カビとは?
カビは、現在発見されているだけでも約8万種類以上あります。これだけの種類が存在するため、すべてのカビが人間や環境に悪影響を及ぼすとは限りません。カビの中には食品の加工に使われるカビや、新薬の開発の過程で発見されるカビもあります。
カビを活用した食品
有毒性のあるカビは、誤食するとさまざまな症状を引き起こします。ところがカビの種類によっては、あえてカビを生えさせることで、別の食品(加工品)にすることも可能です。これらの食品は「カビが生えたもの」という点が付加価値となります。そのため高級食材にカビが生えたものが存在するのも特徴の一つです。
食べることが可能なカビ①チーズ
チーズはカビを活用した代表食品です。ゴルゴンゾーラチーズはアオカビが生えたものですし、ロックフォールチーズもアオカビで作ります。カマンベールチーズやブリーチーズは白カビの生えたものですが、白カビもアオカビの一種です。ただし日持ちがしない柔らかいチーズは、カビが生えやすいチーズに分類されます。
食べることが可能なカビ②鰹節
贈答品に人気の鰹節には、カビが生えたものが多いです。鰹節にカビが生えたものは、カビ特有の脱水作用を活用した加工品です。値段が安く手頃な鰹節は、カビ菌をつける前に出荷するため、カビは生えていません。鰹節の表面にカビが生えたものは、本節・枯節・本枯節と呼ばれ、カビの繁殖期間が長いほど高級です。
カビを食べるとどうなる?
カビを食べたときにおきる症状は、個人差が大きいと考えてください。健康な成人でも疲れやストレスで免疫力が下がっていると、正常時より症状が強く表れます。また抵抗力の弱い高齢者や乳幼児の場合は、少量のカビでも重症化することが多いです。
食中毒
カビを食べたときの症状で多いのが、食中毒です。食中毒の症状にも個人差がありますが、ナッツや穀物に生える「アフラトキシン」という白カビの食中毒は重篤化しやすいです。アフラトキシンは、家畜の飼料も汚染します。そのため直接摂取だけでなく、間接摂取にも注意が必要です。
アフラトキシンの検査は法律で義務化されている
アフラトキシンは、海外から輸入されるトウモロコシ、ナッツ類、香辛料で発見されることが多いです。アフラトキシンによる食中毒は直接摂取・間接摂取があることから、食品衛生法に基づく国の検査が義務付けられています。食品衛生法による検査義務は、デオキシニバレノールとパツリンも対象です。
カビを食べたときの対処法
カビの胞子は、空気中を漂いながら移動することも可能なので、テーブルに置いておいたパンやおにぎりにも付着し繁殖します。空中を浮遊するカビは目に見えないほど小さいため、付着した食品を誤食する可能性が高いです。カビの誤食に気がついた場合は、その後の対処法が重要になります。
対処法①経過観察
誤ってカビ食べてしまった場合の対処法は、経過観察が有効です。食品の内部に潜む小さなカビの菌糸は、見ても気がつかないことがよくあります。カビを食べた後の主な症状は、下痢や嘔吐です。ただし重症化することはほとんどありません。そのため経過観察をしながら安静にしていましょう。
対処法②病院を受診する
カビの誤食発覚から数日たっても症状が改善しない場合は、専門の医療機関を受診しましょう。特に「吐き気や痛みが時間を追うごとに強くなった」「急に症状がひどくなった」という場合は、早急に受診してください。カビの誤食による症状は個人差があるため、場合によっては重篤化する危険もあります。
食べると危険なカビの種類
カビは高温多湿が続く梅雨~夏にかけて、野菜やパン、おにぎりなどに発生しやすいです。ところが気温や湿度が低い冬にも、みかんや餅などに大量発生するカビも存在します。これらの違いは、種類が異なるカビであることが原因です。さらにカビの中には食べ物ではなく、植物や住宅に発生する種類もあります。
種類①アオカビ
アオカビはペニシリウム属のカビの総称で、発見されているアオカビだけでも300種類以上あります。アオカビのコロニーは、種類によってさまざまな色をしているのが特徴です。色の違いから、青カビ、白カビ、緑カビなどの名称で区別しています。パンや餅、おにぎりなどのカビもアオカビが原因です。
学名 | Penicillium |
分類 | マユハキタケ科アオカビ属 |
種類 | 300種類以上 |
種類②フザリウム
フザリウムは100種類以上ありますが、主に土壌に生息するため、作物や植物の病気の原因になることが多いです。発生当初の色は白または透明ですが、成長に伴って変色するフザリウムもいます。主に青と赤に変色するため、青カビや赤カビと呼ぶことが多いです。
学名 | Fusarium |
分類 | アカブツタケ科フザリウム属 |
種類 | 100種類以上 |
種類③ケカビ
ケカビは湿気のある有機物の表面に発生するケカビ種の総称で、一般的に「カビ」と呼ばれるものはケカビといえます。ケカビは有機物の中に菌糸を伸ばし、先端に胞子嚢(ほうしのう)をもつ胞子嚢柄を空中に伸ばすのが特徴です。ケカビの大きさは種類によって異なり、高さが数cmあるケカビも存在します。
学名 | Mucor |
分類 | ケカビ科ケカビ属 |
種類 | 大きくわけると2種類 |
種類④クラドスポリウム
クラドスポリウムは、一般的に「黒カビ」と呼ばれるカビです。クラドスポリウムは身近な場所で頻繁にみられるカビですが、正式名称の知名度は低いため、日本では黒カビの呼び方のほうが定着しています。黒カビの呼び方は、黒に近い深緑色をしていることに由来しますが、同じ色のコウジカビと間違われることも多いです。
壁のカビはほぼクラドスポリウム
浴室や部屋の壁にみられる黒いシミの大半は、黒カビ(クラドスポリウム)です。黒カビも発生当初は白色または透明ですが、成長とともに黒色に変わります。壁の表面部分のカビ菌が大きいと、黒カビと判断することも容易です。ただし壁内部の菌糸だけが見えている場合、壁にできた黒いシミにしか見えません。
学名 | Cladosporium |
分類 | クラドスポリウム科クラドスポリウム属 |
種類 | 狭義では約170種類、広義では約1000種類 |
種類⑤ミズカビ
ミズカビは水中生活をするカビの総称で、淡水の川や水鉢などに存在します。魚や水中の落ち葉などの有機物に菌糸を伸ばすミズカビは、種類によって大きさが異なるのが特徴です。魚の表面につくミズカビは高さ1cm前ですが、落ち葉につくミズカビは小さいため見えません。
学名 | Saprolegnia |
分類 | ミズカビ科ミズカビ属 |
種類 | 水中生活するカビの総称のため現時点で数の把握は不可 |