カブは、中央アジアやヨーロッパ西南部が原産の一年草です。ビタミンやカルシウムが豊富で、酢漬けや煮物などさまざまな料理に利用されています。育て方や苗の管理方法が比較的簡単なため、家庭菜園やベランダ栽培にも人気の野菜です。
園芸部類 | 野菜 |
形態 | 一年草 |
樹高 | 30cm〜50cm |
花の色 | 黄色 |
耐寒性 | やや強い |
耐暑性 | やや弱い |
耐陰性 | 普通 |
栽培難易度 | ★★☆☆☆ |
カブのまん丸とした部分は「根」で、大きく肥大した根を土から掘って収穫するのが特徴です。種まきをしてから小カブなら50日程度、大型のカブならば70日程度で収穫できます。収穫時期が遅れると「鬆(す)」が入ったりひび割れたりするので、収穫のタイミングを逃さないようにしましょう。また、カブは春に「とう立ち」すると、黄色い花(菜の花)を咲かせます。
カブの「す」とは?
カブの根の部分を半分に切ったときに、中身がスカスカになっている状態を「す」が入るといいます。「す」が入るのは、根の部分に蓄えられていた栄養分が、収穫時期を逃すと葉の部分に移動してしまうために起こる現象です。カブは早採りしてもおいしく食べられる野菜で、早めに収穫しても構いません。
カブの花は食べられる?
カブはアブラナ科に分類されており、アブラナ科の植物が咲かせる花を総称して「菜の花」と呼びます。カブの花は、さまざまな料理に利用できるのが魅力で、サラダとして生で食べるとピリッとした辛味があるのが特徴です。花を炒め物やおひたしにすると、甘みが増して食べやすくなります。
カブの葉は「すずな」と呼ばれ、春の七草のひとつです。カブの根が鈴のようにまん丸とした形をしているため「鈴から伸びた菜」という意味から「すずな」と呼ばれています。すずなは特有の強い香りと歯ざわりが特徴で、七草がゆ以外にも、おひたしや和え物などに利用されている食材です。
カブは、大きく成長した根の部分が主に収穫される野菜です。「カブ」には「頭」という意味があり、カブの根を掘り起こさずに、茎や葉の部分だけ切り落とすと根が少し頭を出します。その肥大した根の丸い形が「頭」に見立てられ「カブ」と名付けられました。
本紅丸かぶ
参考価格: 1,294円
本紅丸かぶは、皮の鮮やかな紅色が魅力的な品種です。カブ本体だけでなく、茎まで紅色をしているのが特徴で、豊かな風味が楽しめます。カブ本体をカットすると切り口は白色で、紅色との美しいコントラストが料理に彩りを添えてくれる品種です。
皮の色 | 紅色 |
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サイズ | 8cm〜10cm |
早生大かぶ
参考価格: 330円
早生大かぶ(わせおおかぶ)は、カブの品種の中でも甘みが強いので、千枚漬けや生食におすすめです。収穫時期には12cmほどの大きさになりますが「す」が、入りにくいためさらに日をおくと2kgほどまで成長します。繊維質が少なくて歯切れがよく、見た目も立派なので、市場に出回りやすい品種です。
皮の色 | 白色 |
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サイズ | 12cm〜15cm |
種まきの時期 | 3月〜5月、8月〜10月 |
間引きの時期 | 4月〜5月、9月〜10月 |
肥料の時期 | 4月〜6月、9月〜11月 |
花が咲く時期 | 4月〜5月 |
収穫時期 | 5月〜7月、10月〜12月 |
栽培適期は?
カブの生育適温は15℃~20℃と耐暑性がやや弱いため、初心者は8月〜10月に種まきをする「秋まき品種」を育てましょう。「春まき品種」を育てる場合は、種まき後すぐに寒冷紗をベタ掛けしておくと、暑さ対策や病害虫対策になります。
収穫のタイミングは?
