ナメクジとは
ナメクジとは陸上に生息する巻貝の1種で、貝殻が退化してなくなったものの総称です。ナメクジという名前は学名Meahimatium bilineatumの和名で、漢字では「蛞蝓」と書きます。原産はヨーロッパのイベリア半島(スペイン・ポルトガル辺り)なのですが、明治初期に日本へ侵入した外来種の害虫です。見た目からして嫌われもののナメクジですが、生態系では蛙のエサとなり、役に立っています。
ナメクジの種類
ナメクジにはナメクジ科やコウラナメクジ科、オオコウラナメクジ科など複数に別れ、同じ系統ではなく別系統であるカタツムリからそれぞれ貝殻をなくし進化した多系統群となります。一般に「ナメクジ」と呼ばれるのはカタツムリと同じ有肺亜網の柄眼目に属し、貝殻が少しずつ退化して体内に収まり見えないナメクジと、その途中形態を持つナメクジも存在します。
日本にいるナメクジ
外来種であるナメクジは北海道から沖縄まで生息地域にしています。庭先に出没するのは茶褐色で背に黒い縦筋を持つ「チャコウラナメクジ」ですが、山野には「ヤマナメクジ」という体長10cm以上にもなる大型種や、沖縄の山地には「ヤバルヤマナメクジ」や、退化しかけた平たい貝を持つ「ヒラコウラベッコウガイ」などが存在します。
ナメクジを研究するエキスパート
京都大学でナメクジの研究を行っている宇高寛子先生によれば、これまで日本に存在しなかったマダラコウラナメクジが発見されています。ヨーロッパ原産で体長が10~20cmにもなり、薄い灰色の体にはヒョウ柄のような黒の斑模様があります。2006年から日本の8都道県に生息していることが報告され、攻撃性が高いナメクジで被害の拡大が心配されます。発見されたときには、こちらのサイトまでご連絡を。宇高寛子先生のサイト:https://sites.google.com/site/udakawebsite/home
ナメクジの生態
花や野菜を食い荒らし被害を与えるナメクジですが、その生態はほとんど知られていません。そのために撃退するどころか、駆除する方法も期待通りとはいかないことが多いようです。そこで、まずは敵を知るためにナメクジの一生について解説します。
ナメクジの体:目
ナメクジの体には触角が対で4本、長いものと短いものがあります。外側にある長い触角に目があり、これは明るさを判別するくらいの機能しかないようです。長短4本の触覚には鼻の役割をする器官が付いているので、嗅覚を使い移動します。
ナメクジの体:脳と肺
ナメクジは陸上での生活をするため、肺呼吸を行います。肺の機能は体の右側前方に「呼吸孔」があり、ここから空気を取り入れています。その小さな体には脳もあり、3週間ほどで学習する能力もあるそうです。
ナメクジの体:足
ナメクジは腹部分の筋肉全体を収縮させて、半径数メートルを移動をします。これは腹足(ふくそく)といい、足波という筋肉を収縮させた部分が体が移動する2倍の速さで動き、秒速1~4mmで前進します。またナメクジが分泌する粘液は地面との摩擦に弱い皮膚を守り、さらに垂直面での接着する役目を果す物質です。
ナメクジの体:口
ナメクジの口はカミソリのような歯舌(しぜつ)という部分を使い、植物の葉などを削ぎ取って被害を与えます。エサは雑食性なので何でも食べますが、落ち葉や腐り始めた朽木などが特に好きです。弱ったり死んだナメクジやハマキガ類の卵塊を食べることも。
ナメクジの繁殖時期
ナメクジの繁殖時期は冬から春に掛けて、産卵は年に数回行われ、なかでも一番多く産むのは秋です。ナメクジは35日で産卵可能な成体となり、年間200~300個の卵を産みます。ナメクジは雌雄同体で寿命は1年~3年ほどですが、精子と卵子を持つので1匹でも自家受精するとされ、2匹存在すれば互いに精子を交換することで2匹とも産卵します。
ナメクジに潜む寄生虫
ナメクジの体にはネズミの糞を食べることで、「広東住血線虫」という寄生虫が存在する可能性があります。この広東住血線虫は人や動物の体に入ると髄膜炎を発症する危険があり、日本でも重大な被害が出ています。ナメクジの粘液にもこの寄生虫が含まれる場合もあるので、触れたときにはよく手を洗いましょう。国立感染症研究所:https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/384-kanton-intro.html
ナメクジの行動心理
ナメクジを退治・駆除するには、潜む場所や行動範囲を知る必要があります。ここではナメクジが大量発生する原因や、どう駆除して行くべきかなどの対策を解説します。
ナメクジの発生場所
ナメクジが住処として好むのは、暗く湿り気が多い場所です。庭では落ち葉の下や、鉢植え・ブロックなどの物陰がこの条件を満たします。ナメクジの卵も落ち葉の下や土中へ産み付けられるので、注意が必要です。高層マンションのベランダで植物に被害が出るのは、排水溝を這い登るつわものナメクジが現れることが原因です。
ナメクジの発生時期
ナメクジは高温多湿を好むため発生時期は4月~6月と、9月~10月までが特に多くなります。この時期にアルコールまたは殺虫剤を使った駆除や、銅の忌避剤などで寄せ付けない対策をすることで被害を少なくできるでしょう。
ナメクジの行動範囲
ナメクジは冬場を除いて、半径数メートルを移動します。秒速1~4mmという速度のため、エサの近くで隠れる場所を見つているはずです。夜行性なので、昼間探しても発見することは難しいでしょう。撃退するならば梅雨から夏に掛けての時期、雨上がりの夕方に対策することが効果的です。
ナメクジの弱点
ナメクジの体は80~90%が水分で構成されています。これを奪うことで駆除が可能です。「ナメクジに塩」ということわざ通り、塩を掛ければ脱水症状になり退治できます。しかし、塩は植物にも影響を与えるため、どこでも使える対策ではありません。まずはどこのご家庭にもある材料で、駆除や忌避剤に利用して対処しましょう。