苔盆栽とは
盆栽は年配者の娯楽というイメージをもたれがちですが、近年では若い世代にも人気が高まっています。中でも苔の盆栽は注目の的です。初心者におすすめの苔盆栽はミニ盆栽の1つで、インテリアとしても親しまれています。サイズが小さい鉢植えなので、管理次第で室内でも十分楽しめます。特に、盆栽を育てるのがはじめてというビギナーでも、やり方のポイントを押さえれば枯らさずに育てられるでしょう。
苔とはどんな植物?
苔は、和風の庭園や日陰の多い地面で静かに生息しています。どちらかというと地味で周りを引き立てる役目の苔ですが、興味深い特徴や効果を持つ植物です。近年では、苔テラリウムなど室内インテリアとしての需要も高まっています。
世界中どこにでも生息する
苔は、一般的に土や木の表面に付着して成長する植物です。種類も豊富にあって、菌類、シダや藻なども広い意味では苔と呼ばれています。正式には、生物の分類上にて「コケ植物門」に属すものの総称です。あまり直射日光が当たらない場所で自然に生えています。
苔の種類は豊富
苔は国内だけで約1700種類、世界で約18000種類は自生しているとされ、日本のような温暖地域に限らず高地、極地、熱帯でも生育する強さを備えています。普通の植物と異なって、養分や水分を体内に循環させる「維管束(いかんそく)」という組織や根を持たない植物です。すべて胞子によって繁殖させます。
園芸部類 | 植物 |
分類 | コケ植物 |
別名 | コケ類、蘚苔類(せんたいるい)、蘚苔植物(せんたいしょくぶつ) |
種類 | 蘚類、苔類、ツノゴケ類、地衣類など |
生育環境 | 海中以外の場所 |
栽培難易度 | ★★★★☆ |
育てやすい苔盆栽の種類
盆栽は手入れの方法や植え方など、管理が難しくてすぐ枯れるものだと思われがちです。しかしその中でも、苔盆栽は、手入れのポイントを知っておけば、初心者でも簡単に育てられます。初心者にも扱いやすいおすすめの苔盆栽について見ていきましょう。
おすすめ①蘚類(せんるい)
蘚類は、真っすぐに伸び、水はけのよさが特徴です。色彩や形状が豊かで人気が高く、苔以外のほかの植物ともコーディネートできます。蘚類の苔の主なものには、ホソウリゴケ、ギンゴケ、タカネモジゴケなどがあり、観賞用におすすめです。
②地衣類(ちいるい)
初心者でも手入れしやすい苔に地衣類があります。地衣類は成長が遅いという特徴があり、培養自体は難しい部類です。しかし湿度や日当たりといった環境条件をしっかり整えれば、自然に生育できる力を秘めています。地衣類としておすすめは、ヒメレンゲゴケ、ウメノキゴケなどです。
苔盆栽のやり方
苔には多くの種類が存在しますが、盆栽の苔として観賞用に、あるいは苔玉などの育成用としても順応できるものは数種類です。特にホソバオキナゴケ、ギンゴケ、山苔、ハイゴケなどが頻繁に用いられています。ここでは、具体的に苔盆栽のやり方について追っていきましょう。
やり方①時期
苔の栽培については、特にこの時期だけの限定、あるいはおすすめの時期という区別はありません。年間通じて、いつでも自分が好きな時期から始められます。初心者でも問題なく苔盆栽をスタートできるのがメリットです。育て方のコツを覚えれば、それほど手間もかからず、長い期間を楽しめるという魅力があります。
やり方②栽培環境
置き場所・日当たり
苔盆栽の置き場所は、苔の種類によって変わってきます。例えば、山苔やギンゴケを扱うのであれば、半日陰になる場所です。直射日光があたらないような、木漏れ日が差す程度の場所がよいでしょう。もし室内に置くという場合には、2~3時間程度の日光が当たる場所が最適です。
ボタニ子
用土
苔盆栽に使用する用土は、なるべく水はけのよいタイプを選びましょう。中でもおすすめなのは、排水性も保水性もよい赤玉土です。鉢の底にネットを敷いたら、6分目くらいの分量で赤玉土を入れます。苔を配置する場所や深さを考えて、赤玉土を調整しましょう。
やり方③苔の貼り方
苔盆栽には、苔を貼るという手順があります。あらかじめ用意する道具は以下の3つです。
・苔
・ケト土
・ハサミ
用意する苔は、市販のものが適切です。天然の苔を採取して使うことも可能ですが、すでに傷があり育たずに枯れることがあります。天然のものは、ある程度慣れてからのほうがよいでしょう。苔は通販や園芸店で売られているので、手軽に入手できます。
ボタニ子
苔はどこでも採取OKというわけではないから、採取できる場所かどうかは確認してね!
