すす病とは
庭の観葉植物や公園の常緑樹など、いろいろな場所で目にする機会のあるすす病。葉っぱが黒いすすで覆われ、焼け焦げてしまったように見える特徴的な症状を示す植物病の一種です。いつ頃、どんな植物に感染する病害なのでしょうか?まず最初に、すす病の特徴をご紹介します。
すす病の発生しやすい時期
すす病はどの季節にもみられる病気の一つですが、最も対策が必要となるのは、気温が高くなる4月~10月です。暖かい季節に多発する理由は、すす病の原因であるすす病菌や、その増殖に大きく関わっているカイガラムシなどの害虫の活動が活発化するためです。逆に、寒さによって昆虫の活動が抑えられる冬の時期には、すす病の発生も減少します。
すす病の発生しやすい環境
すす病の被害は高温多湿な環境下で多発するのですが、これは、すす病の間接的な原因となる害虫に適した環境条件であるためです。鉢植えの場合は後から育てる場所を移動できますが、土植えの場合は対策が難しくなります。そのため、みかんなどすす病の被害が出やすい植物を育てる際には、密に植えたり、日当たりの悪い場所に植えないように注意が必要です。
すす病に感染する植物
すす病にかかる植物は幅広く、庭木から野菜まで、感染しない植物はないといわれるほど普遍的で対策の難しい病害です。特に被害が大きいのは、みかんやレモンなどの柑橘系の果樹、ツバキやオリーブなどの常緑樹です。葉っぱから症状が拡がり、果実にも黒すすが蔓延するので、家庭用に食べる場合でも、水で洗うなどしてきれいにしてからでないと食べられなくなります。
人体への影響は?
すす病は、みかんやレモンなどの柑橘類、ピーマンやナスなどの野菜類など、食用の作物にも広く感染する病害です。しかし、すす病菌の黒い菌糸自体が人体へ悪影響を引き起こすことはありません。黒すすは布で拭いたり、水で洗ったりすることで比較的簡単に取り除くことができるので、家庭で育てている植木や野菜に発生した場合でも、黒いすすを落とせば果実や葉っぱも安全に食べられます。
すす病の原因と症状
すす病は植物の表面に黒すすを発生させる病気として知られていますが、その症状はなぜ、どこから現れるのでしょうか?他の病気と見分けることは可能なのでしょうか?まずは、すす病の原因や症状を知るところから始めましょう。
すす病の発生原因
①糸状菌(カビ)
すす病は糸状菌(カビ)の一種であるすす病菌によって起こる病害であり、寄生性と腐生性の2つの種類に分けられます。寄生性のカビが、植物に直接寄生して葉っぱの両面に症状が出る一方、腐生性のカビは、主に葉っぱの表面に付着した昆虫の排泄物などの上で黒すすを増殖させる場合がほとんどです。一般的に問題になるのは、腐生性に分類されるものが大多数を占めています。
②カイガラムシ、アブラムシ、コナジラミ類
すす病菌の増殖源として最も大きな要因は、カイガラムシ、アブラムシ、コナジラミなどの分泌物です。これらの樹液を吸汁する害虫は、糖分を含んだ”甘露”と呼ばれる液体を分泌します。この甘露の上ですす病菌が増殖し、葉っぱから始まり、植物の表面を覆う様に症状が蔓延していきます。そのため、害虫の発生を予防することが黒すすの発生を抑える最も有効な対策です。
すす病の症状
①葉っぱから黒いすす状の斑点が広がる
すす病は名前の通り、黒いすすをかぶったように植物の表面が病斑に覆われるのが特徴です。発生初期では、黒すすがポツポツと葉っぱに現れ始め、対策をせずに放置すると症状が進行し、植物全体を皮膜のように覆ってしまいます。黒すすは洗うと簡単に落すことができるものの、症状が広範囲に及ぶと対策が難しくなり、みかんなどの柑橘類では大きな被害になることもあります。
②成長不良、樹勢の低下
すす病菌自体は、植物に感染し、直接的に植物の栄養を吸収して弱らせるということはほとんどないものの、対策をせずに症状を進行させてしまうと、葉っぱや茎の表面を黒すすによって覆い隠してしまうため、葉っぱで行われる光合成や蒸散がストップし、成長不良や最悪の場合は植物そのものが枯れてしまうこともあります。
③すす病菌と他の病気の見分け方
黒星病など葉に黒い病斑を生じさせる病気はすす病以外にも存在します。一部の寄生菌を除いて、すす病菌は植物に直接感染するわけではないため、黒いすす状の斑点を拭ったり、水で洗うと元通りの植物体が現れることが特徴の一つです。一方で、すす病の間接的な原因とされる、カイガラムシなどの害虫は、樹液を吸汁したり、ウイルスを媒介する場合もあるので、他の病気と併発することも多くあります。
出典:写真AC