カブは収穫のタイミングを逃すと「す」が入るだけでなく、葉や花に栄養分が吸収されて味や風味が落ちるので注意しましょう。根の直径が、小カブは4cm~5cm、中カブは8cm~10cm、大カブは10cm〜15cm程度が収穫適期です。葉の部分を持ち、優しく引き抜くようにして収穫してください。
カブは、露地栽培でもプランターにして鉢植えでも育てられます。広い場所が確保できる場合は、畝を立てて露地栽培するのがおすすめです。露地栽培ができない場合は、プランターに植え付けると狭いスペースでも育てられます。温度や湿度、日当たりなどの環境をしっかりと整えれば、ベランダ栽培も可能です。
カブは基本的には屋外で育てますが、小カブを選べば植木鉢やプランターを使用して、室内でも栽培できます。横幅が50cm〜60cm程度ある大型の鉢やプランターを選び、日当たりのよい窓辺で管理しましょう。
カブは、日当たりと風通しのよい場所で管理してください。たっぷりと日光を浴びて育てると、甘みのあるカブに育ちます。耐暑性がやや弱いので、春まきの場合は温度が上がりすぎない場所に種まきするか、鉢植えの場合はエアコンの効いた室内で管理しましょう。日当たりが悪いと、株元から枯れ込んでくるので注意してください。
カブは連作障害を起こすため、同じ場所に何度も種まきをしないように注意してください。連作障害を起こすと、カブの収穫量が減るだけでなく「根こぶ病」などの病気に感染し、枯れるリスクが高くなります。同じ場所でカブを栽培したい場合は、春まきの後で「後作」をしてから秋まきするのがおすすめです。
後作とは?
後作(のちさく)とは、作物を育てて収穫が終わったあとの畑で、ほかの植物を栽培することを意味します。カブの場合は、春まきで収穫が終わったあと、ネギやレタスやエダマメなどを後作するとよいでしょう。ダイコンなどキャベツなど、カブと同じ「アブラナ科」に分類される植物を後作するのは避けてください。
カブを露地栽培する場合は、畝を立ててから種まきをしていきましょう。カブのサイズに合わせて、10cm〜20cmほどの高さの畝を作ってください。小カブの場合は畝を作らなくても構いませんが、大カブの場合は畝を立てて育てたほうが大きく成長します。水はけが悪い場合は、やや高畝にして排水性を高くしておきましょう。
カブは、水はけと水もちのよさを兼ね備えた用土が適しています。プランター栽培の場合は、市販されている「野菜用培養土」を使用しても構いません。露地栽培の場合は、用土をよく耕してふかふかの状態にしてから、堆肥や石灰を入れて用土作りをしておきます。種まきの2週間〜3週間前には堆肥や石灰を混ぜ込み、しっかりと馴染ませておくのがポイントです。
春まき品種は3月〜5月、秋まき品種は8月〜10月に種まきを行います。小カブの場合は、成長が速いと1カ月程度で収穫できるのが特徴です。そのため、たくさん収穫したい場合は、時期と植える場所をずらせば長期間収穫ができます。
露地栽培で畝に種まきする場合は、1cm程度の間隔をあけて一直線上に種まきしていきます。品種によって、種がとても小さい場合は「筋まき(すじまき)」をして、サラサラと種をばらまいても構いません。大カブの場合は、1カ所に4粒〜5粒種をまいて「間引き菜」を味わうのもおすすめです。
カブが発芽するまでは、水切れを起こさないようにして、風通しのよい場所で管理します。土の表面が乾燥しているようならば、朝と夕方に2回にわけて水やりをしても構いません。直射日光に当てると表面の水分が蒸発しやすくなるため、発芽するまでは半日陰で管理するのがポイントです。
カブは肥料を好むため、元肥として堆肥や緩効性の化成肥料をたっぷりと混ぜ込んでおきましょう。リン酸を多く含んだ肥料を元肥として与えると、根の部分が肥大しやすくなり立派なカブが収穫できます。
カブの根には「直根性(ちょっこんせい)」という性質があり、根がまっすぐ伸びるのが特徴です。直根性の植物は、根が傷つくと再生できずに枯れる恐れがあるため、植え替えを嫌います。カブを育てる場合は苗の定植は行わず、育てたい場所に直接種まきをしていきましょう。
