「炭疽病」とは?病気の概要と予防・対策方法や使える薬剤を紹介!

「炭疽病」とは?病気の概要と予防・対策方法や使える薬剤を紹介!

炭疽病は、いったん発生すると広範囲に広がりやすく、植物に深刻なダメージを与える病気です。炭疽病が発生する条件や時期を知って適切な予防をすることで、発生しにくい環境をつくれます。炭疽病に効果のある薬剤も参考に、対策に役立ててください。

記事の目次

  1. 1.炭疽病とは?
  2. 2.炭疽病の要因
  3. 3.炭疽病の予防と対策方法
  4. 4.炭疽病におすすめの薬剤3選
  5. 5.炭疽病をしっかり予防し元気な植物を育てよう

炭疽病とは?

出典:写真AC

炭疽病とは、糸状菌とよばれるカビによって引き起こされる植物の病気のことです。葉や茎など部位を選ばずどこにでも発生し、一度発生すると対策を取らない限り広がり続けます。手遅れになると植物が枯れてしまう要因となる、厄介な病気のひとつといえるでしょう。

炭疽病の症状

初期症状

初期の炭疽病は、植物の表面に灰色~黒褐色のアザのような病斑が発生します。病斑の中心部分にサーモンピンク色の斑点が現れたり、黒い粒がみられたりする症状もあります。また、株元が黒く変色し、全体的に元気がないようなときも炭疽病を疑ったほうがよいでしょう。茎や枝などには細長いだ円形のような形で発症がするのも特徴です。

病気が進行すると

炭疽病の症状が進行すると、病斑の中心部分が灰褐色に変色し、病斑同士が融合してさらに大きな病斑になります。そのため、葉や茎の表面には枯れ落ちたように穴が開いてみすぼらしい見た目になってしまいます。また、発生した部位から上部は生育が難しくなるため、株元が病気にかかってしまうと株全体の枯れに繋がりかねません。果実や野菜の被害はさらに深刻で、病斑部分がくぼんで腐り落ち収穫量に影響します。

炭疽病にかかりやすい果実や野菜

炭疽病はどの植物にも発生しやすい病気です。その中でも特にかかりやすい野菜や果実があります。一度発生するとほかの植物にも感染し、被害が大きくなりやすいので対象の植物を育てるときは注意しましょう。

炭疽病にかかりやすい草花

Photo bymatthiasboeckel

炭疽病にかかりやすい草花は、シクラメン、コスモス、ベゴニア、シンビジウム、トルコギキョウなどです。特にシクラメンは発生しやすく、つぼみや花びらが黒く枯死してしまうため注意してください。草花が炭疽病にかかると見た目が悪くなり観賞価値が下がります。定期的に様子をチェックし、症状が出ていないか気を配りましょう。

炭疽病にかかりやすい野菜

Photo bymonika1607

炭疽病にかかりやすい野菜は、キュウリやエンドウマメ、カブ、ニラ、白菜などです。また、イチゴも発症しやすく、株元であるクラウン部分に炭疽病が発生すると株全体が枯れてしまいます。野菜類が炭疽病にかかると収穫量に直結するため、被害が甚大になりかねません。葉の混みあった部分や株元なども日頃から注意して観察することが大切です。

炭疽病にかかりやすい果実

フリー写真素材ぱくたそ

炭疽病にかかりやすい果実に、カキ、リンゴ、マンゴー、ナシ、コーヒーなどがあげられます。特徴的なのがカキの被害です。通常の炭疽病では病斑が灰褐色になりますが、カキが炭疽病にかかると病斑部分が黒く変化します。その後果実が急速に熟し落果してしまうため、甚大な被害にあいやすくなります。

炭疽病の要因

Photo byHeungSoon

炭疽病の要因は糸状菌と呼ばれるカビの繁殖です。糸状菌は気温が20℃前後になると胞子を作り始めます。湿度と気温が高い時期に発生しやすいため、梅雨時期は特に注意しましょう。28℃まで気温が上がると胞子を作る動きが活発になり、感染リスクが最大化します。

炭疽病の二次感染

炭疽病に感染した植物の病斑には、胞子の塊があります。水やりや風雨の影響で刺激が加わると胞子の塊から胞子が飛び散り、さらに周囲に感染が広がり二次感染を引き起こします。炭疽病は発生したら対策を取らない限り広がり続ける恐ろしい病気といえるでしょう。

炭疽病の予防と対策方法

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炭疽病の予防には、要因である糸状菌の増殖を減らす対策が効果的です。そのためには湿度や温度の管理が大切なポイントといえるでしょう。また、発生してしまったら即座に対策を取れば被害を最小に抑えることも可能ですよ。

炭疽病の予防法

予防法①水はけをよくする

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糸状菌は湿度が高いと活発になるため、湿度を上げないような対策が効果的です。用土は腐葉土やパーライト、ヤシガラなどを混ぜ込んだ水はけのよいものを利用しましょう。地植えの場合は畝を高くするのも効果的です。

