うどんこ病について
うどんこ病は、植物の葉っぱの表面や果実がカビ菌に侵され白くなる病気です。うどん粉がまぶされたように葉っぱが白くなることからその名がつけられました。
うどんこ病の病原菌について
うどんこ病の病原菌は”ウドンコカビ”といわれるカビ菌で、世界中で900種類あるといわれています。”絶対寄生菌”と呼ばれる、生きている植物に寄生していないと生きられない菌の一種です。
感染する植物ごとに菌の種類が異なっている
どの植物もうどんこ病に感染すると同じような症状があらわれますが、厳密にいうと植物によって感染している菌の種類は異なります。つまりキュウリに感染するうどんこ病原菌とバラに感染するうどんこ病原菌は異なる、ということです。
うどんこ病にかかる植物
うどんこ病にかかる植物は数多く存在しますが、野菜ならきゅうりやズッキーニ、かぼちゃ、トマト、花卉ならバラ、果物ならイチゴなどが代表的なものとしてあげられます。またローズマリーなどのハーブもうどんこ病にかかる恐れがあります。大変幅広い植物に感染の危険があるので、備えておくことが大切です。
うどんこ病の経過
うどんこ病の初期には、葉っぱの表面に白い斑点があらわれます。斑点は次第に葉っぱ全体、植物全体と広がっていき、放置しておくと粉に覆われて真っ白になってしまいます。うどんこ病にかかると植物の成長が阻害され、肥大できなかったり、奇形になったりすることがあり、ひどい場合は枯れてしまいます。
うどんこ病にかかりやすい環境
うどんこ病は、春や秋に発生しやすい病気です。気温が17~25度の暖かい環境を好み、真夏や冬場はあまり得意ではありません。多くの病原菌は高温多湿の環境下で発生、拡散しやすいですが、うどんこ病の病原菌は乾燥している環境を好むという特徴があります。
うどんこ病を無農薬で予防するには
うどんこ病を無農薬で予防するためのポイントをご紹介します。他の病気対策としても使えるポイントばかりなので、おさえておくと他の病害虫予防にも役立ちます。
無農薬での予防法①水やりで乾燥を防ぐ
うどんこ病は乾燥した環境を好むため、雨がなかなか降らず湿度の低い日が続いたら水やりをしてあげることが大切です。うどんこ病対策でみずやりをするときには、根元だけでなく葉っぱなどにもかかるようにしてあげるとよいでしょう。ただし水のやりすぎは他の病気の原因になることもあるため、土壌の水分状態や天気予報をチェックしながら行ってください。
無農薬での予防法②連作を避ける
一般的にどの植物においても、同じ場所で続けて同じ科の植物を植えることは避けた方がよいとされています。これは同一科の植物を連続して栽培し続けることによって、その科に感染しやすい病原菌や害虫が増殖してしまうためです。気を付けてほしいのは、”同じ科の植物”というところです。例えばキュウリを植えた場所なら、キュウリだけでなくズッキーニやカボチャも続けて植えない方がよい、ということになります。
無農薬での予防法③マルチシートを活用する
うどんこ病だけでなく多くの病気は、雨や水やりなどによる土の跳ね返りが感染源になることがあります。マルチシートで地面を覆って栽培すれば、土が跳ねるリスクは低くなります。またマルチシートは土の表面を覆うことで雑草を抑制する機能もあるので、除草剤を使わない無農薬栽培の強い味方です。
無農薬での予防法④風通しをよくする
葉っぱが混み合っていると病気にかかりやすく蔓延しやすいため、葉や枝の整理をしてあげることが大切です。また葉を整理することで日が当たりやすくなり、光合成が促進されるというメリットもあります。
無農薬での予防法⑤窒素肥料は適切な量を
窒素を過剰に与えすぎるとうどんこ病になりやすいといわれています。また窒素過多になると、うどんこ病だけでなく他の病気を引き起こしたり害虫がつきやすくなったりしてしまいます。
酢や重曹でうどんこ病対策をしよう
しっかり予防をしてもうどんこ病にかかってしまうことはあります。そんなときにおすすめしたいのが、酢や重曹を使った防除スプレーです。手軽に作れて人体に害がなく、お子様がいる家庭でも安心して使えます。
なぜ酢や重曹がいいのか
酢や重曹には、優れた殺菌作用や静菌作用があるといわれており、うどんこ病の初期対策におすすめです。また酢や重曹は、農薬取締法において”特定農薬”に指定されている農業資材であり、その効果が広く認められているといえます。
