鹿沼土の概要
鹿沼土(かぬまつち)は、栃木県鹿沼地域で取れる軽石の総称です。関東平野には、火山礫などが風で流されて堆積した関東ロームと呼ばれる台地状の層があります。鹿沼土は、ローム層の黒土や赤土の下層から採掘されるベージュ色の土で、植物栽培の用土として利用されます。
ボタ爺
鹿沼あたりのローム層は、約4万年前に赤城山から噴出した火山砂礫が堆積したものだといわれておる。
鹿沼土の特徴
白っぽい黄土色
鹿沼土は水を含んだ状態では黄色で、乾くと白っぽくなります。土の色で水分状態がわかりやすいため、水やりのタイミングがデリケートな多肉植物やサボテン栽培に向いています。最初に水やりをすると、微塵が溶けて黄色くなった水が鉢底から流れ出ます。
鹿沼土だけでなく、新しい土は最初に水を通して小さい粉が溶けて流れ出るようにしましょう。水はけがよくなりますよ!
鹿沼土は酸性である
鹿沼土は、酸性の土です。土の酸度は水素イオン指数・pH(ぺーはー、ぴーえいち)で表し、酸度計などで手軽に測れます。pH7が中性、数字が7より大きくなればアルカリ性、小さくなれば酸性を示します。鹿沼土は、pH5前後の酸性です。
ボタ爺
雨が多くて石灰分が流れやすい日本の土壌は酸性に傾きがちじゃ。ツツジなどの植物は、酸性や弱酸性を好むぞ。
中性や弱アルカリ性に適した植物は、苦土石灰などを配合して、酸度調整をします。
排水性・保水性・通気性がよい
鹿沼土は多孔質の土で水はけがよく通気性があり、細かい穴に水を貯えることができるため、保水性にも優れています。酸性を好む植物向きですが、排水・通気性をよくする改良土として配合するのも可能です。ほぼ無機質で無菌であることから、挿し芽や種まきにも向いています。一方、保肥性はそれほどありません。
赤玉土との比較
鹿沼土と赤玉土は、どちらも植物栽培の基本用土ですが、若干の違いがあります。赤玉土も、関東ローム層から取れる粒状の赤土で、酸度はpH5.5~6.5の弱酸性です。汎用性があり、ほとんどの植物の基本用土として活用されます。赤玉土は崩れやすく粘度がやや強いため、鹿沼土と比較すると水持ちがよく、水はけや通気性は少しだけ劣ります。
鹿沼土 | 赤玉土 | |
土の性質 | 軽石 | 赤土 |
酸度 | 酸性 | 弱酸性 |
通気・排水性 | ◎ | 〇 |
保水性 | 〇 | ◎ |
保肥性 | △ | 〇 |
鹿沼土の種類
粒の大きさ
鹿沼土は、粒の大きさによって大粒、中粒、小粒、細粒の種類に分けられます。大粒は水はけがよく、鉢底石として使えます。とくに「硬質」と書かれているものが崩れにくくておすすめです。中粒は盆栽を含めた樹木の栽培に、小粒は草花や野菜栽培に適しています。また、卓上サイズの多肉植物に向いているのは、中粒~小粒です。細い根の出る挿し木や種まきなどには、小粒や細粒を使います。
種類ごとに選別されて製品化されているけど、分けずに売られているものもあるね。
混合粒
無選別粒は、大粒~細粒の大きさを選別していない製品で、選別粒より求めやすい価格で売られていることが多いです。植物に合わせて大きさを分けて使用するとよいでしょう。また、大きな粒をよって鉢底に入れ、残りは大小混ざったままで使うのも可能です。通気性と水はけ、水持ちが適度に確保できます。
硬質粒
「硬質」鹿沼土は、型くずれしにくい硬い粒を選別したものです。中でも超硬質の鹿沼土は、鹿沼市の北部・日光市付近で取れるため「日光砂」とも呼ばれ、多肉植物や盆栽などに適しています。
鹿沼土が適した植物
ツツジ類
鹿沼土と相性のいい植物は、ツツジ類です。ツツジ類の多くは、日本に自生するヤマツツジやサツキツツジとその園芸品種で、酸性に傾きがちな日本の土壌によくなじみます。また、同じツツジ科のブルーベリーやクランベリーも酸性の土壌を好むため、鹿沼土を基礎用土として育てるとよいでしょう。
ボタ爺
昭和のサツキブームの頃に、相性のいい用土として鹿沼土が注目されたんじゃ!
鹿沼土の産地である鹿沼市では、例年5月下旬~6月上旬頃に、花木センターで「鹿沼さつき祭り」が開催されるよ。
ボタニ子
サツキ盆栽の展示会やサツキ苗木の無料配布があるんだね。
多肉植物・サボテン類
多肉植物やサボテンは、葉や茎に水を貯えています。そのため、水をやり過ぎると根腐れを起こしがちです。通気性と水はけがよく、適度に保水性のある鹿沼土は、多肉やサボテンを育てやすい用土です。また、多肉類の多くは酸性~弱酸性を好むので、酸度的にも問題ありません。
挿し木
有機物を含まず雑菌の繁殖しにくい鹿沼土は、挿し木や種まき用土にもできます。通気性・排水性にすぐれ、適度に水持ちがよい土でもあるからです。樹木の挿し木には中粒~細粒、草花の挿し芽や多肉の葉挿し、種まきには小粒~細粒がよいでしょう。バーミキュライトを配合すると水持ちがよくなります。
出典:筆者撮影