ホソバオキナゴケとは
特徴
漢字では「細葉翁苔」と書きます。別名を「ホソバシラガゴケ」と言われています。ホソバオキナゴケは、シラガゴケ科に属し、山苔として分類されています。湿度が高いときは緑色が濃く、逆に少し乾燥気味になると白っぽく色を変えます。山苔の中でも比較的育てやすく、ビロードのような美しい質感をしています。
一般的に山苔は、半円状のコロニーを作りながら成長し、その塊は厚み2~3cmほどにもなります。その後一面にひろがると緑色の絨毯のように見え、その景観は秀逸。山苔の中でも、ホソバオキナゴケは葉が非常に細かく、京都の庭園を彩る代表的な苔の一つです。
分布域
ホソバオキナゴケは、東南アジアに多く分布しており、日本国内では北海道から九州まで、広い範囲の主に林の中、木の根元などの湿潤な場所を好んで自生しています。蒸れに弱く、雨が直接かかったり、直射日光を浴び続けるような過酷な場所では育ちにくい種類の苔です。
細かな仮根を出しながら、半円状に木の根元の土や腐った樹肌にぴったり張り付いて増えていきます。林などの木の根元で見かけることが多く、杉などの針葉樹林の根元を好んで繁殖します。
苔の楽しみ方
テラリウムや盆栽に
ホソバオキナゴケは庭園苔として広く楽しまれていますが、他の苔に比べて成長が非常に遅いという特徴があります。苔ビギナーが手軽に楽しむには、テラリウムがおすすめでしょう。蓋つき容器を使えば湿度もキープできます。また苔が環境に慣れてくれば、比較的乾燥にも強いため、盆栽用としても人気があります。
初心者がチャレンジしやすいテラリウム。湿度管理がしやすく失敗が少ないようです。100円ショップなどでもテラリウムに使えそうなアイテムを見かけるようになりました。緻密は葉先の苔をそのまま眺めてもいいですし、ジオラマ風に飾っても楽しいですね。
ホソバオキナゴケの増やし方
増やし方①蒔き苔
ホソバオキナゴケは、半円状の丸い塊を作りながら増えていく特徴があります。一般的な苔の増やし方は「蒔き苔」です。細かくほぐした苔を広い範囲に定植していく方法です。ただ、ホソバオキナゴケの場合、このやり方では厚みのある丸い塊に成長するまで数年かかることがあります。初心者には難しいかもしれません。
増やし方②移植法
苔が徐々に成長する様子をながめるのも楽しいですが、まんまるな姿をすぐに楽しみたい場合は、丸い塊のまま定植するのがおすすめです。作ってすぐにふっくらした姿を楽しめます。ネット通販では丸い塊で販売されていることが多いので、育てる容器の大きさに合わせて購入できますよ。
ホソバオキナゴケの育て方
山苔に適した土とは
適度な排水性・保水性の両方を兼ね備えた土が、ホソバオキナゴケの栽培に必要です。土に対して慎重になりすぎなくても大丈夫ですが、ここでは苔テラリウムと苔盆栽の両方に使える、準備しやすい用土を3種類取り上げます。
①樹皮培養土
最近、苔テラリウムのブームとともに、樹皮培養土を多く見かけるようになりました。樹皮培養土は針葉樹の樹皮を加工したもので、ホソバオキナゴケなど山苔の栽培に適しています。腐りにくく土特有の臭いもあまりありません。ネット通販なら少量の購入も可能です。
②ケト土:赤玉(小粒)=7:3
ケト土7に対して、小粒の赤玉土を3の割合で混ぜた用土です。私自身この配合土を小さな鉢で使用していますが、苔と他の植物を同居させてもよく育っています。梅雨の長雨や、夏の乾燥が心配なときは、この土の上に細かく砕いた「炭」をぱらぱらと乗せておくと、さらに調子がいいようです。
③ハイドロボールや炭
