほとんどが旧根尾村や本巣市からの寄贈によるものです。栃木県下野市の「天平の丘公園」には、淡墨桜のほか、三春滝桜、山高神代桜と、「三大巨桜」すべての子孫樹が植えられています。
淡墨桜の歴史
天皇が植えた桜
淡墨桜には「天皇お手植えの桜」という伝説があります。467年(雄略天皇11年)に継体天皇が都へ上る際、宣化天皇(継体天皇の第二子)の産屋跡に桜の苗木を植えられました。この苗木が淡墨桜であるといわれています。もちろん、これはあくまでも伝説ですが、淡墨桜の驚異的長寿と満開時の神秘的な姿は「天皇お手植えの桜」という伝説が生まれても不思議ではないでしょう。
ちなみに継体天皇は第26代目、宣化天皇は第28代目の天皇です。
台風による被害
淡墨桜は推定樹齢1500年余りという、長い歴史を生きた桜です。このため過去には、大きな被害を受けたこともありました。たとえば1959年(昭和34年)に日本に上陸し全国に被害を与えた伊勢湾台風も、淡墨桜に大きな被害を与えています。のちにこの地を訪れた小説家の宇野千代が、淡墨桜のあまりの惨状を憂い、雑誌「太陽」に寄稿した話も有名です。
淡墨桜は伊勢湾台風のほかにも、幹の老化や大雪などによるダメージなどで、何度も危機にさらされているんだ。
地元民による保護
淡墨桜が現在も生存しているのは、樹木医の適切な再生策や、地元の人々の手厚い保護のおかげです。淡墨桜は幹の老化によるダメージも進んでおり、1948年(昭和23年)には、文部省(現・文部科学省)の調査で「3年以内に枯死する」と判断されたこともありました。しかし後に施された再生処置で1950年(昭和25年)の春の季節に無事開花し、再生が確認されています。
淡墨桜は伊勢湾台風によって深刻な被害を受けた後も、支柱を増やすなどの地元民の保存活動に支えられてきました。
宇宙にも行った桜
2008年(平成20年)国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」にて、無重力状態が植物の発育にどのような影響を与えるかの実験が行われました。この実験に使用された14種類約200粒の花の種のなかに、淡墨桜も含まれています。なお、この実験で発芽した種から成長した桜は「宇宙桜(そらざくら)」と呼ばれるようになりました。
宇宙桜は、山梨県北杜市の大津山実相寺で公開されているよ。
淡墨桜の魅力
魅力①見応え抜群の巨木
淡墨桜の最大の魅力は、何といっても早々お目にかかれないほどの巨木であることです。樹高16.3m、幹周囲9.9m、枝張り東西26.90m、南北20.20mという巨大な樹木は桜以外でもなかなか見られません。淡墨桜の最高の見せ場は春の季節の満開時ですが、それ以外の季節でも十分に見応えがありますよ。春の季節の満開の花姿は圧巻ですが、緑の葉を茂らせる夏の季節も見事です。
桜の長命種
淡墨桜はエドヒガン桜(江戸彼岸桜)という桜の基本野生種です。エドヒガン桜は成長が遅いかわりに、固くて丈夫な幹と腐りにくい性質を持つため、桜の種類のなかではもっとも長寿で、巨木に育ちやすいといわれています。実際に淡墨桜以上の長寿を誇る山高神代桜(樹齢約2000年)もエドヒガン桜です。もともと長命種であることと、地元の人たちによる手厚い保護が、淡墨桜の長寿でいられた理由でしょう。
魅力②絶妙な花色
淡墨桜には、咲き進むごとに花色が変わるという特徴があります。つぼみのときは淡いピンク色ですが、花が開いていく過程で薄くなり、満開時は白色です。さらに散るときは淡い墨色に変わります。この散り際の花色が名前の由来です。この絶妙な花色も、淡墨桜の大きな魅力となっています。
淡墨桜の開花・見頃の時期
淡墨桜の開花時期は4月上旬~4月中旬です。咲き進むごとに花色が変わるため、咲き始め~散り際までのすべての時期が見頃といえます。余裕があれば薄ピンク~白~淡い墨色と、変わりゆく花色をじっくり楽しみたいですね。ただし開花時期は、その年の気候によってズレることがあります。事前に公式サイトなどで開花状況をチェックしておきましょう。
まとめ
淡墨桜は1500年以上を生きる神秘の桜です。桜といえば繊細ではかないイメージが強いため、1000年以上も生きる桜があることに驚くかたもいるでしょう。機会があれば、ぜひ長寿の桜ならではの圧倒的存在感を体感してみてくださいね。
出典:写真AC