特定農薬は、改正農薬取締法第2条第1項において「その原材料に照らし農作物等、人畜及び水産動植物に害を及ぼすおそれがないことが明らかなものとして農林水産大臣及び環境大臣が指定する農薬」と定義付けられています。
酢や重曹での対策は初期に行おう
酢や重曹を使った対策はうどんこ病の初期に効果が期待できる対策です。うどんこ病を早期発見するために、葉の様子をこまめに観察し白い斑点がないかどうか確認してあげましょう。
酢や重曹を使う前に
酢や重曹を使用する前にやっておいてほしいのが摘葉です。白い斑点が出た葉を慎重に摘み取り、処分してください。このとき勢いよく摘んでしまうと菌が飛び散り、拡散してしまうことがあるため注意しましょう。摘み取った葉は他の植物への感染を防ぐため、必ず畑から持ち出します。こうして菌の数を減らした状態で酢や重曹を使用した方が、より効果が現れやすくなります。
酢スプレーの作り方
多くのご家庭に常備してあり、安価に手に入る食酢は、古くから殺菌や抗菌のためにさまざまな場面で用いられてきました。他にも酢に含まれる酢酸が植物の乾燥耐性を強めたり、分解されることでアミノ酸として植物の成長に活かされたりと、さまざまな可能性が期待されています。
材料
- 水:500cc
- 酢:30cc
- スプレーボトル
使い方の注意
葉の表面から裏側までまんべんなくスプレーすることがポイントです。葉の裏や影になっているところは忘れがちなので注意しましょう。かけすぎると匂いがきつくなる恐れもあるため、近隣の迷惑にならないよう気を付けてください。
重曹スプレーの作り方
重曹といえば、水回りの除菌や消臭に使われることがよくありますが、菌の動きを抑えるはたらきがあるためうどんこ病対策にも適しています。
材料
- 水:1L
- 重曹:1g
- スプレーボトル
重曹スプレーの使い方
重曹スプレーは希釈倍率1000倍のため、重曹の量が大変少なく感じられますが、重曹は濃度の濃いものをかけると薬害が出る恐れがあります。同じ場所に何度もスプレーした場合も同様に、薬害によって葉が黒ずむなどの症状が出ることもあるので、様子を見ながら少しずつ使ってください。
うどんこ病が拡がってしまったら
酢や重曹のスプレーをつかったり、病気にかかった葉を除去したりしても感染が拡大してしまった場合は、通常の農薬の使用も検討してみてください。おすすめの農薬をピックアップしました。
有機JASでも使える農薬
住友化学園芸 殺菌剤 カリグリーン 1.2g×10
参考価格: 770円
容量 | 1.2g×10包 |
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殺菌成分 | 炭酸水素カリウム |
適用 | 花き類、トマト 他 |
希釈倍率 | 花き類/800倍、トマト/800〜1000倍 他 |
カリグリーンは、オーガニック農産物の認証制度である”有機JAS”を取得した畑でも使える環境に優しい農薬です。自分で希釈して使用するタイプで、使用者からは小分けにしてあるので使い勝手がよいと支持されています。
プロも使用する殺菌剤
アフェットフロアブルは、専業の農家もよく使用している殺菌剤です。フロアブルとは、水に溶かして使う薬剤の中で液状になっているものの名称で、粉と違いダマにならず溶けやすいのが特徴です。100mLにしては高価なように感じますが、2000倍~4000倍という希釈倍率で使用するため、小さな家庭菜園では使いきれないほどの量です。ある程度大きな面積で栽培している場合におすすめします。
農薬使用時には展着剤を
展着剤というのは、散布した農薬を虫や菌、植物にしっかりと付着させるために使用する液体のことです。散布液に混ぜてつかうことで農薬が流れにくく、効果があらわれやすくなります。
まとめ
カビ菌の感染によって果実や葉っぱが白くなるうどんこ病。非常に幅広い植物に感染の可能性がある病原菌です。無農薬で予防するには、乾燥や連作、泥跳ね、通気性、肥料過多に気を付ける必要があります。それでも感染することはあるので、白い斑点が出ていないか植物をこまめに確認し、初期段階で対策することが大切です。早い段階で気づければ、酢や重曹のスプレーで感染拡大を抑えられます。