地域版のレッドデータブックに登録されている希少種がはぎ取られたり、名所が被害に遭ったりしている。許可を取らずにコケを持ち去ると、罪に問われるケースもある。
貼り方(1)苔を水に浸す
土が馴染みやすくなるように、事前に苔全体に十分な水を含ませておきましょう。用土とケト土に苔を貼りつけるためには、乾燥した状態ではあまりうまく貼りつけられない場合があります。しっかりと固定させるという意味で、水を含ませる作業はとても大切です。
貼り方(2)用土とケト土を敷く
鉢植えの用土とケト土を鉢の中に敷き詰めます。ケト土とは、用土と盆栽の苔とを繋げる土です。自然界では葦や苔などが枯れると水底に溜まります。ケト土はそれが年月を経て粘土状の土に変形したもので、強い粘り気が出ます。まず鉢に用土を入れ、その上に水に浸し泥状になったケト土を敷き詰めます。
貼り方(3)苔を敷き詰める
鉢植えにケト土を敷いたら、その上に苔を軽く押し付けるようにのせていきます。状況に応じながら、ハサミで形を整えてのせるのがポイントです。
貼り方(4)隙間を埋める
鉢植え全体に苔を貼り終えたら、その過程でできた隙間にも苔を埋めていきます。残った苔をやや小さめにカットして貼り付けましょう。隙間より少し大きめなサイズにカットし、軽く押し込むように貼るのがポイントです。
やり方④苔盆栽の管理ポイント
苔を張り付けた後は、苔が健やかにゆっくりと生育する様子を楽しみながら観賞しましょう。ただし苔が育つ過程において、必要となる管理の方法があります。
水やり
苔盆栽の水やりは、乾燥をして枯れることがないよう十分に気をつけます。表面が白っぽくなってきたら水を与えましょう。念入りに霧吹きで水を吹きかけ、土の中まで染み込むくらいを基準にします。また、真夏はたくさん水を与えますが、過度に与えないことも注意点です。あまり多いと蒸れて黒く変色します。その際は、風通しのよい場所に置いて水やりを避けましょう。
剪定
苔盆栽の場合、基本的には、剪定作業は必要ありません。ただし部分的に茶色に変色しているようなら、その葉を取り除いたり、必要に応じて茶色い部分をカットしたりしましょう。気になったときに剪定すると、常緑な状態を保持させることが可能です。
肥料
苔盆栽には、肥料を与える必要はありません。なぜなら、養分を吸収する根を苔は持っていないからです。肥料などで過剰に栄養を与えると、かえって腐って枯れる要因になります。そのかわりに水やりを怠らないようにしましょう。
害虫対策
通販で購入した苔には、コバエや蚊などの害虫がいる可能性は低いです。しかし天然の苔であれば、卵や幼虫が潜んでいることもあります。清潔な状態を保つには、苔をきれいに水で洗い流す作業が必要です。また野外の土を使用した場合も同様の作業をします。もし害虫が湧いてきたら、市販の殺虫剤で対応できますが、害虫予防として最初は苔に水をくぐらせて、きれいにして使いましょう。
まとめ
苔盆栽は、一般的な植物の盆栽よりも、植え方や手入れがとても手軽です。屋外や室内問わず、風通しや日当たりに気をつけることで育っていきます。好きな場所で、美しい苔盆栽を観賞できるでしょう。
夏場など、強い日差しを受けると葉焼けを起こしてしまいます!直射日光には気をつけてね!