予防法②風通しをよくする

フリー写真素材ぱくたそ

植物の栽培場所を風通しのよい場所にすることも、糸状菌の発生予防には効果的です。また、こまめに剪定や間引きをして、葉や枝が生い茂らないように注意しましょう。枯れた枝や傷んでいる葉は、用土に落ちると腐りやすく、糸状菌の温床になるため早めに取り除いてください。

予防法③水やりの仕方を工夫する

Photo byMonikas_Wunderwelt

炭疽病は水やりのときに跳ね上がった水で感染が広がります。植物がすでに病気にかかっている場合は被害が広がってしまうため、株元に水やりをしましょう。また、ポリマルチを使って泥はねを予防するのも効果的です。

炭疽病の対策法

対策法①発症した部位をすべて取り除く

Photo byCarlottaSilvestrini

炭疽病を発症した場合は、すぐに感染した部位を取り除きましょう。放置するとどんどん広がり、ほかの植物にも感染します。一部分だけに病斑がみられる場合は、その部分を切り取り燃やして処分しましょう。切り取った部位を用土の上に放置すると、そこからまた菌が繁殖します。燃やすのが難しい場合はビニール袋に入れて家のゴミ箱に捨ててください。株全体に発生したら株ごと処分し、可能なら土もすべて取り換えましょう。

対策法②前作で発症した植物の処分

Photo byEfraimstochter

糸状菌は発生した植物の茎や葉に潜み、越冬します。そのため、一度発生してしまった植物には糸状菌が潜んでいる可能性が非常に高いです。前作で炭疽病を発症した植物があった場合は、用土の上に残しておかずに処理しましょう。燃やして処分する方法が確実ですが、難しい場合は用土深くに埋め込むか、可燃ゴミとして処分してください。

対策法③薬剤の散布

Photo byMimzy

炭疽病の被害が拡大してしまった場合や、念には念を入れたい場合は、薬剤を散布しましょう。発生を予防する薬剤もあるため、定期的に散布すると効果的です。薬剤を使用するときは、育てている植物が薬剤の対象となっているかを必ず確認してから散布してください。また、同じ種類の薬剤を使用し続けると糸状菌に耐性がついてしまうことがあります。さまざまな薬剤をローテーションで散布しましょう。

炭疽病におすすめの薬剤3選

おすすめ①モスピラン・トップジンMスプレー(住友化学園芸)

モスピラン・トップジンMスプレー

参考価格: 736円

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モスピラン・トップジンMスプレーは、スプレータイプで散布できる殺菌剤です。炭疽病だけではなくうどんこ病や黒星病などの病気や、アブラムシなどの害虫対策にも効果があります。ひとつあると重宝するでしょう。希釈をせずに使えるため手間もかかりません。しかし強力な効果で、連続使用すると薬害が生じる可能性があります。どの植物にも使用は可能ですが、キュウリは徒長苗になる可能性があるため避けたほうが無難でしょう。

手軽さ★★★★★
効果★★★★★
容量420mL
備考キュウリには向かない

おすすめ②アントラコール顆粒水和剤(バイエルクロップサイエンス)

アントラコール顆粒水和剤

参考価格: 1,322円

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アントラコール顆粒水和剤は、リンゴやスイカ、イチゴなどの果実の炭疽病予防に効果を発揮する薬剤です。炭疽病以外にも、つる枯病や黒星病などにも効果があります。果樹を育てている場合に重宝するでしょう。顆粒で計量しやすく、調整のときに粉立ちが起こりにくいのも嬉しいポイントです。薬剤を誤って吸入しにくいため、安心して使用できますよ。

手軽さ★★★☆☆
効果★★★★★
容量500g
備考イチゴは育苗時に使用すること

おすすめ③ゲッター水和剤(住友化学)

ゲッター水和剤

参考価格: 2,904円

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ゲッター水和剤は、キュウリやスイカ、カキなどのさまざまな植物に対応可能な薬剤です。予防効果と治療効果をあわせ持ち、ひとつあれば炭疽病予防と対策どちらにも対応可能ですよ。水和剤のため、調整の際にやや粉立ちがあるため注意してください。また、植物の種類により注意するポイントが変わります。使用前に必ず注意書きを確認してから散布しましょう。

手軽さ★★☆☆☆
効果★★★★★
容量100g
備考予防と対策どちらにも効果あり

炭疽病をしっかり予防し元気な植物を育てよう

Photo bystevepb

炭疽病は一度発生すると根絶するのが難しい病気です。しかし、適切な予防を心掛け、日頃のチェックをすることで被害が起きても最小限でくい止めることも可能ですよ。発生しやすい時期や条件に気を配り、炭疽病に負けない元気な植物を育てましょう。

佐野美帆
ライター

佐野美帆

自然が好きで、よく郊外に遊びに出かけます。お茶の専門店で働いていた経験があり、紅茶を含むお茶全般とハーブの勉強をしています。また、日本文学分野での出版経験を活かし、神話や民間伝承と植物の関わりに特化した記事が得意分野です。

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