日向土の特徴
日向土は宮崎県南部で産出される軽石の仲間で、桜島や霧島山の噴火によってできたものです。粒に小さな穴が多数あいている多孔質の形状をしていて、非常に水はけがよい土です。水はけがよすぎるために肥料成分をとどめておけず、作物がうまく育たないことから、役に立たない土という意味で「ボラ土」と呼ばれることもありました。しかしその高い排水性を活かし、近年ではいろいろな使い方をされています。
特徴①硬くて砕けにくい
日向土は硬くて粒が砕けにくい土です。鉢に植えられた植物は水やりを頻繁にするため、少しずつ土の粒がつぶれ、土の中の空間がなくなっていきます。しかし日向土の粒は簡単には砕けず、そのまま土の中の空間を保てます。日向土と同じ軽石の仲間に鹿沼土がありますが、鹿沼土よりも日向土のほうが砕けにくいため、こまめに植え替えができない植物の土には日向土を混合するとよいでしょう。
特徴②排水性や通気性がよい
多孔質で砕けにくい日向土は、排水性や通気性が非常に高い土です。日向土の粒には小さな穴が多数あいていて、この穴の中を水や空気が通ります。さらに砕けにくく、粒の間の空間をそのまま保っておけるため水や空気がたまりづらいです。排水性や通気性が悪いときには、水はけ抜群の日向土を用土に追加してみましょう。
特徴③保水性はそれほど高くない
日向土は粒の穴の中に水分をためておけるため、ある程度の保水力があります。しかし日向土の保水力は、基本用土に使われる赤玉土や鹿沼土にはおよびません。用土の保水力を高めたいときには、日向土に赤玉土や鹿沼土を混ぜたり、さらに腐葉土を加えたりするとよいでしょう。
特徴④雑菌が少なく肥料分を含まない
日向土は雑菌が少なく、肥料分を含まない清潔な土です。害虫や病原菌が繁殖しにくいため、挿し木の用土としても利用できます。ただし日向土単独では保肥性が乏しく、成長に必要な養分が確保できません。発根が確認できたときは、市販の培養土や肥料分を含む土に植え替えましょう。
特徴⑤弱酸性
日向土はpH5~6の弱酸性の土です。これは一般的な日本の土壌の値に近く、日本で育つ多くの植物の生育に適しています。アルカリ性の土壌を好む植物に使用するときには、用土に苦土石灰を少し混ぜておくとよいでしょう。
ボタニ子
日向土は産地に近い九州を中心に流通しているよ。手に入りにくいときには、インターネットを利用するのもいいね。
ボタ爺
日向土は粒の大きさに分けて、袋詰めされて売られているんじゃ。目的別に使い分けできるから便利じゃなあ。
日向土の種類①大粒
メリット:水はけが抜群によい
日向土大粒は、粒の大きさが12mm~25mmのものです。
排水性が高い日向土ですが、粒が大きいほど、粒と粒との空間も大きくなります。その空間に空気や水が出入りするため、大粒サイズは日向土の中でも排水性が際立っています。
おすすめの使用場面
鉢底石に
日向土大粒は大きいのに軽く、水はけ抜群で、さらに繰り返し使用できることから鉢底石に最適です。再利用しやすくするために、あらかじめネットに入れてから鉢の底に置くのがポイントです。植え替えのときに取り出したら、ネットごと水洗いして天日干しし、日光消毒しましょう。何度でも使えて経済的です。
日向土の種類②中粒
メリット:太い根が張れる
日向土中粒は、粒の大きさが6mm~12mmのものです。
日向土中粒は、粒のサイズが比較的大きく、粒と粒の間の空間も広くなります。その空間に根が入りこんで伸びていくため、太くて丈夫な根を育てられます。
おすすめの使用場面
洋ランの植え替えに
美しい花を咲かせる洋ランの植え替えには、中粒の日向土がおすすめです。日向土は水はけがよく、根腐れや過繁茂(肥料が多すぎるため、葉が多くなり花芽がつきにくくなる状態)を防げます。太い根を伸ばすためには、粒と粒の空間が広くなる中粒が向いています。日向土単独では、水切れを起こしたり肥料不足になったりする可能性もあるため、ラン用バーグを2割程度加えるとよいでしょう。
