エビネは日本に自生するラン科の植物です。ほかの種類と交配しやすいため、自然界では多くの雑種が見られます。エビネの原種や変種は落ち着いた花色が多く、地味で観賞価値が低い品種もありますが、園芸品種は華やかで観賞価値が高いものが多いです。
園芸部類 | ラン、山野草、草花 |
形態 | 多年草 |
樹高・草丈 | 30cm~50cm |
花の色 | 白、緑、茶、赤、ピンク、 黄、紫、黒、オレンジ、複色 |
耐寒性 | 普通~弱い(品種によって異なる) |
耐暑性 | 普通~弱い(品種によって異なる) |
特性・用途 | 常緑性 |
栽培難易度 | ★★☆☆☆ |
エビネは春咲き品種と夏咲き品種がありますが、一般には「エビネ」というと春咲き品種を指すことが多いです。日本の野山にはエビネの原種が約20種類あるといわれていますが、近年は乱獲などによる野生種の減少が問題視されています。
エビネは太くて節のある根茎を地中に持ち、そこから大きな葉を茂らせ、開花時期になると茎を伸ばして開花します。この根茎の見た目が海老に似ていることから「海老根(エビネ)」と呼ばれるようになりました。学名の「Calanthe(カランセ)」は、ギリシャ語で「美」を意味する言葉「calos」と、「花」を意味する言葉「anthos」が語源です。
ジエビネ
参考価格: 507円
ジエビネ(地海老根)は北海道~沖縄と、ほぼ全国に分布しているエビネの原種です。エビネの原種のなかで、もっとも流通している品種でもあります。このため、単純に「エビネ」というと、この種を指すことが多いです。茶色、黒、緑など落ち着いた色合いが多く、素朴な印象を与えます。非常に交雑しやすい性質を持つため、交配親としてもよく利用されています。
キエビネ
参考価格: 820円
キエビネ(黄海老根)は、紀伊半島以西、四国、九州に分布しているエビネの原種です。名前どおりの黄色い花を咲かせます。春咲き原種のなかでは、もっとも大きい花をつける品種です。満開時には、直径5cm前後の花を10個~15個つけます。育てやすい品種ですが、寒さに弱いので防寒対策が必要です。キエビネを交配親とする園芸品種には、ジエビネとかけあわせて生まれた「タカネ」があります。
ニオイエビネ
参考価格: 2,872円
ニオイエビネ(匂い海老根)は伊豆諸島にだけ分布している原種です。名前が示すように強い芳香を持っています。多花性で大きく成長しますが暑さにも寒さにも弱いため、栽培管理が難しい品種です。しかし、芳香や花つきのよさなどの優秀な性質を見込まれて、「ミクラ」「コオズ」「スイショウ」など、多くの園芸品種の交配親となりました。
植え付け時期 | 3月、5月、9月中旬~10月上旬 |
植え替え(鉢植え)の時期 | 5月~6月 |
肥料の時期 | 5月~6月、9月~10月 |
剪定の時期 | 5月頃(開花後) |
花が咲く時期/開花時期 | 4月~5月頃 |
エビネの植え付けの適期は開花前の3月、開花後の5月、秋に入り、株が安定する9月中旬~10月上旬です。ただし、開花後のエビネは葉を傷めないように、特に扱いに注意する必要があります。このため、初めてエビネを栽培する場合は、時期に余裕がある9月中旬~10月上旬がおすすめです。
エビネの鉢植えは、5号~7号の深鉢に1株が目安です。水はけをよくするため、鉢底石を敷きましょう。エビネの苗は浅植えが基本です。さらに植え付ける際には、新芽のあるほうを広く空けておきます。これは偽鱗茎(ぎりんけい)、またはバルブと呼ばれる株元の膨らんだ部分が成長するスペースを確保するためです。
