麦角病の対策
麦角中毒を防ぐためには、植物が麦角菌にかからないようにすることが大切です。適切な品種選びや畑から菌を除去することによって感染を予防しましょう。
麦角病の対策①抵抗性品種
麦角菌による病気を防ぐ上で大切なことは、抵抗性をもった品種を選ぶことです。品種の選定により麦角菌に感染する確率は大きく減らせるといわれています。日本における飼料用ソルガムの麦角菌防除研究では、抵抗性品種を利用したことで、病気が大幅に抑えられたという結果が得られました。
麦角病の対策②栽培時期
前述の農研機構のデータによると、栽培時期によっても病気にかかる確率を減らすことができるといわれています。7月に種をまいたものは麦角菌が飛散しやすい9月、10月に開花時期を迎えるのに対し、5月、6月に種をまいたものは開花時期がずれるため、発病率が抑えられたという結果になっています。
麦角病の対策③薬剤の散布
穀類を中心に感染する麦角菌ですが、これまで稲の感染は確認されていません。このことが、日本において麦角中毒がほとんど報告されず、認知されていないことの一つの理由とも考えられます。
稲の感染は確認されていない
日本においては、広域にわたって栽培されている稲や小麦、大麦においてほとんど麦角菌の感染が確認されていないため、栽培の現場で麦角菌の防除が話題になることはあまりなく、麦角菌に登録のある農薬はありません。しかし日本でよくみられる「赤かび病」の原因も糸状菌であり、その登録農薬の中には麦角病への防除効果が期待できるものもあります。そういった農薬を使って、感染リスクを減らしていきましょう。
麦角菌の対策④土壌消毒
1本あたり880円! 透明マルチ [透明マルチシート] 0.02mm×135cm×50m (10本入) 【農業用】 【家庭菜園用】
参考価格: 9,228円
麦角菌の菌核は土の中で冬を越し、春になると発芽します。そこで土壌を消毒して、緊密度を減らすことも対策のひとつです。土壌消毒は薬剤を使ったものの他に太陽熱による消毒方法があります。「太陽熱養生処理」ともよばれ、消毒したい場所を透明のマルチシートやビニールで覆い、地温をあげることで菌密度を減らすものです。太陽熱養生処理では菌を除去するほかに、土壌の団粒化や雑草種子の除去も可能であるとされ、注目されている技術です。
麦角菌の利用
強い毒性をもつ麦角ですが、麦角菌は薬として作用する側面もあります。どういった場面で利用されているのかご紹介します。なお麦角を利用した薬には副作用が強いものもあるため、処方されたときはかならず医師の指示に従ってください。
麦角菌の利用①陣痛促進
ヨーロッパでは古くから陣痛の促進に麦角が用いられていました。麦角アルカロイドによって、子宮が収縮するためです。またこの作用を利用し、出産後の出血を抑制するためにも使われていたといわれています。
麦角菌の利用②片頭痛治療薬
血管収縮作用を利用して、片頭痛の治療薬にも活用されています。片頭痛は、一旦収縮した脳内の血管が過剰に膨張することで引き起こされるといわれており、その血管を元の状態に戻すために利用されるのが麦角アルカロイドです。起立性低血圧の改善にも用いられますが、吐き気などの副作用が見られることもあり、服用には注意が必要です。
麦角菌の利用③LSD
日本のみならず多くの国で規制対象となっている薬物であるLSDは、麦角アルカロイドの研究から誕生しました。過去には精神療法の分野で利用されることもありましたが、幻覚作用や気分の高揚、逆に不安や抑うつ状態を引き起こすこともあり、現在は大変危険な薬物として各国で取り締まられています。
まとめ
カビ菌の一種である麦角菌は、ライ麦などの穀類に感染し、生物が摂取すると中毒を引き起こす大変恐ろしい菌体でもあります。作物への感染を防ぐためには、抵抗性を持った品種を選び適切に防除することが大切です。現在、日本では飼料用ソルガム以外で麦角菌の流行は見られていませんが、菌も進化を続けているので今後稲や小麦、大麦に感染しないとも限りません。あらかじめ情報を得ておき、迅速に対応できるよう心の準備をしておきたいですね。
- 1
- 2