日向土の種類③小粒
メリット:鉢植えに適している
日向土小粒は、粒の大きさが3mm~6mmのものです。
日向土小粒は、鉢植えの用土に適した大きさです。植物にとって理想の土とは、排水性や通気性がよく、同時に保水性がよい土です。鉢で育てる植物の用土には、排水性や通気性を向上させる目的で日向土を加えましょう。用土の粒の大きさは均一のものが望ましいため、赤玉土小粒などとサイズをそろえて混合します。
ボタニ子
用土に日向土を加えると、土の中に水と空気の通り道ができるんだね。
ボタ爺
そうじゃの~。じゃが、日向土だけでは保水性が足りない場合もあるから、赤玉土などとブレンドするといいんじゃよ。
おすすめの使用場面
寄せ植えの用土に
季節を感じさせる寄せ植えは庭づくりに欠かせないものですが、鉢の中では草花が密集しており、蒸れやすく根腐れしやすい状態です。用土に小粒の日向土を混ぜると通気性がよくなり、寄せ植えが長持ちします。使い方は、草花の基本用土(配合例として赤玉土6割、腐葉土4割)に日向土を混ぜるだけです。加える割合は植物の種類や栽培環境によって変わりますが、基本用土8割、日向土2割を目安に調整しましょう。
暑さ対策や乾きにくい鉢植えに
小粒の日向土を配合した土は、真夏の暑さ対策にも使えます。用土に日向土を加えると土に空気が入るため、土の温度上昇が抑えられ、熱で根が傷むのを防げます。また土が乾きにくい植物にもおすすめです。日当たりや風通しが悪い場所に鉢を置くと、土がなかなか乾かず、水やりのタイミングに悩むかもしれません。水はけをよくする目的で用土に日向土を混合しておけば、管理しやすくなるでしょう。
山野草や盆栽の土に
自然の味わいを楽しむ山野草や盆栽の土にも、小粒の日向土が使用できます。山野草や盆栽は肥料分が少ない土を好むため、水はけのよい小粒の日向土が向いています。植物の性質に応じて、赤玉土や鹿沼土などほかの土とブレンドして使用するのがおすすめです。
日向土の種類④細粒
メリット:細い根をたくさん張れる
日向土細粒は、粒の大きさが2mm~3mmのものです。
日向土細粒は粒と粒の間の空間が小さいため、細い根を伸ばす植物の用土に向いています。手のひらにのるような小さな鉢で育てる植物や、細い根をたくさん伸ばして育てる永田農法の土として利用できます。
おすすめの使用場面
多肉植物の土に
近年人気の多肉植物の用土にも、水はけを向上させる目的で細粒の日向土が使用できます。小さな鉢で栽培する多肉植物には、赤玉土や鹿沼土に細粒サイズの日向土を混ぜた土がぴったりです。配合割合は植物によって変わります。基本は赤玉土4割、鹿沼土3割、日向土3割ですが、植物の性質も考慮して調整しましょう。
ハイドロカルチャーに
ハイドロカルチャーとは、ハイドロボールで植物を育てる方法です。ハイドロボールの代わりの土に、細粒の日向土が活用できます。ハイドロボールは粘土を高温で焼いて球状に固めたもので、粒に小さな穴があいています。日向土は、ハイドロボールと同じく多孔質で無菌のため、用土に好都合です。水挿しで発根させた植物など根の細い植物には日向土細粒を使用し、インテリアグリーンとして楽しみましょう。
永田農法の土に
甘くておいしい野菜が収穫できると評判の永田農法の用土にも、日向土細粒が使われます。永田農法とは、原産地の環境に近いやせた土を用いて、水と肥料を最低限に抑えて野菜を育てる方法です。永田農法では、土の表面に広くはわせた細い根から水や肥料を吸収させます。この根の張り方を実現できる土が、細粒サイズの日向土です。コンテナ栽培も可能のため、家庭菜園で挑戦してみてはいかがでしょうか。
日向土を使いこなして植物を育てよう
日向土は、排水性を向上させる目的でいろいろな植物の用土に混合でき、常備しておくと便利な土です。粒の大きさで使用する場面も異なるため、それぞれの使い方をマスターしておくと便利ですよ。日向土で理想の土を作り、植物を大切に育てていきましょう。
出典:筆者撮影