土以外の素材として、ハイドロボールや炭もおすすめです。ハイドロボールは湿潤下でも雑菌が繁殖しにくく、臭いもありません。密閉した容器の中でも苔を衛生的に育てられますね。炭にもハイドロボール同様の効果や、さらに優れた調湿効果が期待できます。
扱いやすい土を3種ご紹介しました。ホソバオキナゴケをテラリウムや盆栽にする際、苔の成長にとってよい土というよりも、むしろいかにカビを生やさないかという点に注意しましょう。苔が順調に育ってくれば、カビも次第に生えにくくなってきます。
水やりと湿度管理
外で栽培する際の水やり
ホソバオキナゴケの仮根には水分を吸い上げる機能はありません。霧吹きやじょうろなどで葉に水分を与える必要があります。特に盆栽の場合は土が乾燥しがちです。栽培には湿潤な場所を選び、苔表面が常にしっとりするよう水やりをしましょう。
テラリウムの水やりの注意点
テラリウムは、湿度管理が比較的かんたんです。ただ、カビが繁殖するには好環境です。蓋つき容器で育てるときの水やりの際、容器のガラス面に水滴がついたままにするのは要注意です。霧吹き後、少しの間蓋を開けたままにし、余分な水分がなくなってから蓋を閉めるようにしましょう。苔の葉が茶色や白に変色したら、すぐに取り除くこともカビ対策になりますよ。
日当たり
ホソバオキナゴケは、ギンゴケのような一日中直射日光の中にあっても生き残る強靭な種類の苔とは異なります。しかし、日陰で育つ種類の苔ではありませんので、適度な日照が必要です。置き場所は、長時間直射日光の当たらない軒先や明るい窓際など、ほどよい日当たりを保ちましょう。
テラリウムには明るめの光が必要ですが、窓辺など室温が上昇すると、容器内は非常に蒸れやすくなります。夏の間は高温にならない置き場を選ぶとよいでしょう。気温が高い時期は窓辺を避け、植物用育成ライトを活用してもいいですね。最近では、テラリウム用のおしゃれなライトもあります。ライトの効果で苔の美しさが一層引き立ちますよ。
その他育て方の注意点
庭園苔など樹木の下で苔を育てるときは、落ち葉に注意しましょう。ホソバオキナゴケは、蒸れや高温に敏感です。表面に落ち葉をのせたまま放置していると、落ち葉が発酵する熱で苔がダメージを受けやすくなります。美しい緑色を保つには、苔の上の落ち葉や雑草をこまめに取り除くことが大切です。
ホソバオキナゴケの採取方法
天然のホソバオキナゴケを見つけよう
自生しているホソバオキナゴケは、半日陰の木の根元などを探しましょう。雨が直接かかったり、直射日光が当たるような場所ではあまり見かけません。また常に潮風が当たる場所、川沿いの風の吹き抜ける場所には自生できません。湿潤な明るい林の中を散策すると見つかりやすいようです。
採取する際の注意点
近年、自生している山苔は取りつくされたか、環境の影響か、数が減っていると言われています。そんな中、偶然見つけたホソバオキナゴケを家に連れ帰りたい衝動に駆られることもあるかもしれません。公共の場所ではその管理者に、私有地の場合はその地権者に許可を取ってから採取するようにしましょう。
採取に使う道具
採取する場合は、張り付いていた土や樹皮と一緒に取り、手持ちの容器などに並べて持ち帰るとよいでしょう。手で簡単にポロっと丸い塊が取れますが、慎重にヘラで採取すると安心です。お弁当などに付いているスプーンを使うのもおすすめですよ。
まとめ
ホソバオキナゴケの育て方をご紹介しました。ゆっくり育つ苔を自宅で育てるのもいいですし、幸運にも自生している苔を見つけたら、その自然の姿をそのまま鑑賞してもいいですね。近年の苔ブームで、苔の楽しみ方も多様化しています。ご自身に合った苔ライフを楽しみましょう。
出典:写真AC