エビネの地植えは、風通しがよく日差しが柔らかい場所を選んで植え付けます。明るめの木陰などが理想的です。苗は根鉢を崩さないようにして、浅く植え付けます。
エビネが好む環境は、風通しのよい明るめの半日陰です。エビネは光が足りないと花付きが悪くなりますが、西日や真夏の直射日光のような強い日差しに当たると、葉焼けを起こして枯れてしまいます。このため日差しの柔らかい場所が理想なのです。また、品種による差はありますが、寒さや暑さ、過湿な環境も嫌います。これらも枯れる原因になりやすいため、気温や湿度にも注意しましょう。
エビネが好むのは、水はけのよい用土です。鉢植えの場合は日向土4:赤玉土4:腐葉土2で配合した用土に、バークチップやヤシ殻を混ぜましょう。市販品ですませたいなら、エビネ用の培養土を使用します。地植えの場合は庭土に腐葉土を混ぜ込んで、水はけをよくしましょう。
エビネの水やりの管理は、鉢植えと地植えで少し異なります。鉢植えの場合は、土の表面が乾いたら、水を鉢底から染み出すくらいたっぷりと与えるのが基本です。反対に休眠期の冬は水やりを控えめにします。生育期と同じペースで水やりすると、根腐れを起こして枯れる原因になるからです。地植えの場合は、生育期に雨が降らず、暑さでひどく乾燥する日が続いたときだけ、水やりします。
エビネの施肥の適期は5月~6月、9月~10月です。暑さが厳しくなる7月~8月は成長が鈍るため、肥料を施す必要はありません。月に1回のペースで緩効性化成肥料を株元に置き肥し、成長具合に応じて薄めに希釈した液体肥料を、7日~10日に1回のペースで与えます。置き肥するときは新芽を傷めないように、新芽が出ている側とは反対側に置きましょう。
エビネの栽培で注意すべき害虫は、アブラムシ、ハダニ、ナメクジです。特にアブラムシとハダニは、ウィルス性の病気の媒介となる恐れもあるので注意しましょう。予防法としては、風通しのよい環境を維持し、常日頃からこまめに株を観察することがあげられます。害虫は発見次第、薬剤などで早急に駆除しましょう。
エビネの栽培はウイルス病に注意です。エビネはウイルス性の病気にかかると、新芽や葉に斑模様が出るほか、成長が鈍り花が咲かなくなってしまいます。一度病気にかかると治療は不可能です。発病した場合は、早急に株を用土ごと処分するしかありません。エビネの好む栽培環境を維持し、病気の媒介になる恐れのある害虫は、発見次第駆除しましょう。
エビネのバルブは、次々と横にできるタイプです。特に鉢植えの場合、放っておくと鉢がバルブや根でいっぱいになり、新芽が伸びず、成長ができなくなってしまいます。エビネの鉢植えは、1年~2年に1回のペースで植え替えましょう。地植えは4年~5年に1回のペースで植え替えます。なお、エビネの植え替えの適期は5月~6月です。
エビネの剪定は花がら摘みと、はかま取りの2種類です。花がら摘みは花が半分以上終わったときに行います。エビネの株元を押さえながら花茎を握って、ねじるように上へ引っ張って花がらを取りましょう。はかま取りのはかまとは、根元にある筒状の葉鞘のことです。葉が成長すると、この部分が変色するため、葉が成長しきる6月~7月に除去します。
エビネの増やし方は2種類あります。成長して充実した株があるなら、株分けが有効です。株分けは植え替え時に行います。株を新芽とバルブが2個~3個ついた状態になるよう切りわけ、あとは植え付けと同じ要領で植え付ければ作業完了です。
エビネのもう1つの増やし方です。エビネについている葉のついていない古いバルブを、2個~3個ほど切りわけます。切り口に殺菌剤を塗布した後、あらかじめ湿らせておいた水ゴケに半分ほど埋めましょう。成功すれば4カ月~6カ月で新芽が出ます。
出典:写真AC