はじめに
黄色と黒で、ハチのようだけど何かが違う、そんな虫、見たことありませんか?もしかしたら、ナミハナアブかもしれません。お庭や家の中で、ハチに似た虫に遭遇したら、刺されないか心配になりますよね。ナミハナアブは人や作物に害を与えるのでしょうか。その生態や特徴に迫ります。
ナミハナアブの特徴
基本情報
名前(学名)
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ナミハナアブ(Eristalis tenax)
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分類
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ハエ目ハナアブ科ナミハナアブ属
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分布
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日本全国
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同じ属のシマハナアブ(Eristalis tenax)と、色も大きさも非常によく似ています。
ナミハナアブは「アブ」ではなく「ハエ」の仲間
ナミハナ「アブ」とありますが、人を刺すウシアブ(アブ科)とは別のグループで、ハエに近い生き物です。よく見ると、顔がハエに似ていますね。口の形も、針状ではなく、ハエのような舐めるのに適した形をしています。そのため、ナミハナアブが口で刺してくることはありません。
見た目がまるでハチ?
色や体の大きさは、ハチにそっくりですよね。これは、毒を持つハチを真似たもので、ベイツ型擬態と言う生存戦略です。これにより鳥などの天敵から身を守っています。ただ、真似ているだけですので、ナミハナアブ自身はお尻の針も毒も持っていませんし、巣を作ることもありません。
ナミハナアブは害虫なの?
針も毒も持たないため、人に対しての害はありません。また、幼虫は腐食性、成虫は蜜食性であるため、作物に対しても害がありません。家の中やお庭でナミハナアブを見かけても駆除の必要はないので、ご安心ください。どうしても駆除をしたい場合は、市販のハエ用殺虫剤が有効です。
ナミハナアブの生態
水中で暮らす幼虫期
ナミハナアブの幼虫は巣ではなく、池や下水溝などの水中で単独生活をします。エサは落ち葉などの腐食物です。分解者として生態系で大きな役割を担っています。呼吸をするために、シュノーケルのような長い管を持つのが特徴です。管を除いた大きさが2cm程になると地上に上がり、蛹になります。
飛び回る成虫期
大きさは11~14mm。成虫になっても、ハチと違い巣を作ることはなく、単独生活です。花の蜜を求めて飛び回り、結果として植物の受粉に大きく貢献しています。ハエの仲間として高い飛翔能力を持つのも特徴です。
花粉の運搬役
花粉を運搬し、受粉の手伝いをする生き物を、花粉媒介者(ポリネーター)と言います。ナミハナアブも、そのポリネーターの一員です。受粉がなければ、植物だけではなく生態系も持続しません。そんな大切な役割を、ナミハナアブは担っているんですね。
まとめ
幼虫期は分解者、成虫期はポリネーター。ナミハナアブは人や作物に無害なだけではなく、生態系上で大きな役割を果たす昆虫でした。お庭の植物の受粉も、ナミハナアブが貢献しているかもしれません。こうした生き物を大切にしながら、ガーデンライフを楽しみたいですね。
出典:写真AC