種まきをしてから発芽するまでの間は毎日水やりをして、水切れを起こさないように管理します。水切れを起こすと、発芽しないまま枯れるので注意が必要です。また、カブには「肥大期」という、根の部分の成長スピードが速くなる成長期があります。肥大期に水やりが足りないと、収穫する前に根が割れたり枯れたりするので、たっぷりと水を与えましょう。
カブは根の部分から太くてしっかりとした茎が生えており、苗が風で倒れたり折れたりする心配はありません。また、つる性ではないため、ほかの植物に巻きつく恐れがないのが特徴です。そのため、支柱立てや誘引などの管理をしなくても育てられます。
カブは耐寒性が強く、冬の寒さでは枯れません。しかし、葉に雪や霜が当たると、株元から枯れ込んだり葉が弱ったりします。寒冷地の場合は、冬が来る前にビニールやバークチップを利用して、マルチングをしておくと安心です。鉢植えの場合は、苗に雪や霜が直接当たらないように軒下や室内へ移動させましょう。
カブは、本葉が出たら1回目の間引きを行います。本葉が2枚〜3枚になったときに2回目の間引きを行いましょう。間引いた葉は「間引き菜」として食べられます。
追肥は、2回目に間引きをするタイミングで行います。間引いたあとで緩効性の化成肥料を適量施してください。用土が硬くなっていると成長が滞ったり枯れたりする恐れがあるので、追肥をするときに株元の土を手でほぐしておきましょう。
中カブや大カブの場合は、2回目の間引きをしたタイミングで肥料を与えますが、小カブの場合は根が小さいので追肥の必要はありません。種まきする前に堆肥や緩効性肥料などの元肥をたっぷりと混ぜ込んでおけば、元肥の栄養分のみで十分に育ちます。肥料の与えすぎは、肥料やけを起こして枯れる原因となるので避けてください。
カブを収穫したときに根の部分が2つに割れている状態を「玉割れ」や「根割れ」といいます。収穫時期を逃すと「す」が入り中身が空洞になりますが、その「す」がさらに悪化するのが原因です。また、根の肥大期に厳しい寒さにあったり、土壌の水分量の変化が激しかったりすると根が割れる場合もあります。
カブの収穫後に、表面がザラザラしていたり、傷ができている場合は「キスジノミハムシ」の幼虫に食害されている可能性があります。キスジノミハムシの幼虫は、カブの本葉が生え始めた頃に発生する害虫です。カブやダイコンなど、アブラナ科野菜を連作すると発生量が多くなるので注意しましょう。
カブを収穫しないまま放任で育てると、4月〜5月にかけて2cm〜3cmほどの黄色い花を咲かせます。カブは、とう立ちすると花を咲かせるのが特徴です。とう立ちしたカブは、味や風味が落ちておいしさが半減します。
根こぶ病は、名前のとおり根の部分に「こぶ」ができる病気です。カビの菌糸が原因で発生し、根にこぶができた影響で成長が妨げられ、カブが枯れる可能性があります。アブラナ科に分類される野菜のみに発生する病気で、放置すると次々と「こぶ」が広がっていくので注意が必要です。
ベト病は4月〜9月頃に発生しやすい病気です。感染した部分が黄色や褐色に変色する病気で、葉の光合成が妨げられて、カブが株元から枯れ込んできます。ベト病に感染した部分は治せないため、早めに切り取って処分し、ほかの部分への感染を防ぎましょう。
アブラムシは、年間を通して発生しやすい害虫です。集団で寄生して、カブの葉や茎から栄養分を吸汁しながら成長します。アブラムシは光り物が苦手なため、カブの周りに園芸用のシルバーテープを張り巡らせて予防しましょう。アブラムシの数が少ない場合は、ガムテープに貼り付けて駆除しますが、大量発生した場合は殺虫剤を散布してください。
アオムシはカブの葉や茎を食害し、穴だらけにする害虫です。発見が遅れると葉がすべて食べられてしまい、根に栄養が行き届かずカブが枯れる可能性があります。水やりのときに葉の裏側までしっかりとチェックして、アオムシがついていないか確認しましょう。発見したらすぐに殺虫剤を散布して駆除します。コンパニオンプランツを植えて予防するのもおすすめです。
コンパニオンプランツとは、病害虫を抑えたり成長を助けたりするために、主となる植物の近くに植えるほかの植物をさします。カブにはアブラムシやアオムシなどの害虫が寄生しやすいため、それらの害虫が嫌がるネギ科の植物を近くに植えるという害虫対策もおすすめです。
出典:写真AC